結晶の塔 終盤
「てゃっ!」
「んっ!」
「私の出番無いなぁ……」
前の2人が張り切っているので《天魔斬刀》を振るう機会が無い。せっかくアリアが作ってくれた新装備、使わなければ失礼というものだ。
「今何階層?」
「えーっと……大体69?」
「大体なのにやけに具体的だね」
シンの言葉に笑い返す。適当だから良いのよ。チョイスの理由も適当だし。
「と、すると後二層で系統が変わるね」
「そうね」
「問題無いでしょ」
シンの言葉に二人揃って頷く。いつの間にか、速攻で倒すのが難しくなってきていた。もっとも2人よりagiの劣る私が追いつく前に倒しちゃってるけど。
「そろそろ協力しない?」
「えー?」
「する必要ある?」
「……少し協調性について語るわね」
「「やだ」」
こういう時だけ協調性を発揮する……っ!
「二人共正座!」
「「やだ」」
「シン、合コン取り止めね」
「分かりましたお姉様!」
シンが陥落。それにアリアが信じられないものを見るような目だ。
「合コンって……シン、君いくつなのさ」
「14」
「え」
「え?」
「……僕の二つ上?」
まさかアリアも中学生だったとは……驚きね。若い若いとは思っていたけどね……そこまでとは。
「で、どうして協力しないといけないのさ?」
「それはね、そろそろ出てくるモンスターが一気に強くなるからよ」
「なんで知っているのさ?」
「勘よ」
「勘なら仕方ないかな」
それで良いのか、というシンの視線を無視して
「それじゃ、行くわよ」
先頭に立ち、階段を上る。螺旋階段を上って行くと……
「ヒドラ?」
「みたいだね」
「八岐大蛇でしょ」
シンと意見が分かれた。見詰め合って……心が折れた。
「それじゃ行くわよ」
階段の最後の段を蹴ってフロアに上がる。そのままヒドラに向かって駆ける。いつでも抜刀できるように柄に手をかける。そして吐かれる炎を避ける。
「ここまで来たのにこの程度」
若干呆れ、第二形態でもあるのかと疑ってしまう。そのまま駆け寄り、首に向かって斬りつける。避けられた。首自体の動きは速い。
首八本のヒドラ。伝承通りなら本物を切らないと増える。つまり本体を見極めて斬らないと増えるわかめ。そう思ったら
「《居合い・神風》!」
「そりゃあ!」
二人の馬鹿が躊躇無く手頃な首に切りかかった。そして何も考えていないかのように切り落とした。
「あれ?」
「ふえてる?」
「ヒドラの伝承を忘れたの!?」
「「知らない」」
「信じられないほどの馬鹿ね……っ!」
駆ける。11本となった首のうち、一本だけ不審な挙動をしていないかを探る。
中央に聳える、まるで俯瞰するようなヒドラの首。それがまるで……急所のように見えた。だから
「アリア! シン! 中央の眺めているあの首を切り落としなさい!」
「分かった!」
「了解!」
*****
「マリア、注文ってどうなっているの?」
「今は結構少ないですね」
「アリアとエミリアのが多いわね」
「注文するのはそれくらいしかないですから」
「付与は?」
「五分で出来ますし」
ふーん、と言ってマモンはお菓子造りを再開する。クッキーみたいだ。
「一つでエンチャ効果もあるし中々使えそうですね」
「うん。薄利多売にしようかな」
「他のは?」
「クッキーは冷えても問題ないから造り置きしておくのよ……アジアンは?」
「部活の集まりで休みです」
テニス部の……なんだっけ、大会前の決起会みたいな感じだっけ? アジアンはレギュラーだって言っていた。明日は早起きして観に行く予定。しかし
「マモンは部活をしているんですか?」
「そうね……傘下の時点で部活っぽい雰囲気もあるけど」
マモンはそっと微笑んで
「何部だと思う?」
「え……弓道部?」
「外れ」
「裁縫?」
「ある大学の方が少ないわよ」
「……サッカー?」
「女子でサッカーある大学もあるけど外れ」
うーん、と悩んでいると
「空手と柔道と合気道のどれだと思う?」
「え!?」
「この中にあるから」
何そのチョイス、と呆れながら考える。アバターとは言えリアルの身体情報を元に形成されている。柔道部のようにがっしりとした肉体でもないし腕も太くないから
