初めてのPVP
「アリア⁉︎」
「アリアちゃん⁉︎」
僕は錫の剣を握り締めて先頭の男に斬りかかる。人数は5人。フルパには1人足りないのを喜びながら2回切る。するとようやく事態に追いついたのか
「舐めるなぁ!」
「舐めてないよ」
振り抜かれた剣を飛び越えてその肩を切る。ダメージはしっかり通っているようだ。すると男の体が黄緑の光に包まれる。まるで回復するように。
誰だ、どいつが……あの後ろにいる奴か。
「邪魔をっするな!」
怒気と共に男の体を蹴って跳躍して
「アークスラッシュ!」
2連撃は回復役、おそらくプリーストのスキル持ちの体力を削り切る。その体が光となって……ふわふわと浮かぶ光の玉になる。
「野郎っ⁉︎」
「僕は男じゃないよ! ブラスト!」
振り下ろされる斧を正面からはじき返して一瞬にも満たないスキル硬直。そして解けざまに
「アークスラッシュ!」
2連撃、しかし前衛のようなのに体力が削り切られるのはいかがなものか。そう思いながら飛んで来た炎の玉を避けて
「てめぇ⁉︎ スキル硬直をどうしやがった⁉︎」
「僕は二つだけスキルマにしているスキルがあるんだよ」
残り3人。剣士と槍使い、魔法使いだ。そして放たれた炎の槍をあえて前に飛び込む事によって回避して
「ブラスト!」
槍使いが構えた槍ごと吹き飛ばす。そして振り向き様に
「アークスラッシュ!」
剣士が一番レベルが高いのか耐えた。だがその顔は恐怖と驚愕に歪んでいた。だけど
「ファイアーボール!」
飛んで来た炎の玉を下がって回避。直線起動の炎の玉を慌てて避けた。
「くそぉぉぉぉ!」
「遅いよ、君たち」
突かれる槍を剣で逸らして一回転。そして低い体勢で槍使いを見上げる。その顔はやべぇ、みたいに剣士よりは悲痛じゃない。だから躊躇なく
「ファイアーボール!」
飛んで来た炎の玉、それは立ち上がると当たる、とても上手い軌道で僕に迫る。だけど立ち上がらなければ良い!
「ロウブラスト!」
低い体勢でさらに低い軌道の剣は足首を切る。一撃では削り切れない。だからさらに低い体勢で踏み込んで
「アークランス!」
2連撃を叩き込む。これで残り2人だ。迫る炎の槍を回避して
「魔法使いが邪魔だな」
「ファイアーボール! ファイアーボール! どうして当たらないの⁉︎」
「だって僕が最強なんだから」
見てから回避しながら近づく。もはやMPが切れている。それなのに魔法使いはその手に持つ杖を振って僕に攻撃を仕掛ける。杖スキルも取っていないのにそれは
「お粗末にもほどがある!」
「ひぃっ⁉︎」
「アークブラスト!」
一撃目は重く、2撃目は吹き飛ばす連続重攻撃は魔法使いのHPを削り取る。そして光が。残り
「最後の1人だね」
「ひっ⁉︎」
「逃げても構わないよ。周りの人たちになんと思われても構わないなら」
「くっそぉぉぉ⁉︎」
僕は少し嗤って
「立って立ち向かえば勝機は0じゃないんじゃないかな? 少なくとも負け犬みたいに地べたに座って泣き喚くよりは……さ」
わざと足音を立てて後ろに下がり、木にぶつかった剣士に近づく。剣士は慌てて立ち上がって
「悪かった! 許してくれぇぇ!」
「ふぅん、仲間の事は気にしないんだ」
「そそそれはあんたには関係無いだろ⁉︎」
「へぇぇ? 関係無い……ねぇ」
思いっきり当事者なんだけどね。
「ちなみに覚えているか分からないけどね、これ、録画しているんだよ」
「⁉︎」
「だーかーら、これから君の立場は仲間が負けたら自分の保身に走ったクソ野郎って事になるよね?」
「なんでもするから⁉︎ それはやめてくれ⁉︎」
「何もしなくて良いよ」
僕は錫の剣を振りかぶって
「諦めたらそこで試合終了とはよく言ったものだね」
振り下ろした。しかしその剣は剣に防がれた。
「へぇ、やる気あったんだ」
