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試験

「優さん、依頼の内容を教えて欲しいんだけど」

「申し訳ありませんが今回の一件では了承を得ないと説明出来ませんので……」

「私が聞きたいのはただ一つよ」


直美の言葉に優さんは小首を傾げ


「なんでしょう?」

「命への、身体への影響は?」

「すでにうちの部のメンバー全員が試し、無事という結果を出しています。もちろん人間ドックで確認しました」

「なら私は受けるわ。亜美はどうするの?」

「……期間は?」

「一週間毎日2時間計10時間程度を予定しております」

「土日は休みなの?」


優さんは困ったように微笑んで


「全国大会への準備があるので」

「そ。なら私も受けるわ。アリアは……中学生だから難しいんじゃない?」

「うーん。移動手段さえあれば行けると思うよ。天神でしょ?」

「はい」

「直美、頼める?」

「うん。亜美も乗ってく?」

「そうするわ」


こんな感じで結論が出た。そう思ったら


「一応時給2万、計20万を予定しておりますが?」

「私は「低いわね」


頷こうとした瞬間、直美の目が光った。


「危険が無いと言えないし何をするかも明かされていない。その状態だととても安く感じるわね」

「……亜美、どゆこと?」

「説明しろって言ってるのよ」


なるほど。


「……百聞は一見にしかず。天神で現場を見せます」

「今から?」

「はい。お時間の方は?」

「私は大丈夫よ。亜美とアリアちゃんは?」

「特に無し」

「大丈夫だよ」


そのまま地下鉄に乗って天神へ。混んでいる地下鉄の中で押し潰されそうになりながらなんとか到着。亜美と優さんの巨乳ではないけど結構大きなおっぱいの殺傷力が高い事が判明した。


「……達也? 見学をさせても大丈夫ですよね?」


達也へ電話をかける優さん。そして頷いて


「問題無いそうです。着いてきてください」


受付で名札のような物を受け取って首にかける。その際に奇異の目で見られたけど気にせずに着いて行くと


「今向かっている部屋にはデバイスがあります。それを使っていただく前に現在も行われているモニターデータを軽く見てもらおうかと」


そう言い、エレベーターの中でデータを僕たちに送信した。それに軽く目を通すと


「……義手義足、それの経験を積ませる?」

「はい」

「どうやって?」

「現在の義手の技術では自分の体のように扱えるそうです。ですが……片手を失った状態での生活に慣れており、いきなり生えたような感じに陥ると確実に問題となるため、先にVR空間で練習を、という感じですね」

「長い、3行でまとめて」

「練習です」


よく分かった。そして映像で軽く確認して……うん、言っていることは間違っていない。


*****


「「「リンクイン」」」


三人で同時にデバイスを言語起動する。そして白い空間に降り立つ。容姿はソーニョのだ。まぁ、《アストライアーの羽衣》のおかげで普通の服にしか見えないけどさ。


「直美、亜美」

「なによ、こっちではリアルネームなの?」

「じゃマモンとエミリア」

「そうね、それが良いと思うわ」


話していると表示された文章。そこにはリンク先がある。ここから試験空間に行けるそうだ。

現在の試験人数は3人だって。だから一人で対応しろってさ。


「んじゃ僕は女の子の対応をしておくよ」

「じゃ私は男の子かな」

「そ、私もそうね」


それじゃ、と言ってリンク先に飛ぶ。そこは花畑のような空間だった。蝶もいるしそよ風もある。花の香りもする。やはり研究の最前線であるここはそういった技術が凄いようだ。


「……あれ、誰かいないの?」

「誰なの?」


後ろから聞こえた声に振り向く。《感知》と《探知》が機能していない……じゃない、ここはソーニョじゃないんだ。

振り向いた先に座っていたのは美少女だった。黒髪黒目の純日本人だ。


「……何人? 日本人じゃなさそうだけど」

「ん、僕はハーフだから」


……あれ、クォーターだっけ? どっちだったか忘れちゃった。ま、どうでも良いか。とりあえず


「僕はアリア、君は?」

「……誰だと思う?」

「さぁ? 平塚雷鳥?」


平塚サンダーバードの名前を挙げると何故か笑われた。苦笑のような感じだけど。


坂本文子サカモトアヤコ、本名よ」

「なるほどね。アヤコって呼んでも良い?」

「良いわよ。アリア」


距離を詰めてきた。そう思っていると立ち上がろうとした。直後、体勢を崩しかけた。慌てて駆け寄って倒れそうになるのを助ける。苦笑が耳元で聞こえた。


「……ありがと、助かったわ」

「うーん、助けれた?」

「ううん」


あちゃー、と思っていると


「助けってのはね、多分誰からも欲しくないものだと思うの」

「え」

「アリアは分からないかもしれないけどね、虚しく、無様に思えるのよ」


アヤコは悲しそうに笑って


「私は性格が悪いのは理解している、だからこそ私は面倒な女なの、そう思わない?」

「うん、とってもそう思うよばばば」

「そこで素直に頷かれると嫌だなー」


ほっぺたがむにょーんしているのを離してため息を吐かれた。そして


「見たら分かる通り私は義足を使うための練習をしようとしているのよ」

「リアルだと車椅子なの?」

「そうよ。でもあっちのほうがずっと速いし楽なんだけどね」


あはは、と笑って


「アリア、歩くってどんな感じ?」

「……うーん、疲れる?」

「よね、あんまり良いこと無さそう」


だけど


「それでも自分の足で歩いてみたいってのは過ぎた欲なのかな?」

「知らない。諦めなければなんて事は思わないし」

「現実的ね、意外と」

「そうでもないよ」


2人で笑って


「ほら、お姫様」

「うむ、苦しゅうない」


お姫様にするように手を差し伸べると偉そうに頷いて僕の手を取った。そして勢いをつけて立ち上がって……僕に倒れこんできた。


「難しい?」

「そうね」

「むしろなんでこんな木も何も無い空間なのかな、僕がいなかったら自力で立ち上がるしか方法が無いじゃん」


優さんたちに文句を言う決意をしつつ、座る。そして


「僕の頭とか肩を使って立ってみたら?」

「……やってみる」


僕の頭に手をついて立とうとする。ふらふらして、ぶるぶるしている。だけど頑張って……膝立ちまでいけた。


「難しいね」

「でもいけたじゃん」

「膝立ちはまだまだよ」

「理想が高いなぁ」


アヤコはあはは、と笑って膝立ちから何とか膝下を伸ばす。そして地面に足を降ろして……


「っつう……地面ってこんな感じなの?」

「どんなのをイメージしてたの?」

「優しい感じ」

「それ多分泥か何か」


アヤコは笑いながら地面に座る。そして


「今日は膝立ちできたし地面に足も着けた、一人の時と大違いね」

「それは多分優さんたちが悪い」

「そっか……ねぇ、明日も来る?」

「しばらく来るよ」

「そう。じゃしばらくよろしくね」


握手して……アヤコは姿を消した。リアルに戻ったんだろう。だけど今僕と同じ建物の中にいるし僕の外見はリアルそのままだから……うん、気にしなくても良いかな。マモンたちもそろそろ終わっていると思うからログアウト……じゃないけど出て優さんたちと話して帰ろうとすると


「あ」

「あ」


下の受付で電気車椅子に座っているアヤコとばったり出くわして少し気まずかった。

アヤコは多分レギュラーになる

きっと多分必ずするつもり


次回も同じ感じでアヤコのターン

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