第一章 守護の魔法
「本題はここからですのよ」
「生き別れの兄弟がいましたー、で終わりじゃないわけね」
「もちろんです」
生き別れの兄弟がいた、というだけでなく、王族で第一王子。頭が痛くなってくるくらいの重大ニュースではあるが、本題は別にあるようだ。出流としては、衝撃的告白の数々でもはやお腹一杯になってしまっている。もう、心臓のためにも、驚きたくはない。
「お兄さまのお母様は、魔力を持たないこちらの世界のお方でした。父との結婚を反対され、お兄さまと二人、この世界で生きることを選んだそうです」
本当に父親が魔法使いで、王族だとすると。どんな出会いがあったのかは知らないが、身分だけでなく、世界すらも違うのだ。反対もされるだろうと、出流は思う。
母親に父親のことを訪ねてみても何も教えてくれなかったのは、こんなに複雑かつ信じがたい事情があったからなのか。もしかしたら、出流が成人を迎えたあとにでも真相を話してくれるつもりだったのかもしれないが……母親は、もういないのだ。
「しかし、お兄さまは第一王子。もしものために、その存在と魔力を隠さなければならなかったのです。そして、お兄さまの中の魔力は封じられ、お兄さまは守護の魔法により守られることとなりました」
「ま、魔力?」
「ですが、それも最近までのこと。先程現れた鳥、あれがお兄さまの魔力です。長年抑えられていたものが、あまりに巨大で、暴走してしまったのでしょう。この世界ではわたくしの魔力はあまり発揮できませんが、なんとか抑えることができました」
「え、え、俺に魔力?それって」
話は途中だが、スルーできない部分があった。魔法なんてない世界で生きてきた出流には、寝耳に水。自分にも魔力があるのかと問いかけようとしたとき、メイジーは無情にも続きを語り出した。
「お兄さまにかけられた守護の魔法が、消えかかってしまっているのです。このままでは、お兄さまの命が危ういのですわ。ですからわたくしはお兄さまを保護するため、ここに来ました」
保護。俺は絶滅危惧か何かか。メイジーが相手にしてくれないので、出流は脳内でどうでもいい突っ込みを入れた。二人でいるのに、会話相手は自分。なんとも寂しい。
「こちらの世界にいらしていただきたいのですわ」
「守護の魔法ってなに?」
「出流お兄さまの存在を隠し、なにかあったときには守る。そういった魔法です。そして、お兄さまの身になにか起これば、わたくしたちの世界に伝わるようになっています」
出流にかけられていた守護の魔法とやらが薄くなってきていて、それを受けて、メイジーがこちらにやって来たのだとすれば。
「母さんにはその魔法はかかっていなかったのか」
「……そんなことはありません。わたくしは、詳しいことはわかりませんが……人の寿命や運命は変えられないのです」
「そうか……そうだよな。魔法っていったって、そんなに都合よくはないよな。ごめん、変なこと言った」
「……いいえ。当然のご質問です」
母さんにもその魔法がかけられていたのなら、どうして母さんは死んだんだ。守られていたのではないのか。事外にそう尋ねた出流だが、メイジーからの答えに、それ以上の追及は出来なかった。