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大会の前

「アリア、勇気出しなさいよ」

「だってー」

「好きならキスしないと」

「むぅ……」


昼休みの机から私を引き剥がしてきりは笑う。仕方ない、覚悟を決めよう。


「ツゲオ」

「……どうしたの?」

「目を閉じてしゃがんで」

「え?」

「早く」


戸惑いながらもしゃがんだツゲオ。その顔を両手で押さえて……


「……えっと……」

「わにゃぁぁぁ⁉︎」


恥ずかしくて無理だよ⁉︎ ツゲオカッコ良いもん!


「……とりあえず食堂に行こうか」


五分後


「むぅ……」

「……アリア」

「なに?」


真面目な表情のツゲオは一瞬躊躇って


「……そのさ、キスしたいってのは僕も思っているんだ」

「うん」

「だけどお互いまだ恥ずかしいじゃん」

「……うん」

「だから間接キスにしておこう」


謎の落とし所を提案されたけど


「確かにキス初心者の僕たちにはそれくらいが良いのかもしれない」

「だよね」

「でも間接キスってどうやるの?」

「え」

「故意だと難しくないかな?」


言われてみれば、とツゲオは呟いて……お箸でオカズを掴んでもぐもぐ。そして閃いたような表情になって


「アリア」

「なに?」

「苦手な食べ物って感触グニュだよね?」

「うん」

「なら、あーん」


……え⁉︎


「あーんって子供じゃないんだよ⁉︎」

「まだ12歳でしょ?」

「あぅ……だけど……」

「ほら、お姉ちゃんの得意な唐揚げだよ。美味しいよ」


そう言われるとお箸に挟まれたそれが美味しそうに見えて……


「ん」


あーんしちゃった。あはは。そして唐揚げが口に入ってきた。


「離すよ?」

「ひょうじょ」


どうぞ、と言おうとしたけどあーんしているから無理だよ。とりあえず唐揚げ美味しい。だけど、だけどさ、


「間接キスって地味だね」

「今さら?」

「もっとむちゅー、な感じかと思ってた」

「それ箸にキスしていると思う」


ツゲオの言葉にあはは、と笑って


「ツゲオは苦手な食べ物ある?」

「うーん、キノコかな」

「私も」


と、言うわけで当たり障りの無い小型ハンバーグをお箸で挟んで


「はい、あーん」

「……僕も?」

「うん」


ツゲオが目を閉じて口を開ける。その開き方が慎ましくて中々上手く入りそうにない。


「むぅ……もう少し開けて」

「……」


開いた口の中にそっとハンバーグを入れる。そのままお箸を抜く。……このお箸で食べたら間接キスにになる……


「あぅ……」


恥ずかし過ぎて顔が熱い。なのにツゲオはあんまり気にしていないみたいだ。だから


「はむっ」


お箸を舐めてみた。特に味はしなかった。だけどなんとなく嬉しかった。


*****


「にへらにへらしているけど何かあったの?」

「うん!」

「そう、良かったわね」


なんかニヤニヤしていて不気味なアリア、とりあえず流す事にしていると


「レヴィ、少し時間良い?」

「マモン? なによ」

「うん、ちょっとね」


よく分からないけど《弾丸精製》の手を止めて


「で、なに? 流沙の、ベルの話なら良いけど」

「残念、かな。イベントの話だし」

「……そう」

「どうするの? 装備とか」

「このままでも良いけどみんなには勝てないわね」


そう、今回のイベントは味方が《魔王の傘下》なら敵も《魔王の傘下》。ま、マリアがいるけどそれは些事ね。


「みんなに勝つには装備も何もかもを上げないとね」

「レベルも熟練度も私たちに比肩するのは少ない、だからこそ真の意味で敵なのは《魔王の傘下》ね」

「まーねー、だけど負ける気は無いんでしょ?」

「当たり前よ。私たちは仲良し同盟なんかじゃない、全員がライバルなんだから」

「そうね」


