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999の魔法  作者: 潮 かお
19/26

魔力量測定

 


「来たはいいけど……魔力量の測定ってどうやるんだ?」

「ピアにもわかりません。魔力量の測定は、ガエルのような魔法に精通するものであれば、行えますが」

「それなら、ここに強い魔術師か何かがいるのかね」



 中庭についたのは良いものの、マーガレットに詳しい測定の方法は聞いていなかった。測定の仕方を確認しに、またあの長々しい階段を登るのも苦痛だ。幸い、中庭にはなぜかたくさんの生徒が集まってきている。彼らの中の誰かに、教えてもらおう。



「あの、ちょっと聞きたいんだけど」



 調度通りがかった、銀髪のツインテールの美少女に、声をかけてみる。



「ああ……あなたたち、魔力量の測定をするの?」

「うん、まあ」

「仕方ないわね。それなら、やり方を教えてあげるわ。二人とも、途中入学の二人よね?」

「そうなんだ、でもどうしたらいいのかわからなくて」

「そうよね。測定なんてなかなか出来ないもの。大魔術師、グラシア様のお作りになった方法らしいけど」



 なるほど、師匠さんが。出流はすぐに納得した。銀髪の美少女は、中庭の中央に測定場所があるのだと教えてくれた。3人で、そこに向かう。



「この魔方陣よ」



 直径三メートルほどの、魔方陣。出流には描かれている文字や図形の意味はわからないが、魔方陣をよく扱っているらしいピアには、わかるのかもしれない。

 


「魔方陣の中に立つのよ。そしたら、目の前に鏡が出てくるの。その鏡に手を当てて全力の魔力をぶつけたら、測定値が鏡に表示されるわ」



 グラシアの作ったものだというので、出流は彼女に心の中で話しかけてみる。しかし、返事はない。ガエルによれば、彼女は相当に弱っていて、普段は魔封じの中で眠っているらしかった。思えば、父親も水晶の中で眠りについていた。きっと、魔術師狩りの魔法は、それほどまでに体力を奪うものなのだ。



「ピア、やってみる?」

「では、先に私が」



 ピアが魔方陣の上に立つと、彼女より少し大きいくらいの、全身鏡が現れた。ゆっくりと鏡に手を当てると、鏡が光り始める。目映いほどの光が消え失せたとき、鏡に数字が浮かんでいた。



「魔力量は……432ね。凄いのね、あなた」



 銀髪の美少女は、大きな瞳を更に丸くした。ピアが魔方陣を出ると鏡も魔方陣に吸い込まれるように消えていく。続いて出流が、中に入った。同じように、手袋をつけた右手で、鏡に触れる。


 魔封じの輪により、魔力は抑えられている。だが、目立つわけにはいかない出流は、全力の魔力ではなく、抑制した魔力を鏡にぶつけた。



「116……か」



 鏡に現れた数字は、116。出流としては、上手く低めの数値を出せてほっとしていたのだが、周りの生徒たちが、ざわめき始めた。



「もちろん、魔力量がすべてではないけれど……あなた、苦労するわよ」



 銀髪の美少女は、哀れみの眼差しで、出流を見つめる。彼女によると、周りの生徒たちは、今日この日に入学してくる生徒がいると知って、その魔力量を見るため、ここに集まっていたとのこと。ピアは、高い魔力量で注目を受けるだろうが、出流はその真逆の理由で、注目されるだろうと。



「え?そんなに少ない?」

「すみません、ご説明せず。平均で200ほどはあるのです」

「そうなんだ……」



 ピアがこっそりと耳打ちしてくれた内容に、ため息すら出てくる。目立ちたくないという考えが、裏目に出てしまった。これでは、悪目立ちしてしまう。



「まあ、何かあったらまた話しかけてちょうだい。いろいろと周りはうるさいかもしれないけど、気にすることなんてないのよ?魔力量は、努力次第では増やせるしね」



 哀れみが大半の台詞だろうが、幸先不安な出流には、美少女のそんな言葉も胸に染み渡る。このことで件の魔術師狩りにも出流の魔力量は低いと認識されたなら、狙われることはないはずだが。こうなったからには、その可能性にかけるしかなかった。



 

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