それから時が流れた。
NO.6 それから時が流れた。
目覚めたら半年の時間が流れていた。(普通に生活してました)
この半年で俺の体は既に成人と変わらない大きさへと成長していた。
モンスターの成長率、半端ねぇ。パネェ!!
ホネ川君も以前より背丈が伸び、男前に磨きが掛かった。(様な気がする)
あれから、スキル:リポップについて色々と分かった事が有る。
リポップは基本的に俺の体が破損した場合に自動的に発動する仕組みの様だ。
配下であるホネ川君のみが傷付いた場合は発動しない。
あくまで、俺のついでとしてのみ、リポップ出来る。
リポップすると、怪我の具合に関わらずに元の健康な状態へと回帰出来る。
例え、灰に成っても元に戻れるのは、既にチート能力である。
因みに自動発動と言ったが、正確には1時間毎の発動だ。
傷を負ってから1時間後にリポップが発動する。
単純に一日24回ほど、リポップ出来る計算だ。
まあ、解った事と言えばそれ位だ。
★
それはそうと、今日はホネ川君とここ半年程、いつもの日課と成り果てていたネズミ取りへと、腐肉川の上流へと赴いている。
到着と共にまず日課となっている剣の素振りを終えるとホネ川君と狩猟を開始する。
俺達の最近の獲物はもっぱら人食いネズミ。
今も、目の前で人食いネズミと睨み合いの最中だ。
ぢゅ~・・・・・・、ぢゅぅぅぅ!!
「ゾンビパパ直伝!ゾンビパーーンチ!!」
剣は如何した!?って?
いや、これ位の相手に剣なんて抜いてちゃ、この先やって行けないかな~っと思って素手で相手をしてみました。
ぢゅぅぅぅぅ・・・・・・。
息絶えた人食いネズミをズタ袋に回収すると、ホネ川君の方へと向かう。
ヂュゥゥゥ……。
丁度、ホネ川君も弓矢で仕留めた所だった。
ここ半年程前からホネ川君は弓矢を愛用している。
何でも、本人曰く、矢が獲物に当たる瞬間がとても快感なのだとか……。
俺には良く分からない。
「さあ、今日はこれ位にして家に戻ろうか?」
「カタッ?カタカタカタッ。」
家に戻る途中で、腐肉村で倒した人食いネズミをお金に変える事にした。
実はゾンビの村でも普通にお金のやり取りが有る。
この半年で知った事の中で、最もカルチャーショックだった事かな?
死体が金を使うのかよ!?ってね。
「おい、聞いたか!?村の外で『腐肉食い』が出たらしいぞ!」
「何でも、既に何人かゾンビが食われたらしい……。」
「子供達を外に出しちゃいかん!」
今日は何だか村の中が騒がしいなぁ。
「ホネ川君?何だろうか?腐肉食いって?」
「カタッ?カタッ?カタッ?」
俺達は困った時の知恵袋!ゾンビパパに尋ねる事にした。
「腐肉食いかい?それはもう恐ろしい存在だよ!私達ゾンビの天敵と言って良い存在さっ!奴らは素早い動きで獲物を追い込み、鋭い爪で肉を裂き、その牙で我らゾンビを食べ尽くすんだ!ゾン吉もホネ川君も腐肉食いに出会ったら急いで逃げるんだよ!いいねっ!」
「ハ~イッ!「カタカタッ!」」
俺とホネ川君は自宅の庭の隅で、小さく肩を並べてヒソヒソ話状態へと移行する。
「ホネ川君、……腐肉食い、倒しに行こうぜ!」
「カタッ!?カタカタッ!!」
「もちろん!本気さッ!!」
「カタカタッ……。」
ホネ川君はやれやれっと言った感じに肩を竦める。
この半年で、俺の無茶に付き合わされて来た彼故に、説得しても無駄であると諦めた様だ。
早速、腐肉食いが現れたという町外れへとやって来た。
辺りは腐臭が漂い(何時もの事です)地面には被害者の物と思われる大量の血痕(腐肉谷では普通に落ちてる量です)が残されていた。
「如何やら、腐肉食いは此処でゾンビを食い散らかした様だな。」
某名探偵風に現場検証を行う。
「カタッ!カタカタッ!!」
「如何した?ワトソン?もといホネ川君?……なに?現場から立ち去ったと思しき足跡が続いているだって!?」
俺達は現場に残された足跡を辿り、犯人を追い掛けた!
