表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
999の魔法  作者: 潮 かお
8/26

第一章 進行




「お兄さま?よろしいですか」



 紅に通されたのは、元の世界の出流の部屋がまるまる4つは入りそうなほどの、広々とした大きな部屋だった。ここで寛げるようになるまで、時間を要しそうだ。


 湯浴みの準備をしてくる、と言って出ていった紅とちょうど入れ替わりで、部屋のドアが小さくノックされる。どうぞ、と声をかけると、メイジーがひょこりと顔を出した。



「ガエルから聞きましたわ。お兄さま、学園に通われることにしたのですね」



 二人して、肌触りの良いシーツに覆われたキングサイズのベッドに腰を掛けると、メイジーが話を切り出してきた。他愛もない世間話など、余計な前置きがないのが、メイジーである。



「うん。まずは勉強してからだけど」

「わたくしも、お手伝い出来ればよかったのですが。一足先に、学園に入学しますわ」

「のんびりもしてられないよな」



 こうしている今も、どこかで魔術師が危険な目に合っているのかもしれないのだ。それを止められはしないにしても、力にはなりたい。魔法のことも、何もかも知らない自分が、歯がゆかった。



「メイジー強いんだってね」

「お兄さまほどでは。それに、ガエルにもまだまだ及びません」

「あの人すごいんだな……」



 ただの美青年でなく、実力まであるのだから憎い。初対面時のガエルの様子から察するに、魔術師同士ではお互いの実力がわかるのかもしれないが、出流には誰が強いかなんてことは、見ただけでは検討もつかない。



「学園に通うとしても、お兄さまのご身分は明かさない方がよいかと」

「王子ってこと?俺の存在って公にはなってないんだよな。王子ってことをバラさない方が、情報収集をしやすいこともあるかもしれないしな」



 城の外の人間には会ったことはなくとも、想像はつく。出流にその気がなくとも、王子とわかれば、他の生徒たちが萎縮してしまうことも充分に考えられる。そんな中で情報集めなど、困難だ。



「魔術師狩りが、出流お兄さまのことをどこまで知っているかもわかりません。もしかしたら、お兄さまのお顔は知らないということもあるかも。わざわざ、こちらからそれを明かすことはありませんわ」

「俺ですら、俺が王子だなんて未だに信じられないからな」

「お兄さまの身分を隠すことは、また別の問題が起こる気がしなくもないですが」

「……だね」



 正体を隠していようと、王子であることは確かだ。それを隠すということは、後々面倒なことにもなりかねない。まだまだ問題は山積みだが、ここまで来たら、後戻りはできない。自分で決めたことではあるものの、先が思いやられるなと、出流は小さくため息をついた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