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これでも人はレンジャーと言う。  作者: 水乃白雪
第一幕 「レンジャーっていうのは」
3/8

俺は正論を言ったからな

わからないなら前回の話をどうぞ。

「じゃあ決定だな。よし、これで第一段階が――」

「ちょっと待って」


 ここで、いきなり那月が神歌の言葉を遮った。


「本当にそれでいいの?」

「へ? それってどういう――」

「どうもこうもないわよ」


 一度顔を下に向けて、那月は険しい顔つきになった。なんだ? 俺たち何か見逃していたか?



「そんなインパクトの低い色で良い訳!?」



「これ以上追及しなくていいだろう! つうか何をお前は求めているんだ!」

『なるほど』

「あれえ!? また俺がおかしいの!?」


 もうついていけません。


「今や私たちに注目するのは世界中の皆よ。日曜の朝にやっているCG作成のお遊び収録とは訳が違うわ」

「お前軽く罵倒しただろ」

「だから私はもっと皆に存在を知ってほしいから、もっとインパクトが強い名前をつけた方がいいと思うの」


 慣れた口ぶりでスルーしやがった。

 そこに沙羅が賛同してきた。


「確かにそうかも……。だって、どうしたってレンジャーに食いつくのは子供だよね? そんな小さな子に『レンジャーレッド』なんてありきたりな名前を定着させても、完全に覚えてはくれないと思うよ?」

「むう……」


 沙羅の言う通りである。なんだよ『レッド』って。いろいろいすぎて分かんないよ。

 ならどうしたらいいと言うんだ。


「もっとインパクトを強く、か……」

「例えばこんなのはどう?」


 那月はそう言って意味もなく立ち上がり、高らかに例を上げた。



「レンジャー……ビリジアンブルー!」



「微妙すぎる!」


 それこそ子供は覚えないだろうよ! それにビリジアンって普通緑だし、色々混ざって面倒くせえ!


「何? その不満そうな顔」

「そりゃあるよ! そんな色にするくらいなら普通でいいよ!」

「さっきのはほんの一例よ。もっとかっこよくすればいいじゃない」

「そ、それはどんな感じに?」

「レンジャーブラックを、レンジャー……ダーク」

「思いっきり悪役じゃね!?」


 格好いいけど! 確かに格好いいけどさあ!


「そう、実はようちゃんは敵のスパイでしたという、そんなオチ」

「なってたまるか!」

「なら、レンジャーイエローを、レンジャー……シャイン」

「普通に格好いい!」


 なんかいそうだし!

 畜生、ダークだって格好いいのに!


「わたし、いいこと、思いついた」


 そこに、イエロー(シャイン?)の格好よさに刺激されたのか、わざわざ挙手をして未央が案を出してきた。



「レンジャー、ブラック、を、レンジャー……トラウマ!」



「黒は黒でも黒歴史じゃねえか! 重すぎるだろ! ある意味黒々しいわ! つうか名前ダセえ!」


 それって俺の黒歴史に掛けてきたのか! うまくねえ(いや、少し感心していた)よ!


「今なら、ウマシカに、変更、可能」

「絶対変えねえよ! 余計駄目だろ! 色も関係ねえ!」

「次は、シカニク」

「しりとり!?」

「ニク……ニクバナレ!」

「お前今思いつかなかったろ! しかも考えた末に出た言葉が肉離れってどうよ!」

「バナレ、バナレ……バナレ……?」

「でしょうねえ!」


 あるか! 「ばなれ」で始まるなんて! そこは後先考えようぜ! 俺の突っ込みも困るからよお!


「私にも良いものがあるぞ」


 困り果てている未央を余所に、神歌がない胸を使ってふんぞり返りながら自慢げに言ってきた。


「ふふふ、聞いて驚け」


 これまた何故か、右腕を天井に掲げた。意見するときは絶対しなくてはいけないのだろうか。そして、


「レンジャーレッドを、レンジャー……バーニング!」



『…………』



「全員ノーコメント!?」


 いや、だって、ねえ。


「まとも過ぎて俺たちに突っ込む隙がねえんだけど」

「私はボケるつもりで言ったんじゃない!」

「なら話に入らないでよ」

「那月まで!?」

「レッド、邪魔」

「ぐはあ!」


 神歌、大ダメージである。

 わかったか、これがさっきまでうけていた俺の痛みだ!


「私もボケる所が欲しいよお!」

「それは今私に言うことじゃないだろ!」

「もういいわ。それなら色を変えるんじゃなくてレンジャー名を考えましょう」

『賛成』

「那月が色にケチ付けてきたんじゃないか! そんなこと言わなきゃこんなことにならなかったんだよ! うわぁああああああああああああああああああん!」

「もとはお前もノリ気だったじゃねえかよ……。それに俺はちゃんと反論したぞ」


 泣き出した神歌は最早俺の言葉を聞いてなかった。お前が悪い。そうだ、もう一つ神歌の特徴を加えておこう。「意外と涙もろい」と。

 隣にいる那月が神歌をあやしていた。まるで母親とその子供のようだ。微笑ましい光景と言うのだろうか。

 ただし、泣かした元凶がその母であるのだが……。

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