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自由の女神像

「アヤコ、そろそろやる?」

「そうね」


二度目ということもあって雑談をして、練習を始める。もっとも僕は支える役だけど。


「んー、勢いをつけると危ないかも。ゆっくりで良いと思うよ?」

「それが出来るならもう立ってる」


あはは、と笑い合いながらゆっくり座る。そのままアヤコの肩を支えて


「足があるって、どんな感じなの?」

「ん?」

「アリアなら毎日答えが変わるかもって思ってさ」

「うーん……とりあえず正座は嫌いかな」

「あっははは! 痺れるってやつ?」

「うん、麻痺麻痺」

「ゲーム以外でも麻痺ってするんだ」


笑いながら僕の頭に手を置いて……撫でられた。


「立つ練習じゃないの?」

「んー、妹みたいな気がしてさ。兄しかいないし」

「かっこいいの?」

「さぁ? 嫌な奴って思うと顔見たくないし」

「そうなんだ」

「アリアは? 一人っ子?」

「ううん」


他愛の無い雑談をしつつ、何度か立ち上がろうとする。

優さんたちに文句を言った結果、オブジェクトが配置されたけど


「なんで自由の女神像なんだろうね?」

「立ってるからじゃないの? 考える人とか座ってるし」

「シェリ姉もよく考えろって言ってくるよ」

「それはアリアが考えていないからよ」

「そうかなぁ」


アヤコは笑い、僕と自由の女神像に手をかけて立ち上がる。二つと言わず支えさえあれば立ち上がれるけど自分の足で直立は難しいらしい。だから倒れそうになるのを僕が受け止める。

ちなみに直美と亜美の場合は僕と違うやり方らしい。確か直美が立つ方法を一緒に考えて手伝う、亜美は指を動かすことで作る工作のようなことをしているらしい。……あれ、2人に比べると僕って何しているんだろう?