《拳銃》を抜きざまに撃つ。壁にある的の中央を打ち抜く。そのままハーネスに吊るしながら違う銃を抜き、一発撃って銃を換える。そのまま全部の銃のを確認した。だけど


「やっぱり剣士と接近戦をすると考えると今のじゃ明らかに遅いのよね」

「だから《銃格闘ガンカタ》でしょ? それじゃ不満なの?」

「ま、ね。アリアとシンとエミリア、その三人を除いても接近戦では気が抜けないもの」

「そうだねー」

「特に魔王とジャック、遠距離だとシェリルとベルね」

「遠距離は少ないからねー、だけどシェリちゃんが参加するとは考え辛いなぁ」

「そうなの?」


なぜか確信ある表情でマモンが頷いた。すると扉が開いて


「ちょっと全員集合……」


物凄い落ち込んだアリアが。何があったのよ……


*****


「えー、残念なことに大会のタイミングで用事が入ってしまいまして……」

「……」


ため息が出る。マリアとアジアンが出られない、そう思うと……なんだか悲しいし寂しい。だけどどうにもならないはずだ。


「だから欠員を埋めるってことなの?」

「うん」

「だったらちょうど良いね」


マモンが笑って


「シェリちゃん、入っておいで」


…………あれ、別に入ってこない。


「あれー? そこら辺で聞き耳を立てていると思ったんだけどなー」

「おい」


レヴィのチョップがマモンを床に沈める。とりあえず


「シェリ姉には連絡しておいたから」

「手際が良いわね」

「だってそれが良いもん」


つま先で地面を蹴って呟く。


「やっぱりみんなで固まっているほうが良いし……マリアには悪いけどさ」

「気にしないで良いよ。それは僕の家のほうの問題だからね」

「……聞いて欲しかったり?」


意味深なことを呟かれると気になっちゃうじゃん。だから聞くと


「ん、ちょっと実家が旅館をやっててね、当日にお客さんがたくさん来るから時間が無くてね」

「そうなんだ」


重くない環境なら良かった。


「だからテレビで録画しておくからさ、頑張ってね」

「当然だよ」

「九州一になって日本一、世界一までいけるかな?」



マリアの言葉に苦笑して


「大丈夫だよ」

「相変わらす謎の根拠ね」

「だって僕が最強なんだから」


チーム《カーマインブラックスミス》のメンバーは《天弓》マモン、《魔弾》レヴィアタン、《魔女》シェリル、《罪》シン、《斬姫》エミリア、《最強》アリアとなった。

そして一週間後、大会当日ーー


「うん、中々盛り上がっているね」


大会専用の特殊エリアに転移すると既にたくさんのプレイヤーがいた。

ここにはパーティ専用の観戦室のほかにこんな感じで広い部屋もある。みんなで見るか不特定多数と見るかってことだ。ちなみにここではダメージは受けない。


「あれが優勝候補の……」

「っつっても鍛冶屋だろ?」

「料理屋じゃねぇの?」

「ポーション屋って聞いたけどな」

「アクセサリーって聞いたんだけど……」


どれも間違っていないけど教えてあげる義理も無い。とりあえず割り当てられた観戦室に向かっていると


「おっ」

「むっ」

「……負けんぞ」

「僕たちが最強だよ」


魔王とすれ違う。そのままジャックやベルたちを言葉を交わしていると


『一回戦 Aチーム《王国心》《六人の武器屋》 B《THE・メイド》《6D's》 C《魔王の傘下》《小宇宙コスモ》 D《花弁》《黄昏色の詩詠い》』


「4つ同時に試合なんだね」

「みたいね」

「どこか気になるのある?」


観戦室には6つタッチパネル式のディスプレイがある。それを操作して見たい試合が見られるのだ。

間接キスって気付かなければなんという事は無いですよね

だがツゲオ、許さんぞ


大体の読者の皆様は予想しておられるでしょうが次回から戦闘多めとなります

一応書いておくとチーム《魔王の傘下》も6人です

つまり3人あぶれました

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