ゾン吉、探索する。
NO:4 ゾン吉、探索する。
翌日、寝起き様に体の違和感を覚える。
体が痒い…、ポリポリ。
んっ?…ガバッと飛び起きる!
「今どっちの手で体を掻いてた!?」
自分の体を確かめると左腕が其処に有った…。
衣服ごと持って行かれた左腕が、目覚めたら綺麗に治っていた。
余りの嬉しさにちょっと泣いた。
でも何で?
疑問が湧いて来る。
失くした筈の左腕が何故?
そう言えば、昨日寝入り端に何か聞いた気がする…、確か~。
『スキル:リポップが発動しました。』だったか?
「リポップって確かゲーム用語で再湧きとか再配置とかそんな意味じゃ無かったかな?」
まあ、解らない事は聞いてみよう。
早速ゾンビパパとゾンビママにリポップについて聞いてみた。
二人とも俺の左腕が元に戻っている事に喜んでくれたが、リポップについては良く解らないらしい。
まあ、深く悩んでいてもしょうがない!
取り敢えずは左腕が治った事を喜ぼう。
「イィィィィヤッホォォォォ!!腕が治ったぜェェェ!!」
取り敢えず嬉しさを体一杯を使って表現してみた。
たまたま見ていたホネ川君にチョット引かれた…。
誰も居ないと思っていたので、余りの恥かしさに死にたいです。
あっ。ゾンビだからもう死んでるじゃん…。
★
今日は、我が家で生活を共にする事に成ったホネ川君の為に生活物資を求めてゾンビパパとホネ川君と共に腐肉谷の町へとやって来た。
腐肉谷の中央には河が流れており、様々な物が流れ着く。
そんな漂流物目当てに両岸には簡素な家々が立ち並び町が形成されたらしい。
早速、町に入ると異様と言える光景が目に飛び込んで来る!
通りには目を覆いたくなるほどの死体、遺体、死に体が目に飛び込んで来る。
まあ、ぶっちゃけて、みんなゾンビって事だけどね。
とにかく町はゾンビで溢れかえっていた!
両親ゾンビを見慣れたと思っていた俺だが、某ゾンビパニック映画も真っ青な光景に俺の中の大事な物がガリガリと音を立てて削れて行く気がする…。
「ゾン吉、ホネ川君。パパは向こうで買い物をして来るから町を自由に見てくると良い。パパは又此処で待っているから。」
そう言ってゾンビパパは行ってしまった。
仕方が無いのでゾンビパパの言う通り、町を散策してみる事にした。
町では色々なゾンビが行き交っている。
中にはネコミミやイヌミミを付けたゾンビなども見かける。
「へぇ。あんなゾンビも居るのか~。」
腐っていなければ、きっと萌えたに違いない。
腐っていなければ、きっと萌えたに違いない!
大事な事なので二回言いました。
通りには色々な商店が立ち並んでおり、ホネ川君と冷やかしながら見物して回る。
「あっ。武器も売ってるのか。」
露天に並んで居る武器は所々錆びついているものの、まだまだ実用に耐えそうな物ばかりだ。
腰に吊り下げている、錆びた短剣をソッと撫でる。
コイツにせめて刃が有れば、色々と出来るのだが…。
その後、ゾンビパパと合流してから相談してみた。
「それならば、町の中央を流れる腐肉川の上流を探してみたら如何かな?」
という、有難いお言葉を戴いた。
何でも川の上流には人間の街が有るらしく、其処から流れ出た物が色々とこの腐肉谷に流れ着くらしい。
「ひょっとしたら、使い物になる刃物が手に入るかもよ?」
★
と言う訳で翌日、俺とホネ川君は早速、腐肉川の上流を目指して散策を続けている。
俺達の他にもお宝目当てのゾンビ達が案外うろついて居る。
「カタ、カタカタカタ!」
「うん、そうだね。もっと上流に行かないと目ぼしい物は他のゾンビに取り尽くされちゃってるよね。」
俺達はズンズン上流へと突き進んで行く!
どうもゾンビの体は疲れを知らない様で、ハイペースで歩を進める事が出来る。
「う~ん。どうしようか?これ?」
上流へと歩を進める俺達を塞き止めるかの様に大岩が道を塞いでいた。
押しても引いても齧ってみても(少し、しょっぱい)大岩はビクともしない。
回り道しようにも他に道は無く、川も水嵩が高く、入れそうにない。
「此処で行き止まりかよ~。」
「カタカタ~。カタッ!?」
ホネ川君が何かを見つけた様で、近くの岩陰へと進んで行ったので後を追う。
「何か有った?」
「カタッ!」
ホネ川君が指差す先には、大きな骨が落ちていた。
「これは…。大きな腕の骨だね。」
すると、ホネ川君がポキッと自分の骨を外す!?
