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夏祭り

「よぉ、エミリア。今日はどうしたんだ?」

「ちょっと私とこっちの2人の話をしたくて」

「……入れ。お茶を淹れるから座って待っててくれ」


魔王の言葉に従って手を引きつつ一階の応接間に。作った理由は無いらしいけどちょくちょく利用している姿を見かける。


「どっちも紅茶で良いか?」

「あ、私コーヒー」

「そっちは?」

「同じで」


魔王の習得しているスキル《飲料精製》によって作られた《コーヒーの素》。それに色々して


「砂糖とかミルクは自分でどうにかしてくれ」

「私はブラックでいけるから」


SSOここのコーヒーはコクが深い。純粋な苦味が美味しい。最もスキルの熟練度とレベルによって差が大きいらしい。


「それで、何の用だ?」


一息吐き、魔王は問う。それに顔を見合わせて


「話は2つあるの」

「ほぉ?」

「どっちもお願い」

「そうか……ま、予想出来るがそちらの口から聞きたい」

「うん。まず1つ目は私が……その……」


言い辛い。一旦深呼吸して


「《魔王の傘下》に所属したい」

「良いぞ。で?」

「え?」

「どうした?」

「あんまりにも早くて……適当じゃないの?」

「心外だな。俺も人を見る目はある。そして数日お前が加わった状態も見て知っている。そちらから言わなければこちらから誘おうかと思っていたくらいだ」

「……ありがとう」


礼よりも話を進めろ、と言わんばかりの魔王。だけど


「ほら、言いなよ」

「う、うん」

「一応自己紹介してくれると助かるな」


素知らぬ顔の魔王はコーヒーを一口飲む。そして


「話し辛いだろうがここには俺たち3人しかいない。ブブは仕事で落ちたしマモンとレヴィもレポートを作成中。アリアたちは祖母の家に帰省とかでな、俺だけが今日から盆休みだ」

