ゾン吉と人食いネズミ
NO:3 ゾン吉と人食いネズミ
…前回の最後の煽り。
信じられるか?あれ、嘘なんだぜ。
いや、マジでゴメン!信じるとは思わなくてさ~。
一応コメディを予定しているからね。
ちなみにホネ川君の骨は冗談を言ってる内に大体、集め終わりました。
いや~、色々有ったね。
俺の濁った瞳を閉じると、今でも鮮やかに思い出される。
『あっ!有ったぞ!肋骨だ!やったな、ホネ川君!』『カタッカタカタ。』
『何で右腕が宝箱の中に有ったんだろうね?』『カタッカタカタ?』
『腕を離すんだ!ホネ川君まで落ちてしまうぞ!』『カタッカタカタ!』
『気を付けろ!毒ガスだ!!って俺達には効果無いや…。』『カタッカタカタ…』
『ヘヘッ。効いたぜお前のパンチ…。』『カタッカタカタ…』
何時の間にか俺とホネ川君の間には熱い友情が芽生えていた。
「大分、集まったね。残すは左腕のみだ!」
「カタッ!!」
程無くして左腕の所在が判明した。
ネズミの巣穴の中だ。
しかしその巣には厄介な存在が有った。
人食いネズミだ。
人食いネズミは普通のネズミの十倍は有ろうかと言う大きさで、真正面に挑めば今の俺の大きさから言って食べられかねない!
そこで、一計を案じる。
ホネ川君が巣穴の前で騒ぎを起こし、人食いネズミを誘き出す!
誘き出された所で巣穴の上から俺が襲い掛かる!
作戦としては単純だがまあ、良いだろう。
早速作戦開始だ!
巣穴の上に木の枝が伸びているので其処を陣取る。
カンカンカンッ!
とホネ川君が自分の骨を鳴らして大きな音を出す!
すると…。
「出て来た!人食いネズミだ!…今だ!ウリャァァァ!!」
錆びたナイフを構えて枝の上から落下する!
ドスッ!!と錆びたナイフが人食いネズミに突き刺さる!
ヂューー!?ヂュヂュ―――……。
当たり所が良かったのか人食いネズミはヨロヨロとよろめくとドサリッと地面に平伏し、動かなくなった。
早速ホネ川君の左腕を巣穴から回収する。
「あっ!?ちょっと齧られた跡が…、まあ、良いか。はい、ホネ川君。」
パンパカパ~ン!(幻聴)という効果音をバックにビシッ!とホネ川君がポージングを決める!
「カタ、カタカタカタッ!!」
お礼を言われた。
「なあに、良いって事よ。俺達、友達だろう?」
「カタッ…。」
ガシッとホネ川君に抱き付かれる。
ホネ川君との友情を感じる…けど、顔に当たる肋骨が地味に痛ぇ!
「カタッ?カタカタカタッ!?」
ブウンッ!と突然ホネ川君に投げ飛ばされる!?
お、俺達の友情は何処に行った!?
直後、倒したと思っていた人食いネズミが突っ込んで来てホネ川君が跳ね飛ばされた!?
まさか!?自分の身を犠牲に俺を守ったのか!?
ホネ川君、君って奴は…。
跳ね飛ばされたホネ川君を見ると、骨が外れて身動きが取れない様だ!
不味い!コッチに人食いネズミの注意を向けないと!
「ヘイッ!ネズ公!コッチだ!コッチに来い!」
ヂュ!?ヂュ~~!!
大声で呼ぶと注意を此方に向けて…、突進してきた!
横に飛んで避けるが、片足が当たりバランスが大きく崩れた!
すかさずに方向転換をして突っ込んで来る!
逃げようとするが、ガブッ!と片手を噛み付かれた!
直後、足が宙に浮いた!?
そのまま、ブンブンと振り回される!
こりゃあ…堪らん!
早く終わってくれ!そう思っていると、ブチッ!!と言う音と共に吹き飛ばされた。
谷の壁に打ち付けられる。
幸いこの腐った体は強い痛みを感じない様で助かった。
俺は手を突いて起き上がろうとして失敗。
地面に倒れ込んだ!?
「あれ?おかしいな?何で…えっ!?」
俺の左腕は、肩から先が衣服ごと綺麗に消失していた。
片腕を失った…。
その衝撃の事実から、まずは失った片腕の行方を目で追った。
人食いネズミの口元にぶらりとぶら下がっている。
「ネズ公!?…くそぅ!取り返してや…。」
チュルリ!ゴクッ!
「飲み込みやがった…。」
涙が出てきそう…。
ヂュ~!
あっ!不味い!再び人食いネズミが突っ込んで来た。
駄目だ!避けきれない!
そう思い瞳をギュと閉じる…。
「人食いネズミィ!!俺の息子になにすんだぁ!!」
聞き覚えの有る声に瞳を開けると、其処に居たのは我が愛しのパパンこと、ゾンビパパであった。
「くらえっ!ゾンビパーンチ!!」
ズドンッ!!
ヂュ、ヂュ~……。
ネーミングダサ!しかし、威力の方は抜群だったらしく、一撃で人食いネズミを沈めた。
「ゾン吉!大丈夫か!?」
ゾンビパパが俺の元へと駆け寄り俺の惨状に気付く。
「ゾン吉!?左腕は如何した!?なに、取れた?そうか…、残念だったな。」
妙にゾンビパパの反応が薄い。
その後、ゾンビパパの背に背負われて帰宅。
「まあ、ゾン吉ちゃん!?左腕取れちゃったの?アラアラァ~。」
反応が軽すぎるよ!息子の片腕取れたんだぞ!もう少し騒いでくれても良いじゃない!?
「カタッ、カタカタ…」
うん。心配してくれるのはホネ川君だけだよ。
因みに後で知ったが、ゾンビ故に体の一部が取れるのは日常茶飯事らしい。
普通は取れた腕や足は再び引っ付ければ良いらしいが俺の左腕は食べられたので諦めるしかないらしい…。ガッデム!!
悲嘆にくれる俺を余所に…。
「腐肉谷にスケルトンとは珍しい。息子を助けてくれた恩人だ。ゆっくりして行ってくれ。」
「ゾン吉ちゃんの恩人だもの。行く所が無かったら此処に居ても良いのよ~?」
「カタッ?カタカタ!」(ペコリ)
こうして我が家にスケルトンのホネ川君が同居する事に成った。
その日は片腕を無くし悲嘆に暮れ、早々に不貞寝を決め込む事にした!
『スキル:リポップが発動しました。』
なんか寝入り端に変な声を聴いた気がする…。
スケルトン語講座 初級編
・おはよう「カタカタッ。」
・こんにちは「カタカタッ。」
・こんばんわ「カタカタッ。」