プレイヤーvsデータ
「っ!」
『っ!』
鏡のように打ち合う。《真炎龍の天剣》から噴き出す劫火も、《真風龍の天剣》から湧き出す烈風も鏡のように。
「ムカつくなぁ!」
だって
「僕はそんなにちんちくりんじゃない!」
「「そこ⁉︎」」
下から振り上げると同時に横から斬りつける。しかしどっちも受け止められる。カウンターのような剣戟を柄で弾き距離を取る。
「……ねぇ」
「なに?」
「……」
「言いたくないけどさ、僕たちより大分強くない?」
「「うん」」
どうしようもない、そんな気がしてきた。
*****
「プレイヤーのデータとプレイヤーを戦わせる、か。中々画期的なアイデアだと私は思うよ」
「そうかい。それはありがたい」
「だがね、プレイヤーのデータをどこで集めたんだ?」
「それはダンジョンの1層から99層だ」
「へぇ。時間かかるな」
「心配なくとも90層クラスのモンスターは時間が嫌でもかかる。データをコピーし、モンスター化するのも簡単な事だ」
「ふむ……そのデータに手は加えたのか?」
「もちろんだ。ステータスを2割ほど高めたさ」
「それは……随分な強化だ」
「だからこそ一対一がベストな仕様だ」
*****
「速いっ⁉︎」
『《居合・抜き》』
「っ、《一刀・桜流し》!」
瞬速の斬撃を鞘で逸らし
「《居合・神風》!」
『っ……』
「今のタイミングでも掠る程度……嫌になる」
『……』
腰を落とし、居合の構えを見せるもう一人の私。千年パズル解いてないのに。
「……」
同じ構え。おそらく使えるスキルも同じ。ステータスは私より上。
一瞬早くスキルを放とうと、私より速い相手なら一瞬では足りない。つまり短くとも二瞬、三瞬は必要。
「……」
だからこそ、動けない。先に動いた方が、カウンターを受ける、しかも状態異常のおまけ付きで。
勝つ方法は相手よりも圧倒的な速さ、もしくは隙を突く。
敗北条件は痺れを切らし、先手を取る事。どちらも似通っている。だからこそ
「……」
イライラが募って来てマジやばい。
*****
「……!」
『……!』
無言の気迫が激突しながら鍔迫り合う。無表情の僕に怒りすら芽生える。
「……ただのデータなのになぁ」
『……』
「とことんイライラするなぁ!」
一気に押して床を蹴る。前に出て崩れそうな様子の僕を蹴る。固い感触。防がれた。《夜明けと黄昏の天剣》もどきに。
「っ!」
すれ違った直後の振り向きざまの一撃、剣身に受け止められた。そのまま手を引いて突くも剣の腹に止められる。無表情だ。
「ああぁぁぁ!」
むしゃくしゃする。僕が僕に負ける? そんなふざけた事をありえさせてたまるか!
「《アーク『《ソードリバーサル》!』
防御のために構えられる剣を見て嗤う。ああ、所詮は最善を尽くそうとするAIだ!
アリアの真似になるけどスキルの発動失敗を引き起こす。《デスペラード》のように名前が被らないのならともかく、《アーク》などのカテゴリーなら最後まで言い切らないとスキルとして見なされない!
