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999の魔法  作者: 潮 かお
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第一章 メイド




「勉強は明日からに致しましょう。私も準備させていただきます。紅、出流様を案内してくれ」



 部屋から退室すると、扉の脇に、メイド服を着た女性が待ち構えていた。金色の長いウェーブ髪が美しい、蠱惑的な女性だ。見慣れないメイド服だけでも驚きなのに、それをまとっているのがとびきりの美女なのだ。出流が面食らってしまったのも、無理はない。ガエルがその女性に出流を託すと、女性は一歩出流に近づく。



「出流様つきのメイド、紅でございます。出流様の居室にご案内致しますわ」

「べに……?」

「くれない、と書いて紅と読みます」

「難しい名前じゃないんだな……」

「出流様のいらした世界と、そう変わりませんのよお。ぜひとも、紅と呼んでくださいまし」



 暖かな橙色の瞳を細める紅に、どきりとしてしまう。色香漂う美女の微笑みを正面から平静にうけとめられるほど、出流に経験値はない。



「紅、か。覚えやすいな」



 メイジーを始め、出会う人々の名前が外国的なので、てっきりこの国では誰もがそうなのだと思っていた。紅の言う、出流といた世界と変わらない……とは、どういう意味なのだろう。


 確かに、メイジーやガエルなど、出流が出会った人々は、きらびやかな外見はしてはいても、元の世界の人々との明確な差は見受けられないが。出流からみてみれば異世界人であり、魔法使いだなどとは、見た目だけではとてもわからない。



「出流様の専属メイドになれると聞いて、紅はとても嬉しかったのですよ。実際にお会いさせていただきましたら、本当に見目麗しく素敵なお方で!感激しておりましたわあ」

「うえっ!?それほどでも…」



 自己評価としては、良く見積もって中の上くらいの形容しがたい微妙な顔だ。母親も、なかなか美人ではあったが、親が美形だからといって、それが遺伝してくれるとは限らない。



「入り用のものなどあれば、なんなりと。紅は、出流様のメイドですから。なんでもご命令くださいな」

「は、はあ…あの、べ、紅っ?」

「うふふ、可愛らしいお方」



 両手を両手で握られ、紅の豊満な胸元に持っていかれる。一瞬、柔らかなものに手が触れてしまい、咄嗟に体ごと距離をとる。見目麗しい……なんて発言といい、からかわれている気がしなくもない。


 専属セクシー美人メイド、素直に喜ぶには刺激が強すぎる。出流は、どぎまぎしながらも紅についていくしかなかった。



 

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