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これでも人はレンジャーと言う。  作者: 水乃白雪
第一幕 「レンジャーっていうのは」
4/8

深夜に放送したら本当に面白そうだな

「じゃあ……那月の言った通り、レンジャー名を決めたいと思う……」


 まだ神歌は少しぐずっているが、話せるくらいにはなったようだ。


「はいはいはい!」


 あんたは小学生ですか、と言ってやりたくなるほどの元気さで沙羅が大声を出した。できれば眼鏡キャラのギャップはもっと違う個性であって欲しかった。



「プ○キュアレンジャーってどうかな!」



「容赦なくおりまぜてきやがったぁああああああああああああああああああああ!」

「とうとうコラボする日が来たんだよ!」

「実写とアニメーションを混ぜ込むな! 違和感モロ出しじゃねえか!」

「毎日朝七時テ○東で放送! 一話一時間!」

「収録が大変すぎる! しかもちゃっかり○レ東にいれてきた!」

「夜二十四時に再放送!」

「そんな深夜に放送するようなものを子供の楽しみの時間に入れんな!」

「次回最終話!」

「もう終了すか!」

「『裏切ったレンジャーレッド。恋人だったキュ○ピンクは打ちひしがれ鬱に。しかしピンクはわかっていた。レッドは皆の為に犠牲になって敵になったと。そんなことも知らず、ただ倒そうと躍起になる仲間たち。ピンクは仲間を、そしてレッドを止め切れるのか!』こうご期待!」

「うわ、すっげえ気になる!」


 なにそれ、滅茶苦茶面白そうだよ! でも深夜に放送する意味もわかったよ! そしてお願いだから朝は流さないで! 俺夜に毎週録画して見るからさ!


「って、駄目駄目! 冷静になれ俺! そんなの著作権的に無理だし、レンジャーが警察行きとかありえねえ!」

「えー」

「えー、じゃない。そもそも俺らのレッドは見ての通り、胸は男並みだが正真正銘の女の子だ」

「おいこ――」

「まさかキ○アピンクが男な訳ないよな」

「スルーするなよ!」


 今は沙羅と喋っているんだ。後にしてくれ。


「そんな訳ないよ。神歌ちゃんは百合路線へ一直線だよ」

「私はそんな趣味は持ってないわ! 勝手にキャラをいじくんな! あと敵にするな!」

「成程、萌えるな」

「この変態野郎!」

「俺はいたって平凡だ」

「この世の一般人全員に謝れ!」


 なんて失礼な奴だ。このおれのどこが一般人じゃないと……て、今は超人だっけ。ややこしいな。まあ、性格は普通な筈だ。


「とりあえず、プリキュ○レンジャーはナシだ」

「ちぇー」

「私に反論させろ!」


 今回は神歌がよくいじられているな。まあ、俺は毎度なんだが。

 だからほら、頑張れ。な?


「レンジャー名って言ったけど、本当にそこだけ考えても難しいと思うわよ」

「なんでだよ、那月?」

「ほら、冒頭に○○戦隊って入るわよね? ○○ジャーの方から先に決めたら、考え辛くなるんじゃない?」

「言われたら……」

「プリ○ュアレンジャーなんて思いつく?」

「いや、それは例が悪いと思うぞ」

「がーん! 結構ショック!」

「あれ本気で通ると思ってたのか!?」

「戦隊名も決めてるよお。その名も、『混沌戦隊』!」

「お前通す気なかっただろ! なんだよ、俺らどんだけどろどろした状況に陥るわけ!? 子供に覚えてもらおうとしてないよなあ!」

「盲点だった」

「最早完全に忘れられていた!」


 駄目だろ。もうこれ会議じゃねえわ。いや最初から分かっていたけど。こいつらといると退屈はしないけどさ。でも、報告書どうしようか。結構難題だぞ。


「要、何か、思いついた?」

「ん? ああ」


 悩んでいるのがそう見えていたのだろうか。未央が期待している目を向けてくる。いや、面白いこと考えてたんじゃないから。


「そうだなあ……。学生戦――」

「那月、何か、思いついた?」

「切り捨てるの早いわ! そんなにアウトだったか!?」

「要、には、少し、幻滅」


 冷たい視線で睨んでくるのではなく、冷たい視線でそっぽ向かれているから、より痛い。俺、そこまでの事は……。


「まあいいか……。他には何か考えが出ないのか?」

「私、まだまだ候補があるけど」

「那月、お前は少し歯止めをかけろ。一人で喋り過ぎなんだよ。ぜんぶグロッキーになっちまうだろ」

「と言っても、他の皆が話さないから私がさっきから繋げているのよ」


 那月は呆れて溜息をつきながら、俺たちを一人ずつ見回した。

 あれ? なんかいきなり空気が変わったんだけど。


「特に神歌はつまらないし」

「うう。反論できない……」

「未央はやっぱり片言だから話の進行が遅れるし」

「ごめん、なさい……」

「沙羅はプリキュ○を無理強いさせすぎだし」

「うん……」

「ようちゃんはブラックだし」

「それ関係あるかな!?」

「ようちゃんは変態だし」

「それも今関係ねえよ! いや、そもそも変態でもねえよ!」

「ようちゃんはつっこみをいちいちしすぎてるし」

「う……」

「なんでもつっこもうとして時々失敗してるし」

「うう……」

「心脆すぎるし」

「…………」

「ほら今だって。これだから駄目なのよ。はあ……」

『…………』


 あの、俺ら何かしましたか? ここまで駄目だしされなきゃならないの?



「ふう。これで私たちは『掌握戦隊』に決定ね」



「勝手にリーダーに登りつめんなよ! つうか恐怖政治じゃねえか!」


 騙されるところだった! お前の狙いはこれか! 

 恐ろしくてありゃしない。でも、皆の顔には安堵が見受けられた。いや、恐怖政治にさせようとしているのに安心するのってどうなのだろうか……。


「いや~、びっくりしたぞ。いきなり何言い出したかと思えば。中身がリアルすぎるんだよ」


 神歌が「あはあ」と言いながら那月の肩に手を置いた。俺は近いから見えていたぞ。少し涙ぐんでいただろ。


「やっぱり無理があったわね」

「そりゃあ重すぎるだろ。はっきり言って通す気はなかったろ?」

「まあね。大好きな皆を服従させたりなんかする気はないわ」

「だよな」

「させられる自信はあるけど」

「是が非でも止めて貰いたいな」


 と、そこで――。



『ビィー、ビィー、ビィー、ビィー!』



『!!』


 基地内に大きなブザー音が鳴り響いた。これは、


「敵か……」


 神歌の顔が急変し、怪訝そうになった。

 これはおおよそ一日に一回なる。つまり敵の出現は一日に一度。

 誰が行く事になるのかと言うと。


「俺、行ってくるわ」


 そう、この俺だ。と言ってもここまで積極的に向かおうとするのは初めてなんだが。俺は言った直後に席を立ち、扉へ向かう。


「要、一人、大丈夫?」

「ああ。あんな奴らちょちょいのちょいだ。すぐ戻ってくるさ。それにほら、俺、なんでか知らないけど敵の居場所がわかるしさ」


 本当この能力にはビックリした。今のところ、俺に出来る一番の事だ。


「敵は東京タワーにいる」


 俺は現地へ駆けて行った。新しい俺の初仕事だ。気を引き締めていこう。

 皆に格好悪いところは見せられない。

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