「ホワイトな企業なんだね」

「そうでもない」


両腕を肩の高さまで上げて首を横に振る。米国人みたいなオーバーアクションは緊張をほぐしたのか


「僕はシンです」

「……名前、変えなかったのか」

「はい」

「そうか。それで?」

「……僕も《魔王の傘下》に入れてください!」


頭を下げるシンに魔王は目を細めて


「俺としては構わない。だが他のメンバーの心情を察する事は出来ないからな、色々とぶつかるだろう」

「……」

「俺たちはそもそも10人から始まった。その頃の奴らは気心知れている。それ以降の奴らも大なり小なり分かる」

「……」

「決して楽な話じゃないだろう。それでもお前は良いのか?」

「……はい」

「予想だが中学生辺りだろう。勉強はちゃんとしているか?」

「……少し」

「全然よ」


私の言葉にシンが驚いたような目をする。言わないでいるけど隣の家の窓に映って何をしているのか少しは分かるのよ。何故かずっとカーテンをしている隣の家を恨みなさい。


「親孝行は? 料理くらい出来た方が良いぞ。俺みたいに一人暮らしで苦労するからな」

「一人暮らしなの?」

「ああ。就職先が実家から通うには辛くてな」

「ふーん。どんな会社?」

「ややブラック」


苦笑する魔王に釣られて笑みを浮かべるシン。それに魔王は頷いて


「それじゃ《魔王の傘下》のメンバーは15人、か。キリが良いな」

「前は13人だったの?」

「ああ。それはそれでキリ良く不吉な数字だったからな」

「それってキリが良いの?」

「良くない」


*****


「おーおー、モテモテだねぇ」

「ねー」

「気楽に言ってくれるわね……」


疲れた様子のシェリ姉に笑ってエミに手を伸ばす。それをエミが不思議そうな顔でとる。


「エミ、一緒に回ろ」

「うん!」

「待って⁉︎ 1人にしないで!」

「「えー?」」

「お願い! なんでもするから!」


周囲から「今なんでもするって」みたいな声が聞こえる。それを無視してシェリ姉とも手を繋いで


「どうして1人は嫌なの?」

「……ナンパが多いのよ」

「ふーん。そりゃ良ござんしたねぇ」

「アリアちゃんもいずれこの苦しみが分かるわ」

「エミはー?」

「エミも……って苦しみたいの?」


シェリ姉が驚きの表情でエミに問うと屈託の無い笑顔で頷くエミ。意味が分かっていないみたい。良かった。Mじゃないかと不安になっちゃった。


「エミも一緒が良いのー」

「そうね」


シェリ姉がエミの頭を撫でて夏祭りの様子を見回す。お婆ちゃんちに滞在するのは明後日まで。だから精一杯楽しんできなさいってお母さんが言っていた。


「あ、わたあめがあるよ」

「ホントだ。シェリ姉とエミもいる?」

「んー、三人で一個を分けない?」

「それが良いねー」

「はいはい」


屋台のおっちゃんに電子マネー用のタッチパネルを操作してもらって払う。型落ち品だから私には操作できなかった。もう少し新しいのなら出来たのに……


「鳥栖って結構自然が多いんだねぇ」

「ううん、福岡に自然が無さ過ぎるのよ」

「大濠公園とか舞鶴公園にはあるよ?」

「ビル街の近くね。あ、エミ」


シェリ姉がエミの髪についたわたあめをそっと取る。


「アリアちゃんもエミも元気ね」

「シェリ姉こそ」

「私は……ホラ」


眼で示された方を見るとたぶん中学生くらいの男が。その男を囲んで「行けよ」だの「勇気だせよ」だの言っている。ははーん、


「モテモテだね」

「他人事のように言うわね」


頬をピクピクさせるシェリ姉。……アレ?


「エミは?」

「ん? アレ?」

「どこか行っちゃったのかな?」

「迷子かもね」

「なんで落ち着いているの?」


エミなら大丈夫かなー、って思っているから、と言ったら頬っぺたを引っ張られた。


「まだ小学五年生なのよ。一人じゃ危険」

「シェリ姉は過保護だよ」


言うだけ言って辺りを見回す。エミの着ている浴衣は黄色、目立つと思ったけど


「人が多いなぁ」

「実家に帰省しているのはうちだけじゃないのよ」


分かれて黄色を視線で追う。そして


「エミ!」

「どうしたの? お姉ちゃん」

「何しているのさ……」

「えっとね、焼き蕎麦があったから買おうとしているの」

「……危ないからせめて一言、言ってからにしてよ」

「えー?」

「心配したんだからね」

「はーい」


エミは焼き蕎麦の入った透明の容器を両手で抱えて


「シェリ姉は?」

「エミを探しているよ……って何しているのアレ」


シェリ姉が指示を出し、それに付き従う男達。本当に何しているのさ……


「シェリ姉! いたよ!」

「ホント!?」


シェリ姉の表情がほっとしたような笑顔になり、そして険しくなった。そのまま私たちに近づいてきた。嫌な予感がしたので焼き蕎麦を受け取って


「あひゃっぁぁぁ!?」

「ふふふ、何も言わずにいつの間にか姿を消すなんて誰に似たのかしらねー?」

「知らないよー!?」

「そう」


シェリ姉に頬っぺたをむぃむぃされてエミが悲鳴を上げる。あはは、と笑ってしまった。

明後日に変える、そう思うと随分と久しぶりのようにも感じる。もっとも一週間以上前のことだから当然っちゃ当然かもしれないけど。


「みんな、元気かな」

「そうだと良いね」

「うん」


空を見上げる。星がたくさん輝いている。キラキラしている。とても綺麗だ。だけどそんなちっぽけな輝きよりももっと良い輝きがある。みんなといる時間のほうが輝いている。

そう思うと、たったの二日間がとても長く感じた。

今年のソーニョの目標

完結もしくは中断しない


はい、と言うわけで2章最終回です

多分え⁉︎みたいに思う人もいるでしょうがスルーしてください

次回からアリアたちがSSOに帰って来ます


次章予告

アップデート後の世界

新スキル

新たなモンスター

新ダンジョン

新たなアイテム

様々なものの中で夏休みの残りが2週間を切る……


アイデア欲しい

リア友に言われた某キャラクターをラスボスってのは無しとしてアイデア欲しい

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