内輪争い
「っ!」
剣を振り下ろした。しかし避けられた。
「怖えなぁ」
「あっさりと避けておいてよく言う」
《死神》は、《幻影面》は笑って鎌を担ぐようにして構えた。あの構えに不用意に突っ込むと柄によるカウンターが待っている。
「そう言えばジャックはさっさとアリアたちのところに帰ったんだったな」
「あー、そういやそうか。悪かった、裏切りっぽくなって」
バツが悪そうに頭を掻いて鎌を片手で構えた。
「だがしかし、今は関係無いな」
「これからも、さ」
《真黄昏と夜明けの天魔剣》を構える。そのまま突っ込む。柄と刃、どちらからカウンターが来てもおかしくない。だからこそ
「ふっ!」
「予想通り!」
「なっ⁉︎」
突き出された拳を斬りつけ、懐に入り込む。そのまま
「《納刀・三日月》!」
「っ、《ジャッジメント》!」
高速回転しつつの五連撃だ。だけど
「《居合い・神薙ぎ》!」
一閃で打ち破り
「秘剣、華の型!」
「それ僕の技⁉︎」
どこかから彼女の叫び声が聞こえた。そしてジャックの体が光となって消えた。
*****
「あれー? セプトは?」
「あいつ今日は仕事だとさ」
「ふーん」
《真にゃんにゃんボウMkⅡ》を持ちながら眺める。魔王は相変わらずナイフ一本、たけどそのナイフがアリアちゃんに最高傑作と言わせる逸品なのは知っている。
「カゲオ」
『……』
「む? 何をしたんだ?」
「秘密だよ」
矢をつがえて……射る。しかし正面からだと魔王は簡単に防いでしまう。もっともこれは魔王に限った話じゃないけど。《魔王の傘下》なら全員できると思うし。
「やっちゃって」
「むっ⁉︎」
地面から噴き出した闇が魔王を飲み込もうと波のように迫る。一瞬の躊躇いから即座に回避行動に移ったけど
「逃がさないよー、《パラライズ》《スプレッドアロー》!」
「っつ、《解放》!」
魔王のナイフから劫火が噴き上がる。そしてそれが私を焼き尽くそうと迫る。だけどそれは私に当たらない。だって既にそこに私はいないのだから。
「……どこに行った?」
魔王はきょろきょろと見回して
「上か?」
残念、下だ。
「《パラライズ》《スプレッドアロー》」
真下から矢を放つ。恐るべき反応速度で避けようとしたけど足に一発。地面に落ちてきた魔王にさらに追撃を加えて
「やっぱりアリアの次に強いのはお前か……」
「魔王も中々だと思うけどね」
全損した。
*****
「《ライトニングランス》32!」
「っと」
雷の槍は軽々と避けられた。
「シェリルも強くなったなぁ……」
「アスモさんも十分強いですよ」
「そう言われても俺、弱いしな」
苦笑しながら剣に炎を纏わせている。アレに切られると大ダメージは否めない。そもそも魔法使いが前に出るのがおかしいんだけどねぇ……ま、今さらかぁ。それにベルさんもそうしているし珍しいだけかな。
「魔王はマモンと、ジャックはシンと、シェリルは俺と、アリアとレヴィとエミリアは誰とかね」
「アリアはベルとよ。レヴィはシエル、エミリアはブブだったかな?」
地区大会の決勝戦が内輪と言うのもあれだけどね……ま、良いかな。
「《ライトニングエリア》、連ねて《ウォーターエリア》! 重ねて《ライトニングボム》!」
足元から水が噴き出し、そこに落雷が。範囲攻撃だから避けきれず、純水じゃないからこそ電気を通す。アスモさんは地味に痺れて……あぁ、さらに追撃の雷の爆弾がアスモさんをさらに痺れさせた。だから
「ゆっくりと倒しますね」
*****
「……硬い」
「そっちは速いな」
ブブの槍に《天魔斬刀》が防がれる。決して隙が無いわけじゃないのに攻撃が防がれる。圧倒的な反応速度と恐ろしいまでの槍捌き。それが防御の厚さ。なのに
「攻撃も出来るって本当に何なのよ……」
