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パズルのピース

作者: 日日草

努力すれば報われる


この言葉を信じ、今まで頑張ってきた。


…なんて私は馬鹿だったのだろう?今までに報われた事などあっただろうか?早く気付けばよかったのに。


私は、物語が大好きだった。どんな難関でも軽々こなしていく主人公、強敵に立ち向かう主人公、最後は幸せそうに笑う主人公、全てに憧れていた。


だから、頑張ってきた。勉強もした。運動もした。学校ではどんなことでも進んでやった。必ずいいことがある、そう信じて。


なのに…


私は、認めてもらえなかった。


勉強は、出来る子がどんどん私を追い抜き、そして、馬鹿にした。

運動は、もともと出来ないのを無理してやったため、皆に迷惑をかけた。周りからの白い目がきつかった。


なんでもやろうとしたから、周りから浮いてしまった。目をつけられてしまった。自分の仕事を私に押し付ける子がでてきた。私のことを哀れみの目で見る子がいた。でしゃばりという子がいた。


結局、全部空回り。なんだったのだろう、私の努力は…。





「おや、やっと見つけた。」


急に不思議な響きの声が聞こえた。


そこで私は周りを見回した。そして、はっとした。


ここは、どこ?


果てしなく続く闇の中に、1人立っていた。


「まったく、仕方がないね、ほら、こっちにおいで。」


また、声が聞こえた。


その瞬間、ぱっと明かりが灯った。


そこには、セーラー服を着た中学生位の女の子が立っていた。


「ここは、お姉さんの心の中。それにしても随分暗くなっているじゃあないか。」


じっとこちらを見るその子の声は、何故だかとても気持ちがいい。


でも、心の中ってなんだろう?だいたい、貴女は誰なの?


聞きたくても、声が出ない…。


「大丈夫、声になんか出さなくたって、ちゃあんとわかるさ、私には、ね。お姉さんの体は、とっても疲れて眠ってしまってるの。だから、お姉さんの意識だけ、この空間に連れてきたんだ。

私は、まあ、お姉さんの心を綺麗にするお掃除屋さんだとでも思ってくれればいいよ。」


お掃除、わたしの心を?


お掃除屋さんというその子は、しばらく私の顔をじっと見つめてこう言った。


「お姉さん、いろいろ大変な事があったんだね、じゃあ、私からはこれをあげる。これが解けたら、きっとお姉さんは幸せになれる。」


その子は、私の手の中に、袋を押し込んだ。


「さあ、そろそろ目覚めな。なんたって君は、1ヶ月も寝ていたんだからね。」


え?





はっと目覚めると、そこは、自分の部屋だった。


母が、私の顔をのぞき込んでいた。その目には涙が溜まっていた。


なんでも、1ヶ月前、高熱を出して倒れ、そこから寝たきりだったそうだ。


母は、病院に電話をかけにいった。


そこで、自分が何かを握っていること気が付いた。


それは、あの袋だった。ドキドキしながら開けてみると、中にはキラキラ光るパズルのピースが入っていた。


それから、ほぼ無意識のうちに、それを組み立てていた。


「あれ?」


パズルの、真ん中の1つだけ、ピースがないのだ。


「せっかく、真ん中の綺麗なところなのに…。」


すると、ふわっと風が吹き、目の前に、また、あの女の子が立っていた。


「いいんだよ、これで。だって、パズルのピースは、揃っているんだもん。」


得意げに笑うその子。


「え、だって1ピース…。」


私が言うのを途中で制して、その子はこう言った。


「このパズル、題名は人生っていうんだ。その人生の真ん中の1番綺麗なところに収まるのは、お姉さん自身だよ。」


そう言って、その子は消えてしまった。


いつの間にか、パズルは無くなっていた…。





その後、私は入院をして、検査をしてもらい、退院して、また、学校に行けるようになった。もう、前みたいな無茶はしていない。苦手なことは、誰かに手伝ってもらっている。あのパズルの絵柄は、1つの花を、皆が大切に守っている様子を表していた。抜けていたピースは、その花の絵。すなわち、自分。だれかに支えられて、少しずつ成長できることがわかった。


努力すれば報われるというのは、1人では出来なかったんだなと、反省し、毎日楽しく過ごしている。





そんな彼女の様子を満足そうに、「お掃除屋さん」が眺めていた。


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