「カタカタカタッ!」
「えっ?この骨を腕に付けるの?」
ホネ川君の指示に従い、拾った骨を腕に引っ付けてあげる。
すると、骨は見事に引っ付き、自在に動かして見せる。
ホネ川君は再び大岩の前に立つと、大きな腕で大岩をガシッと掴んで見せる!
すると、ズズッ!と大岩が動き道が開いた!
「凄いぞ!ホネ川君!!差し詰め、ホネ川『パワードモード』だな!」
「カ、カタカタ…。」
「ハハハッ!照れなくても良いのに~。」
ホネ川君は褒められた事が恥かしいのか、そそくさと元の腕に戻していた。
しかし、スケルトンって骨、換装が出来るんだ…。便利だなぁ~。
大腕の骨は便利なので、持って帰る事にした。
ホネ川君も何だかんだで気に入ったのか、大事そうに抱えていた。
大岩が無く成った事で道が開けたので早速先へと進む事にした。
どれ位進んだだろうか…?
谷の向こう側から光が漏れて来るのが見える。
腐肉谷の出口だろうか?
行ってみようかな?そう思った時だった。
「ヒィ!!モ、モンスターだ!!」
えっ!?モンスター!?ど、何処に!?って!俺の事か!?
声のする方を見ると、そこには人間が居た。
この世界に来て初めて見る人間に少し懐かしさを覚える。
此処は、フレンドリーに接してみよう。
「アハハッ!やあ、どうも!良いお天気ですね!お散歩ですか~?」
笑顔で手を振ってみるが、人間は腰に付けた剣をサッと引き抜き…。
「死ね!!アンデッド!!」
襲い掛かって来た!!
人間は剣を滅茶苦茶に振り回す。
「イジメナイデ!ボク、わるいゾンビじゃ、ナイヨ!って、ちょ!?本気で危ない!暴力反対!!」
此方の言葉を全然聞かない人の様だ。
現状をどう打破するか考えていると、ホネ川君がスッと前に出て、剣を持つ手をトンッと打って武装解除させる。
さすがホネ川君!頼りに成るぜ!
「人間の方、取り敢えず僕らの話を聞いて下さいよ。別に襲う心算は無いから。」
そう言って人間に近づくと、ヒィ!と短い悲鳴を上げて腰を抜かした。
「おいおい、大丈夫かね?」
「カタカタ?」
さらに一歩近づく…。
「た、助けてくれーーーー!!」
「おいおい、人の話を聞いているのかね?襲う心算は無いと…。」
「そこまでだ!アンデッド共!!村長さん今、助けます!!」
谷の出口側に誰か居る、光を背に立ちシルエットしか見えない。
「おおっ!貴方は勇者様!?まさか私を追って此処まで…?」
「話は後です!今はこのアンデッドを倒します!」
勇者と呼ばれたシルエットはシャキンッ!と輝く剣を引き抜くと、目にも止まらぬ速さで間合いを詰める!
ドンッ!とホネ川君に突き飛ばされる!?
瞬間、ホネ川君がバラバラに切り刻まれた!
「ホ、ホネ川く…うわっ!?」
「ファイヤーボール!」
友の名前を呼び終える前に、俺の体に炎が浴びせられる!?
なぜ?一体何処から?炎が飛んで来た方向を見ると、三角帽を被った少女が杖を高く掲げているのが分かった。
炎に焼かれ、意識が遠のく…、幸い痛みを感じないのが救いだな…。
ホネ川君には悪い事をしてしまったな…。
もう、光も感じない俺に勇者と呼ばれた者達の声のみが聞こえる。
「有難う御座います、勇者様。モンスターに襲われ、危うい所でした。何とお礼を言って良いか…。」
「いえ、お礼なんて良いんですよ。さあ、早く娘さんに採取したナオールの薬草を届けましょう!」
そう言って、勇者達は去って行く音が聞こえた。
それから、次第に俺も感覚が無く成って行き、そのゾンビ人生を終えた…。
\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ! \(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!
縦読みの方スマソ!