「合気道?」
「正解。だけど外れ」
「え!?」
「全部よ」
嘘だー、と呆れていると
「ただいま。二人だけ?」
「あ、レヴィ。お帰り、どこ行ってたの?」
「《結晶の塔》よ。90台はソロでは無理ね」
レヴィがため息を吐きながらも笑みを浮かべる。
「素材たんまり?」
「そうよ」
「良いなー、今度一緒に行かない?」
「食材集めね……今アリアが行っているんだけど」
「っち、タイミングミスったか……もう少し待てばよかった」
「あはは」
「その《結晶の塔》って一体なんなんですか?」
「経験値とアイテム目的で行くダンジョン。途中からボスラッシュよ」
少し興味を惹かれていると
「今のレベルはどれくらいなの?」
「えっと……495です」
結構上がった。そう思ったけど
「まだ低いわね」
「そうね」
「700行ったら言いなさい。一緒に行けるから」
求めているレベルまでかなり遠い。そう思っていると
「そう言えばスキルもっと取らないとレベル上がらないわよ」
「んー、今のレベルで満足しているんだけど」
「dexやstrが上がるスキル取りなさいよ。片手長剣でも良いし」
「熟練度はステータス関係ないからそんな荒業も出来るね」
聞き耳を立てているようだけどそれも良いかと思った。すると
「マリア、《投擲》《鷹の目》《剛腕》《敏捷》《堅牢》はちゃんと習得している?」
「え」
「遠距離中距離ならこれら全部スキルレベル上げないとダメよ」
「マモン、そういう強制は良くないってみんなで決めているでしょ」
「そうだったね、忘れて」
*****
「硬い!」
「さすがとしか言えない……」
「機械って恐ろしいなぁ」
機械で出来た巨人を相手にしているが硬くてダメージが通りにくい。硬く、鈍重だ。
「古代の機械巨人……バトルフェイズ中に魔法罠をを発動させないつもりね」
「普通に魔法を使える人を連れてくるべきだったね」
「まったくだよ」
床を駆け、壁を蹴り、宙を舞う。真上からの奇襲に巨人は反応できない。振り下ろした剣が巨人の頭を打つ。下手に切込みを入れると抜けなくなり、動きが止められる。だから下手な攻撃をすることが出来ない。
天剣の力を解放すれば何とかなるかもしれない。そう思ったらシンとエミリアが前に出た。
「行くよ、お姉ちゃん」
「着いて来い、馬鹿」
二人が床を蹴った。そして振り下ろされる拳を避け、目からビームも避ける。弱そうな間接部分に流れるような連続攻撃を叩き込んでいく。そのダメージは徐々に大きくなっている。アレはまさか
「《剣舞師》……」
精霊と契約していないのが悔やまれた。
巨人は狂ったように両手を振り回し、足で踏み荒らす。しかし二人は軽やかな動きでそれを避け
「見えたよ」
「分かった」
胸部の装甲をはがした。そしてその奥にある輝く水晶。それに向かって
「《居合い・絶刀》」
シュン、と音が聞こえ、水晶が砕け散った。
「ダメージだけじゃ倒せないモンスターもいるんだ……
ようやく81階層。まだまだ先は長そうだ。
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これは読者の皆様から「オメデトウ!」か「知ったこっちゃねーよ!」のような感想がくるでしょう
古代の機械巨人、昔は強かったんですけどねー
最近は古代の機械よりサイバーが強くなったイメージがありますしね
アニメだと古代の機械混沌巨人なんて出たんですけどね
しばらく結晶の塔の攻略が続いております
これは作者がこういった系のダンジョンなどを好きだからです(無限回廊とか)
ちなみに攻略始まってから1日経っていません
次回予告
凄く…大きいです◯止◯◯◯ピアノが
◯◯◯◯◯◯◯◯◯め◯◯◯鳴り出した⁉︎
◯◯◯◯◯◯◯◯◯ろ◯◯眉毛!
竜の落とし子⁉︎◯◯ぉ
◯◯◯◯◯◯◯◯◯っ◯◯はいはい
◯◯◯◯◯◯◯◯◯!◯◯ホープホープ
予告書くの疲れた……感想欲しい……
エンジェルビーツに感化され過ぎなんだよ……感想欲しい
もう疲れたよパトラッシュ……感想欲しい