足跡は腐肉川の近くに空いた窪地まで続いている。
すると、窪地に倒れる人影が有った。
腐肉食いに連れて来られたのだろうか?
辺りに腐肉食いの姿が無いか確認しつつ倒れる人影へと近づき姿を確認する。
「ワォ……。美少女じゃん……。」
可愛かった。
何が可愛かったかって!?
獣耳が付いているんだよ!
少し丸みを帯びた耳で、猫耳か犬耳かは分からないけれど、とにかく可愛らしい!!
腕と足が若干、斑模様の毛に覆われいる事を考えれば、彼女は獣人と言うやつでは無いだろうか?そこが、又良いね!!
しかし、彼女が可愛らしいと思える最大の理由はこの少女が腐っていないと言う事だろう!
腐っていない生物を目にするのは実に半年振りなので、少し感動を覚えてしまった程だ!
とにかく、この少女をこんな腐肉食いの徘徊する場所に放置しておく訳にはいかない!
幸い、少女の慎ましい胸は上下に膨らみ、呼吸運動をしているのが見られるので、命に別状は無いと思われる。
動ける様なら事情を説明して一緒に来て貰おうか?
「カッ、カタカタ!?」
「何だよ?ホネ川君?悪いけど、もう少し後にして貰えるかな?今は取り敢えずこの美!少女を介抱する事が先だ!」
何か言いたそうなホネ川君の言葉を無視して俺は横たわる少女の肩を揺らす。
「君ッ!大丈夫か!助けに来たぞ!」
「ウッ…、ウンッ…?」
少女は身を起こすと気怠そうに瞳を開け、俺と目を合わす。
「うにゅ……。」
少女はしゃがんで脇に座る俺の首に手を回して抱き付いて来た。
少女の顔が近い!!
「えっ!?ちょ!?嬉しい!じゃない!!コ、コラ!抱き付かないの!」
「うにゅ……いただき、ます!」
えっ?と思った時には少女に喉元をガブッと噛み千切られた!?
ア~レ~ッ!!食~べら~れる~!?
★
『スキル:リポップを発動します。』
「ごちそうさまでした。」
「いえいえ、お粗末様でした。」
「カタカタッ。」
何と言うかね……、彼女こそが腐肉食いの正体でした。
何でも、ハイエナン族と言う獣人で好んで腐肉を食らう種族らしい。
いや、ホネ川君分かって居たんなら早く言おうよ!
えっ!?言おうとしたのに、俺が聞いてくれなかったって?
はいはい、俺がアホゥで御座いました。
そんなこんなで少女に美味しく戴かれた後で、お互いに自己紹介をする事に成った。
「俺はゾン吉。コッチのスケルトンはホネ川君だ。良かったら君の名前を教えて貰えるかな?」
「うん!いいよぉ~!私、エナ子!ゾン吉スゴイ!食べても消えない!?凄くおいしかった!私気に入った!又食べてもいいっ?」
「う~ん。腐肉村の人達を食べないって約束してくれるなら……OKだっ!!」
「カタカタカタッ!!」
いいのんかい!!と小気味よくホネ川君がツッコミを入れて来る。
「良いんだ。ホネ川君が心配してくれるのも分かるが、全ては村の為、俺一人が犠牲に成れば村の安泰が約束されるのならば、俺の体なんて安い物さ……。」
「カタカタッ?」(本音は?)
あの耳を思う存分にモフモフしたいんじゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!
と言う訳で、ハイエナンの少女『エナ子』を配下に加える事にしました。
獣耳警報発令中!!
獣耳は……。獣耳はどこだーーっ!!(突発性獣耳症候群:発症中)
「ど、どなたか読者様の中で獣耳をお持ちの読者様はいらっしゃいませんか!?」