血の門
「出流様、到着致しました」
それから出流は、ガエルやメイジーたちの指導により、魔法、そして世界の常識等を学んだ。あっという間に月日は過ぎ去り、いよいよ、入学当日。
城から学校までどのようにして向かうのか、疑問に思っていた出流だったが、答えは至極簡単だった。登校時間の30分前、ピアは出流の部屋を訪れた。彼女が人差し指で空中に素早く魔方陣を描くと、その魔方陣は出流とピアを包み込み、二人を学園の前まで転移させたのだ。
出流がメイジーと出会った時には、彼女は異世界間を転移する魔法を使っていた。とすれば、国内での移動など、容易いことなのだろう。
「これが、血の門ってやつか」
由緒ある血筋のみ通ることのできる門。血の門の名前に相応しく、赤黒い大きな門だ。高さは5メートルはあるように見える。出流たちを出迎えるように、その、門扉は開かれていた。門の奥には、たくさんの木々がひしめき合っている。
「よし……」
魔法が使えることは事実ではある。しかし、出流は、自分が王子であるなどということを、いまだに納得はしていない。本当にこの門を通り抜けることができるのか。拳を握りしめ、気合いを入れて足を進める。
「はあ……」
恐る恐る足を踏み入れ、門を抜けたところで、ほっと息をつく。何事もなく、切り抜けることができた。どうやら、出流は門に認められたらしい。
「行きましょう」
「職員室みたいなところに行くんだっけ」
「理事長室ですね。こちらです」
「よく知ってるね、ピア」
「メイジー様から、いろいろと仰せつかっております故」
迷いなく進むピアが、頼もしい。いくら王子もどきといえど、頼りきりではよくないなと、出流は反省する。
ピアのあとに続き、校舎であろう塔の外の螺旋階段を、どんどんと上がっていく。出流の体感としては5分ほど歩いた頃、ピアはやっと塔の扉を開いた。