「っふ」
明確な隙を突いて背後から一撃。体勢を崩す僕に向けて
「《アーク!」
同じ事を繰り返す。防御体勢を再び取った僕の剣の隙間から一撃を加える。残り7割弱といったところだ。
*****
「おっと」
倒れそうになるのを剣を杖にして耐える。そのまま剣を支店に体を持ち上げて跳躍、壁に着地してそのまま跳躍、天井を蹴って急降下。激突する三本の剣。残り一本の剣は隙間を縫ってちんちくりんの肩を刺す。
『!?』
「僕に似た外見でそんな顔は止めて欲しいな!」
何も感じていないような顔で、驚きを表現しないで欲しい。形容しがたい表情の僕みたいで嫌だから。
「っしゃ!」
『……!』
袈裟懸けの剣が切り上げる剣と噛み合い、動きが止まる。そのままもう片方の剣を振りかぶられたけど蹴った。そっちの方が速いからだ。
蹴られた僕は僕を見ながら後ろに一歩よろける。その顔に向けて剣を振り下ろす。同時に横薙ぎで首を狙う。《致命的位置》を狙わないと、早く倒せないから。時間が掛かれば負けるのは、多分僕だから。だったら話は早い。速攻だ
「っ!」
『……!?』
高速で撹乱する。壁を走り、天井を駆け、速度を殺さずに加速し続ける。次第に僕も僕の動きが追えていないようになってきた。だから
「《真炎龍の天剣》《真風龍の天剣》解放」
三度吹き上がる劫火と逆巻く烈風が空間を揺らめかす。僕がそれに反応して顔を上げるけどもう遅い。その時には背後にいたからだ。
「やっ!」
『!?』
「せぃっ!」
『!?』
「だりゃっ!」
背後から斬り付けて反対側の壁を蹴って斬り付けて真上から斬り付ける。三次元的な攻撃は僕自身の反応を大幅に上回り一方的な剣舞となった。
*****
「……」
動けない。動くためには三瞬必要。《居合い》と二瞬……いつ来るの、そんな瞬間。そう思った瞬間何かが飛んできた。そして消えた。
「アリ……アもどき!?」
『!?』
「エミリア!」
「うん! 《居合い・神風》!」
数ある速い《居合い》の中でも最速を誇るスキル、これで二瞬。そしてアリアもどきが倒されたことへの動揺した一瞬で合計
「三瞬!」
『!?』
振り向いたその上半身が床に激突した。上半身と下半身が逆の方向に倒れる。
「……助かった」
「気にしないで良いよ。それよりもシンは?」
「シンなら……うん」
アリアの言葉に振り返ると互角以上の戦いをしているシンが。攻撃は掠らず、一方的に切りつけている。ちょくちょくシンもどきが変な行動をしている。AIにエラーを起こさせている?
「シン……凄いね」
「うん。何なんだろうね、アレ」
シンの剣は閃き続ける。一度たりとも攻撃を受けていない。最強のアリアと互角なのも納得だ。
逆にあの瞬間、シンがもしも話に乗って来なかったら私はキルされていた。
「………………」
散り逝く光の中、シンはゆっくりとその剣を鞘に収めた。
*****
「データを強化したのに負けた、か。プログラムの敗北を目にするのも中々珍しいな」
「ああ。だが、それならばチートを疑うべきじゃないのか?」
「いや。俺もSSOが初めてじゃないからな。あの三人や90層クラスのプレイヤーたちは知っている」
「へぇ」
「特にあのアリアというプレイヤーは今まで出プレイしてきたMMOの中で全て、最強の立場に立っていた」
「課金者なのか?」
「チーターでも課金者でもない。完全に普通のプレイヤーだ」
「しかし……開発側がそこまで評価するってのはどうなのかね?」
「こっちが越えるためにだ、プログラムとプレイヤーの戦いだ」
「ふーん……そう言えば次のスキルとかってどうなったんだっけ?」
「次のスキルは《召喚獣》などの使役系だな。それとプレイヤーがダンジョンを作ったり種族を選べるようにしてみるつもりだ」
「はぁ……なんでそんな面白そうなモンを夏休み終わり掛けにするんだよ」
「プログラミングの苦しさを少しは理解しろ」
*****
「うーん」
「味気無いなぁ」
「だね」
目の前に表示された『見事!』の文字に呆れる。色々とポイントやアイテムも貰えたけどね。見事って何さ見事って。
「で、ここからもしかして跳び降りるの?」
地上100階から開いた窓に少し当惑気味でエミリアが呟いた。
アリア、データをうわまわる加速からの一方的な攻撃
シン、データじゃ対応出来ない方法で一方的な攻撃
エミリア、硬直してアリアの作った隙によって勝利
エミリアは別に弱くないんだ……刀スキルのカウンターが豊富なのが悪いんだ
次回
夏休み末に星が現れるとの予告が
新スキルに種族などの新要素にアリアたちは適応できるのか⁉︎
次回、「城之内死す」デュエルスタンバイ!