「アリア、ちょっと立つから肩貸して」

「どうぞどうぞ」


自由の女神像に手をつき、立ち上がるアヤコ。その足の震えは昨日より小さくなっている。


「っ……あー難しいっ!」

「でも立ててる時間は伸びてるよ?」

「それは自由の女神像のおかげよ。自力で立てないと意味が無いし」


倒れかけたアヤコを支えてゆっくり下ろす。そのまま座って


「舞宮さんから聞いたんだけどさ」

「うん?」

「アリアってゲームが上手なんでしょ?」

「んー、音ゲーは苦手」

「リズム感ありそうだけどね」


そうかもねー、と頷きながら適当なリズムで体を揺らす。


「~~~♪」

「……」


鼻歌に合わせて体を揺らしているとアヤコも目を閉じて体を揺らし始めた。


「~~♪ ……下手でしょ?」

「そうかな? 知らない曲だから何とも言えないけど」

「知っていると逆に驚くんだけどね」

「そうなの? マイナーな曲なの?」

「ううん、自作で即興だもん」


アヤコは大きな声で笑った。


「自作で即興でアレなんて凄すぎ」

「ありがと、だけど僕はアイデアが貧困だからねぇ」

「アイデアと発想って同じ意味じゃないと思うんだけどね」


アヤコの言葉に笑いながら地面に手をついて立ち上がる。そのまま自由の女神像に触れる。金属らしい冷たさがある。


「アリア、支えてね」

「うん」


*****


「現在の状況は?」

「二階堂アリア担当の文子さんが既にかなりの進歩を見せています。おそらくあと3日も続けば立つことはできると思います」

「立ち上がるほうは?」

「支えがあれば、といったところです。そちらはもう少しかかるかと思われます」


モニターの結果を報告していると


「……今日のが終わったら文子さんとアリアさんを連れてリアルへの影響を観察します。終了次第連れてきてください」

「はい」

「それではモニターに戻ってください。定期報告はまた明後日で、何か異変があれば即座に」


はい、と返事をして部屋を出る。そのまま部屋間の廊下を歩いていると


「ジャックさん、どうしたんですか?」

「定期報告、そっちは何かあったか?」

「アリアさんのおかげで少し進んでいるようです」

「あ、アリア来てんのか……こっちは直美と二人三脚しているんだよな……」

「立った後の練習ですか?」

「そんなところだ」


苦笑しながらジャックが所長の部屋に入って行った。


「さてと……」


第一モニター室に入ると二人が経過を報告、それを聞いて


「現在は自由の女神像を利用して立ち上がる練習をしています」

「分かりました……ですが自由の女神像は誰の趣味ですか?」

「私です」


部下の言葉に苦笑しつつモニターを再開すると


「……何故二人共鼻歌を歌っているのでしょうか……?」

「楽しそうですね」

「結果がついてきていますけど……視ている側としては疑問の嵐ですね」

「そうですね……それではモニターを続けます、残り時間は?」

「はい、残り30分といったところです」


*****


「うーん、こっちは久々っぽく感じるなぁ」

「や、昨日もログインしていたじゃないの」


マモンの言葉に苦笑して……ふと思った。今日は10月2日。10月11日が全国大会だけどそこじゃない。重要なのはそこじゃない。


「マモン、明日はどうするの?」

「なななんのこと?」


動揺している。やっぱり……


「明日、ベルの誕生日でしょ」

「……」

「ちなみにもうレヴィから『明日は白織屋に来ないで』って言われているから」


マモンがため息を吐いて甘いコーヒーを僕の前に置く。そして


「知っているなら言わない」

「そう。ちなみにマモンはどんな感じだったの?」

「え?」

「試験の方」


あー、と頷いて


「無理にでも立たせてみれば立つ感覚が掴めるかもって思ったんだけど中々上手くいかないね……」

「そうなんだ……大変だね」

「アリアちゃん、表面だけの辛さじゃ何も分からないわ」


なんでか知らないけどマモンの言葉はとても僕の心を打った。


「きっと私たちが知らない苦労がみんなにはある。私が知らない苦労をアリアちゃんがしているようにね」


コーヒーの甘さに癒されて


「マモンの知らない僕の苦労?」

「痴情のもつれからの刃傷沙汰とか」

「……もうあんな苦労はしたくないよ」

「そうよね……傷跡ってどうなったの? 跡は残っちゃったの?」

「うん、シェリ姉とお揃いだよ」

「お揃わなくても良いと思うんだけど……」


マモンは苦笑しつつ炭酸をごくごくと飲んで


「ぷはぁ」

「おっさん臭いよ」

「大学生は真ん中らへんよ」

「や、おっさんは否定しないんだ」

「おばさんよりはマシな気がするわね」


その感性は分からない。そう思いながらコーヒーを飲み干して


「ご馳走様」

「お粗末様、行ってらっしゃい」


カーマインブラックスミスを出てひよちゃんに乗る。そのまま飛翔して探す。中々見つからない。

僕は今、《星の見える丘》の周辺の空に稀に出現するモンスターを探している。ソロのプレイヤーにしか発見できないレアモンスターだ。それが今日ここで出るって言われているのに……見当たらない。それを初めて狩るのは僕がやり遂げたい。


『……ちぃ?』

「どうしたの?」


何か違和感を感じるひよちゃんの声、それに反応した瞬間突風が吹いた。揺れるひよちゃんにしがみついて顔を上げると


「……これが?」

『ちぃぃぃぃ!?』


驚いている僕をよそにそのドラゴンの14本の翼が広げられた。そして二本ずつから魔法が放たれ、僕らを狙った。

弟がこれを読んでいるので多少自重しておっぱいという単語の出現率を上げようと思います


自由の女神像って地味に好きなんですよね

金属だから自由からかけ離れているのに自由だなんて皮肉って思う作者は捻くれ者


次回、謎の龍戦

デュエルスタンバイ!



弟が「ナンセンス」とか使って大丈夫なのかと言われたんですがマリアとかもっと大丈夫じゃないんですよね

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