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999の魔法  作者: 潮 かお
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理事長

 



「いらっしゃーい」



 室内に入った出流は、目を見張る。眼前には……無数の花たち。校舎の中であるはずだが、色とりどりの花が咲き誇っている。そして、天井があるはずのそこには、青空が広がっていた。



「ごきげんよう、殿下。お目にかかれて光栄です」



 硬直する出流のもとに、花の影から、一人の少女がやって来た。長い金糸を、二つに分けて三つ編みしている、可愛らしい少女だ。



「理事長様ですか」

「そうですよー、レングナーさん」



 理事長かとの質問に肯定した少女だが、どこからどう見ても、そうは思えなかった。身長は150cmほどで、顔立ちは同年代にしか見えない。



「理事長……なんですか?ほんとに」

「殿下ってば!信じてくれないのですか?」

「いや、うーん」

「理事長のマーガレットです。わたし、こう見えても出流様の4倍は生きてますよ!多少、魔法で外見は操作してますけどっ」



 憤慨しているマーガレット理事長だが、本当に4倍の年齢なら、多少、ではすまないだろう。



「ガエル様から事情は聞いていますよー。でも!クロエ様やメイジー様にもお伝えしてますが、絶対に無理はなさらないでくださいね」

「はあ」

「ここで王族である殿下に何かあれば、学園の名折れです!」

「……気を付けます」



 学園の名誉を傷つけるような事態は、本意ではない。学園に通うことを決めたのは、出流のわがままでもある。なるべくなら、迷惑をかけるようなことはしたくはない。



「ではでは、お二人とも。やってもらいたいことがあるんです」

「やってもらいたいこと?」

「魔力量の測定です。もちろん、魔力量が魔法のすべてではないですが、生徒たちの魔力量は把握しておかなければならないのですよー。殿下のお力はきっとすばらしいものでしょうね」

「どうですかねえ」



 期待はしないでいただきたいところだが、逆を言えば、出流に誇れることといえば、その魔力量のみだった。



「測定はどのようにして行うのでしょう」

「中庭に行ってみてください。公衆の面前ではありますが、通行儀礼ですので。測定を終えたら、その数値は自動的に生徒名簿にも記入されるんです」

「中庭ですね。行きましょう、主」

「そうするか。お邪魔しました、理事長」



 背を向けて理事長室を去ろうとすれば、マーガレット理事長は、なにか言いたげに、口を開いた。



「……殿下。わたしは、学園内部に魔術師狩りがいるなんて、思いたくないのです。でも、もしも本当にそんな存在がいるのであれば。なんとしてでも、捕まえなければなりません」

「……はい」

「ですから、そのためになにか必要なことなどあれば、遠慮なく、ご連絡ください」

「わかりました。力を借りたいときは、また来ます」

「ぜひ。お二人とも。気を付けてくださいね」



 眉を下げて、物悲しく微笑むマーガレットに見送られながら、二人は中庭を目指した。



 

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