「……った……う」
「ん? 何を言ったのかな?」
「俺が勝ったらその動画を消してもらう!」
「良いよ、僕が最強なんだからね」
剣士は涙を拭い、剣を僕に向ける。僕と同じで片手長剣。その一撃は速く、要求strも低い。しかしその分空いた片手に盾が必須と言われる。ほとんどのゲームでのセオリーを無視したそのプレイスタイルは僕と同じだ。
「アークペンタゴン!」
「アークブラスト!」
5連撃を中断させるように放った連続重攻撃は一撃目でお互いを弾き合い、2撃目で剣士のスキルを中断させた。しかし
「うぉぉぉぉ!」
「っ⁉︎」
スキルが中断されてもそのまま剣を振るのは予想外だった。慌てて二歩下がり
「リープスラッシュ!」
「わわわ⁉︎」
片手長剣突進系スキル持ちの剣士かよ⁉︎
「くっ」
「危ないなぁ」
ギリギリで地面を転がって回避。その勢いで立ち上がって
「アークスラッシュ!」
「ソードパリィ!」
防がれた。だけど防御系のスキルはクールタイムが長いはずだ。だから
「ブラスト!」
「なっ⁉︎」
「アークスラッシュ!」
吹き飛ばした体に追いついての2連撃は確実にHPを最後まで削り終えた。僕の勝ちだ。
とりあえずメニューを開いて録画を停止して動画の処分を考える。動画投稿サイトに流すのも面白いけど可哀想だ。
「うん、経験値もアイテムもいっぱいゲットっと」
「お疲れー、アリアちゃん」
「お疲れ様」
「マモン、きり。ずっと見ていたの?」
僕の言葉に2人は頷いた。そして
「アリアちゃんにしては結構いたぶったね」
「うん、貧乳を馬鹿にする奴にはね」
「やーい、貧乳のアリアちゃ〜ん」
「マモン?」
「あ、あはは、冗談よ。そんな座った目で見ないで」
マモンは乾いた笑いを浮かべて
「それにしても面白いね」
「何がさ?」
「かつて思い上がりおにゃの子って呼ばれていたアリアちゃんがそう呼んだ相手をズタボロにしちゃうんだから」
僕はそれに頷きながらアイテムを見て装備を変える。今まで着けていなかった手装備や手首装備、首飾りに指輪、脛当てなどたくさん手に入った。だから
「わぉ、随分と強そうになったね」
「これでも素早さボーナス優先だけどね」
「防御力はどれくらい?」
「8倍くらいの73」
「元が一桁⁉︎」
マモンの驚きを無視して
「きりたちにも経験値入ったよね?」
「うん、アイテムもね」
「楽して稼ぐなんて羨ましいなぁ」
「あはは、さっきのはアリアが馬鹿にされたのに怒っただけじゃない」
「まぁ、そだね」
僕は錫の剣から鉄の剣に装備を変えて
「マモン、二刀流のスキルってあるの?」
「うーん、まだ無いかな。アップデート待ちだね」
「ふむふむ」
鉄の剣は錫の剣よりも重いはずだけど装備が変わったおかげかボーナスで少し軽く感じる。耐久はそこそこ減っているから
「あれ? 鍛冶屋するの?」
「うん、耐久を戻しておきたいし」
「うん、それは大事だね」
「あの、アリア?」
「何かな?」
僕はインベントリから簡易炉を取り出して火をつける。火打ち石は街でお安く売ってあった。とりあえず耐久を戻すには
「砥石と板が必要なんだよね?」
「うん、炉は必要無いよ」
「え?」
「え?」
僕は火打ち石を一個無駄にした事にため息を吐いて
「砥石は買ってたよね?」
「うん」
「なら板の上で砥石をかければ良いんだよ」
元々砥石にも耐久を回復させる効果がある。しかし鍛冶屋スキルによる耐久の回復なら耐久の最大値が伸びる。鉄の剣の耐久値は86、回復後の今では耐久値は90となった。
戦闘メイン回でしたね
どう?
分かりやすかった?
とりあえずアリアの装備は粗方整いました
シリーズやボーナスは揃っていません
作るにしても付与アイテムによって変わるし
次回からイベントが始まる予定