「お褒めに預かり光栄だな……だがこれ以上は割に合わんな」
「え?」
「そろそろ決めさせてもらう!」
突っ込んできながらの槍の一閃。それを鞘で逸らして
「《居合い・震天》!」
「ふんっ!」
重い一撃を放つ。しかし真下から切り上げられ、刀身が逸らされる。肩を斬っても終わらなかった。まずい……
「確かこれは掃討戦、人数が0になった方が負け、か」
「……そうね」
「だったら俺がお前を倒しても残り5人か……」
「アリアとレヴィが負けるとは思わないの?」
「あの二人が負けるような奴がうちにいるか? 俺は誰も思いつかないんだが……」
動けなくされてため息を吐く。しかし全損はさせられていない。面倒そうな表情で地面に座り込んだ。
「このまま待っていてもな……だが負けるのも面白くない」
「いつも勝てるとは限らないじゃない」
「ああ、そうだな。仕方がないか……お前を倒して他のも探しに行くか」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、振り向き、槍を抜いて振るった。
「……マモンか」
「ご名答」
続いて降り注ぐ矢を避けている。だけどその背中が無防備だ。しかしなんとなく斬る気も無くなった。
「マモン、任せる」
「はーい」
「そう言えばお前もいたな……はぁ」
「それじゃ、いっくね-!」
降り注ぐ矢に射抜かれ、針人形となった。なんか物凄いホラーなんだけど。
*****
「ほらほら、頑張らないと当たるわよ?」
「弾幕ゲーかよ!?」
「そんな感じよ」
引き金を引く。シエルの大剣と大剣の隙間を撃ち抜く。ダメージは軽微だ。
「ああもう、硬いわね」
「そっちは手数が多いじゃねぇか……どっちもどっちじゃねぇか」
「そうね」
《狙撃銃》に持ち替えて距離を取る。シエルはSTRが異常に高いだけでAGIは大した事がない。だから遠距離で狙撃する。しかし
「……手数を気にしたほうが良いのかもね」
身を隠しての狙撃なのに反応されている。前にベルが言っていた言葉が脳内でリフレインされた。
『シエルの反応速度は深層接続者と同等かそれ以上だ。だがそれだけじゃ説明できないほどの直感か何かがあるだろう』
「直感とそれへの反応……ねぇ、随分とリアルチートしているじゃないの」
ふふふ、と笑いが漏れる。昔の芋スナしていた頃を思い出す。茂みに隠れ、遠距離から撃ち続けるだけのだ。それに飽きて前に出る戦闘スタイルにしたんだった……
「マモン、あんたの言っていたことは忘れないわ」
『いつまでも隠れていちゃつまらないでしょ?』
そう言って私の手を引いた親友の顔を思い出して笑う。そして引き金を引いた。
*****
「達也、今はどんな感じだ?」
「同じギルドのメンバーで潰し合いが起きていますね……と、言うかジャックが普通にいるんだが」
「あいつ今日は休み取っているからな」
「くっ……」
ため息を吐きながらモニターを眺める。遠距離からの狙撃がシエルを全損させた。そして
「アリアが動きますね」
「データの計測を始めろ!」
「録画も忘れるな!」
アリアの存在は俺たち企業としても異常、イレギュラーだ。高くても2000レベルが限界だと思われたそれを軽々と超えた存在だから。ちなみにこっちからステータスのデータは覗ける。
「坂崎」
「優……いや、舞宮さん、どうしました?」
「アリアさんへの例の件、覚えていますか?」
アリアちゃんの戦闘は企業としても注目されています
一応予定としては9月第2土曜日が今、10月の第2土曜日が全国大会のつもりです
国際大会は時差とかがあるから何時頃にするのか迷いマイマイ
上記の通り、1ヶ月空くのでその間に優からの依頼がアリアちゃんに
一体どんな内容なのか気になるなー
多分次回か次次回には出るけど




