脱水症状
「100層突破オメデトウ!」
「ありがと、マモン」
「お疲れ様。今日はもう休んだら?」
「そうするよ、レヴィ。マリアたちは?」
「落ちたわ。学生だもの」
「うんうん、学生はやっぱり早寝だよねー」
「「アリアが言うな」」
背後のシンとエミリアが虐めてきた。
*****
「はい、と言うわけで夏休みも残すところ一週間となりました」
「嫌だー!」
「嫌なのは分かるよ。だけど色々あるじゃん」
「種族選択にダンジョン作製、そしてーー」
「「星獣!」」
マモンとレヴィの小芝居を眺めつつポーションを量産する。
「で、それがどうしたの?」
「どーも無いよ」
「単純に興味があるか知りたかっただけ」
「ふーん? そもそも星獣って言ってもレグルス使ってないからね?」
カウンターは自分でやってこそだよ。武器のスキルに頼るなんてダメダメだね。
「ならどうするの?」
「売ろうかなって迷ってる」
「「止めなさい」」
「えー?」
「それと中学生はさっさと寝なさい。どうせ宿題また終わらせてないんでしょ?」
「まだ?」
「また、もまだ、もどっちもよ。去年も最終日に泣きそうな顔でマモンに手伝ってもらってたじゃない」
ぴゅー
「下手な口笛してないでさ、そろそろ寝ないと寝不足で破裂するよ?」
「破裂⁉︎」
「知らないの? 中学生は寝不足になると破裂するのよ」
急に体が震えだした。
「お、お休み!」
「「お休み」」
2人の声が聞こえるかどうか、でログアウト。そのまま頭のデバイスを外して着替え。歯磨きしてトイレ行って
「セーフ」
なんとか破裂せずに済んだ。
*****
「破裂って……信じる方が難しくない?」
「前にね、似たような感じで言ったら『人間は不思議だから光り輝き出してもおかしくない』って言ってたの」
「信じる方が難しいわね」
*****
「すやぁ」
「朝よ。起きなさい」
「にょも⁉︎」
おでこに何か乗せられて冷たい。
「……シェリ姉?」
「遅くまで起きてたんでしょ。さっさと顔洗って朝ごはん食べて来なさい」
「ん……お母さんは?」
「さっき倒れた。脱水症状」
「ふー……へ?」
「それじゃ」
「あ、ちょ⁉︎」
聞き返そうと思ったらさっさと出て行っちゃった……え? お母さん倒れたの? 脱水症状?
「脱水症状って……お茶、飲まなかったのかな?」
とりあえずんーっと伸びをして着替える。洗面所に行って鏡を見ると髪がもじゃもじゃになっていたので櫛を通す。ストレートにしてからゴムでツインテールに。
「よし!」
とりあえず階段を降りて一階に。そのままリビングに行くと
「おはよー」
「おはよう、お姉ちゃん」
「お母さんは?」
「寝てるよ。疲れてるのと脱水症状だってー」
寝てるんなら仕方ないや……とりあえず
「朝ごはんってもう食べた?」
「お姉ちゃんの分も食べたよー」
「そっか」
台所に行って……アレー?
