第一章 魔力量
「ぜんぜん変わったら感じがないよ」
「では、もう一度魔法を使ってみましょう」
「え、でも」
本当に、魔力を抑えることができたのか。確かめてはみたい。しかし、魔法を使って、先ほどのようなことになったら。出流はそれを危惧していた。
「ご安心ください。私もおりますし、護衛もおります」
「そうですね……やってみないと始まらないか。またりんごに付き合ってもらおう」
「魔封じの輪に魔力を集めるように」
基本的には、先刻の使い方で間違いではないらしい。右手に、身体中の魔力を集めるイメージをする。
「ほんとだ、力が吸い込まれていくような感じがする」
「あとは手袋が管理してくれます」
「それじゃあ、浮遊の魔法をもう一回」
右手に集中した熱が、手袋……正確には、手袋の金属部分に吸い込まれていくような感覚がした。そのまま、りんごに意識を移し、イメージをしていく。りんごを、宙に浮かせる。今度は、失敗しない。
「お……おお、成功か?」
りんごは、ゆっくりと浮いて、ある一定の高さまでいくと止まった。身構えてはみても、特に何もおこる様子はない。
「ちなみに、ガエルさんと俺の魔力量の違いってどのくらいなんですか?」
「私の魔力量は国でも屈指のものであると自負しています。ですが、現時点では650ほどでしょうか」
「……メイジーなら?」
「480くらいではないかと」
「ピアは?」
「430はあるでしょう」
国一番の魔術師ですら、出流より数百も低い数値だ。数字にされると、自分の魔力量の多さをわかりやすく認識できた。
「じゃ、師匠さんは?」
「私は、魔力量はさほど多くはないぞ。850程度か」
「そうか……本当に俺の魔力量って多いんだ」
グラシアも国お抱えの魔術師だったわけだが、単純に魔力量だけで勝負すれば、出流の勝ちである。
「手袋に管理してもらいながら、魔法の扱いを身に付けなきゃならないのか」
「いずれは、手袋なしでも使えるようになるでしょう」
「どうだかな。私にはその兆しが見えんが」
「師匠!」
悪気はないのだろうが、そろそろ優しい言葉もかけてほしい出流だった。