表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
999の魔法  作者: 潮 かお
4/26

第一章 存在の消失




「魔法が切れかかってるって、なんでなの?」



 やっと質問が許されたようなので、気になったことをどんどんと問いかけることにした。守護の魔法とやらには、時効があったりするのだろうか。あるのだとしても、それは魔法をかけた側も承知をしているはずだ。となると、出流の守護の魔法が消えてしまっているのは、異世界の方でも想定外の出来事なのだろう。



「お兄さまの存在を脅かすものがいるということです。守護の魔法をかけたのは、王国最高の魔術師だったのですが」

「それなら、その魔法使いがこっちに来てくれたらいいのに」

「その魔術師は亡くなってしまったのです。それに、わたくしがこちらに来ることができたのも、お兄さまと血の繋がりがあるからなのですよ」



 血の繋がり。出流には理屈はさっぱりだが、とにかくそういうものなのだろう。魔法の存在さえ、出流の世界ではイレギュラーなのだ。わからなくて当然の話だった。



「うーん、俺なんか狙ってどうするわけ?」

「真意はわかりませんが、お兄さまの命を狙っているのでしょう。狙われているのは、出流お兄さまだけでなく力のある魔術師たちもそうですが。先刻お話しした王国最高魔術師も被害者です」

「連続犯か」

「王族であり、お兄さまほどの魔力がある方でしたら、殺すことにも意味はありますし、死体一つでも使い道はたくさんありますから」

「死体って……」



 その使い道、とやらについては知りたい気もするが、知らぬが仏、ということもある。平々凡々な毎日を過ごしてきた出流にとって、受け入れにくい話ではあるが、事態は緊迫しているのだということだけは理解できた。なにせ、自分の命が狙われているらしいのだから。



「お兄さまにこちらの世界にいらしていただければ、守護の魔法も新たにかけられますし、お守りするのも容易くなります」

「俺も死ぬのはごめんだし、そっちとしても、俺が殺されたらいろいろ不味いことがあるんだな」



 そうなれば、答えは一つしかない。



「ついていくよ」

「お兄さま!」



 出流が頷けば、メイジーは顔の前で両手を合わせ、瞳を輝かせた。妹がかわいすぎてどうしよう。出流は真面目に悩んだ。家族のいない出流にとって、幸せともいえる悩みだった。



「わたくし、こちらの世界にいられる時間が限られているのです。いつ、完全に魔法が破られるかわかりません。ぜひすぐに、準備を」

「あ、了解です」



 妹のかわいさに感動できたのも、束の間だった。テンションの違いに物悲しくなるが、出流の身を案じて、先を急いでいるのだ。そう信じることとしよう。



「では、わたくしの手に捕まってください」



 出流が最小限の荷物をまとめてくると、つい先ほどまで向かい合って座っていた居間に、今度は隣り合わせで腰を下ろす。


 急遽異世界へいくことになってしまったが、出流の通う学校や近所の人たちなど、出流に関わりのある人々には、魔法で上手く“説明”してくれるとのことだ。どんな方法なのか物凄く気になるが、聞いていけないことのような気もする。



「おおう……魔法初体験か。厳密には違うらしいけど、実感としては」

「あちらに行けば、魔法が日常になりますわよ。……さて、手は離さないでくださいね」

「うん、お願いします」



 出流がメイジーの小さな手を握ると、またもや金色の光が現れ、二人を包み込む。あまりの目映さに出流が固く目を瞑ったとき、二人の存在は、その世界から消えてしまった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