「私の分は?」
「食べたよ?」
なら無くても仕方ない……わけないよね。
「エミー?」
「シェリ姉が食べて良いって言ってたよ」
「うそーん」
「だってもうお昼ご飯の時間のほうが近いもん」
え? と思って時計を見るとあら不思議、11時半を越えている。
「ホントだ」
「でしょー?」
「うん。えっと今日は私だっけ?」
「そうだよー」
お昼ご飯は三人で交代制で作っているのだ。ちなみに《料理》スキルが無くても野菜の皮剥きは少し得意になった。味付けは塩胡椒一択だけどね。
「ふふふのふ~ん」
「おお、上手いねー」
「慣れてるし」
「どこで?」
エミの言葉にうーん、と唸って
「もう一人の僕?」
「中二病なの?」
「違うよ!?」
*****
「あ、注文多いよ」
「えー?」
マリアの言葉にげんなりしていると
「マリア、ポーションの在庫減ってる」
「え、あ、マジだ」
レヴィの言葉にマリアはポーションを作りに行った。僕は注文に目を通して
「あれ、耐久回復が多いね」
「アリアたちが《結晶の塔》をクリアしたからね。他のプレイヤーの目標にもなったのよ」
「ふーん」
素材持込のをどんどん作って休憩しているとコックさんとしての仕事も。そっちをこなしていると
「ただいまー、アリアはおはよー」
「マモン、おはよ。どこ行ってたの?」
「素材集めに。《氷砂糖》とか集めてきたの」
「ふーん?」
「《飲料》スキルゲットしちゃったからサワードリンクが造れるぜー」
《飲料》スキルってガチャ限定じゃなかったっけ……それと
「サワードリンクって?」
「ああ! それってハネクリボー?」
「サワードリンクってのはね、《レモン》とかと《氷砂糖》を一緒のビンに入れて《酢》を適量入れて作る飲み物よ」
「ふーん?」
「あと原液で飲んだら死ぬほど辛い」
「酸っぱいんじゃないの?」
「酸っぱすぎて辛く感じるの」
へー、と思いながらマモンの手元作業を眺めていても適量だ。とりあえず野菜を刻みつつフライパンに油を敷く。フライパンを加熱しつつ野菜を切り終えて
「んっと」
フライパンに移す。そのまま炒めて全体的に火が通ったら溶き卵を入れる。
「マモン、《コーヒー》飲みたい」
「はーい。甘くないと飲めないんだよね?」
「うん」
マモンがビンを冷蔵庫に入れ、《コーヒー豆》を取り出した。それを《挽き機》で挽いて紙の中に。そしてそれにお湯を注ぐ。濾された黒い液体がポットに溜まっていく。
「ほい、《ブラックコーヒー》は出来たよ」
「砂糖とミルク入れて欲しいな」
「はいはい」
出来上がった料理をカウンターのお客に渡して次の注文の品である《ピザ》を作る。生地はたくさん作っているから麺棒で伸ばす。麺棒の使い方と違う気もするけど知ったこっちゃ無い。
「《トマト》と《チーズ》と《ベーコン》っと」
「シンプルね」
「お客さんに言ってよ」
僕が内容を決めたわけじゃないんだし。ちなみにやろうと思えば生地だけを焼いた物も頼めるよ。メンタル強くないと出来ないけどね。
「今日はどうするの?」
「んー、特に何もしないで素材の整理とか?」
「なるほどね。あ、ルフ」
「へ」
振り向くとルフが。頭の上のちゅう吉は寝ている。
「どうしたの…………あ」
ルフのステータスを見ると進化できるって。だけど選択肢が《幼狼に転生》《大狼に進化》の二択だ。さっぱり分からない。
「……うん。そう言えばマモンは所属をどれにするつもりなの?」
「ん? 弓矢に補正がかかるエルフのつもりだよ?」
「エルフって基本貧乳らしいけど……?」
「気にしない」
マモンの顔から表情が消えた。見なかったことにしよう。
「そう言うアリアは?」
「んー、サラマンダー?」
「サラマンダーよりずっと速い!」
「ま、正直どれでも良さそうなんだよね」
「え」
「ドワーフにして鍛冶屋として腕を上げても良いしヒューマンとしてこのままでも良いし」
「あーね、どれにしても何かが下がるからこのままってのもありかぁ……」
悩むなぁ……あ、
「コーヒーで来た?」
「《アリアちゃんブレンド》完成してるわよ」
「そうなんだ」
「猫舌だから少し冷めるのを待ってたの」
ありがとー、とお礼を言って一口飲む。うん、
「熱い」
「でしょうね」
タイトル何事って思ったかい?
大したことないけどね
作者は毎年夏に確実に2回はなります
アリアが苦いコーヒーを飲めず猫舌って書いていたら猫耳着けたくなったじゃないですかどうしてくれる
これはもうルフの進化を忘れるのも仕方ないですね
マモンは運が良いという謎事実
マモン 製菓と飲料
アリア 料理
軽食店としてのカーマインブラックスミス従業員
稀に魔王がカウンターに立つ事も
サワードリンクは作者の家でほぼ常備される飲み物です
牛乳や水で薄めて飲みます
薄めないと喉が死にます
適量のルビはアバウト一択
評価五百越えたよ




