そもそも俺らって……
さあ、これからしっかりギャグパートですよ~。
オタク感たっぷりでお届けします。
「なあ、私たちってヒーローなんだよな?」
唐突に、赤真神歌はそんなことを言い出した。
「今更何言ってんだよ。当たり前だろ。敵をやっつけている日々を送っている俺らは、そしたら何になるって言うんだ」
俺の先日の決意をいきなり壊すようなことは言わないでくれよ。心の中で訴えかける俺。
赤真神歌。俺と同じ元高校一年であり、幼馴染その一だ。その男のような喋り口調は見た目とは裏腹で、初めてこいつを見た奴は間違いなく裏切られるだろう。妙につりあがった目に赤髪のショート……と、ここまでなら良いんだが、そこに必ず付属するように「背が小さい」と「意地っ張り」が存在するのだ。美少女なはずなのに何か残念である。特に背に比例するように胸とか……。
「必殺パンチ!」
「げふう!?」
突如、俺の鳩尾に小さな拳がめり込む。そうそう、「見かけによらず馬鹿力」もあったっけ。
少し身体を屈めたままなんとか口に出す。
「な、なんで俺に向けんの……」
「今、カナメから嫌なオーラを感じた」
女の勘すげえ。
「……まあいいや。それよりなんだよ、さっきの言葉」
変なことに突っかかろうとはせずに、俺は本題に話を戻した。……うん。決して逃げようとしているんじゃないんだよ?
「いや、だからさ、私たちってヒーローなんだろうかと思って」
「よし、今度はこっちから殴らせてもらっていいか?」
結構沸点が低い俺。本当にこの前の決意を返せ。
「ちょっと、ようちゃん。小さい子に暴力は駄目よ」
「ああ、ごめん。ついむきになって」
「私は同い年だ!」
ここで青葉那月が隣から俺を阻止してきた。いや危なかった。こんな幼い子に手を上げるところだった。
サンキュー、那月。心の中で感謝しておく俺。
青葉那月。俺と同じ以下略。
「なんか私の扱い酷くない!?」
いきなりどうやってか心を読んできやがった! まあそれはどうでもいい(のか?)として、流石に特徴は述べておくべきか。黒髪のストレートに青い眼をしている。父親が外国人、つまりハーフなのだ。見た目からして眉目秀麗なお姉さん的な人だ。ただし学年は変わらない。
「そうそう、それくらいしてもらわないと」
だからお前はなんで心を読めるんだよ。やはり気になって仕方なかった。
言い忘れたが、今いる場所は基地のミーティングルーム(とか言いつつもすっかり今は駄弁ったりするだけの部屋になっている)であり、五人全員自分の席に付いていた。
ついでだから他の二人の幼馴染の紹介もしておくとしよう。報告書なのだからまず全員の情報は記述しておくべきだろうからな。
黄、緑、以下略。
『ひどすぎる(よ)!』
「だからなんで読めるんだよ!」
こちらも思わずつっこんだ。確かにぞんざいだったかもしれないけど! あれか。ヒーローパワーなのか!
「まあまあ、落ち着けって。ちゃんと紹介するから」
俺は二人をどうどうと両手で押さえつつ説得した。まったく、なんでそこまで気にするかな。女子はこれだから面倒臭――。
『今なんか思った?』
「いいえ、なにも」
お前らもう読むの止めやがれ。そんなことを思いつつ、やっと二人の紹介に入る。
三人目。黄央未央。金髪のツインテールに碧眼と、モロ外人の風貌である彼女。しかし、生まれも育ちも根っからの日本である。のくせに日本語は超片言だ。ほら、今だって。
「変な事、書いた? 要」
こんなところだ。目も垂れていて、ぼんやりしているためまるで小動物のようなオーラを醸し出している。俺もよく頭をなでてしまいそうになっている。ただし、神歌より背は大き――。
「必殺パンチ! マークツー!」
「パワーアップした! げふうっ!」
再び鳩尾にパンチがめり込む。確かに威力が上がっていた。突っ込まんぞ。俺はもうその不思議パワーには突っ込まないぞ!
机に伏せながら俺は心の中で違う何かと奮闘していた。いや、もういいや。次、行こう。
四人目。緑井沙羅。非常識人である。……と、まあこれだけじゃあ終わらせてくれないんだよなあ。落ち着いてくれよ。頼むからその手に持っているアイスピックをなおしてくれ。平静に言っているが、結構冷や汗出てるんだぜ。
仕切りなおして。緑井沙羅。黒髪に眼鏡でサイドテール。いつもにこにこ笑っていて(たとえアイスピックを持って襲いかかって来ようとも)、皆を和ませてくれる。お茶まで出してくれるのだ。
イメージで言うなら理想のメイドさんだろうか(あくまで客観性を取り入れた男子代表としての言葉である)。もう一声というなら是が非でも眼鏡を外して欲しい(これもあくまで客観性以下略)。
やれやれ、やっと一通り説明が終わった。おかしいな、紹介ってこんな疲れるものだっけ? 違和感を感じつつも深くは考えなかった。
まあ、これが幼馴染たちだ。それぞれ個性豊かで難があるが、それでも俺たちはこれまで、まるでずっと一緒に暮らしているかのように、家族のように生活してきた。
とても楽しくて飽きない毎日だった。今はアクティブ過ぎているけど……。
「それで、なんて言ったっけ、神歌。忘れた」
「説明が長すぎるんだよ!」
「ならいちいち言及してくんなよ!」
「逆ギレされた!?」
「逆でも何でもねえよ!」
パンチされたりアイスピックで脅されたりしている身にもなりやがれ!
「つまりだ」
神歌は一度「こほん」と咳をたてて、断言してきた。
「どうみても今の私たち、ヒーローっぽくないだろ!」
『ごもっとも過ぎる!』
一同で肯定した。禁句だと思って誰も言わなかったが、とうとう口にしたか。
「見てみろ、今の私たち! 服装が学校制服じゃん!」
神歌が自分の胸に手を当てて訴えかけてくる。そう、俺らの私服は何故か制服だ。勿論母校の。
これがレンジャーの姿なのだろうか。改めて自分を見るととても悲しい。どこからどう見ても一般人じゃねえかよ。
「私たち、別に変身とかできないしねえ。せめて普段着くらい統一して欲しいわね。制服以外で」
那月が腕を組みながらそう言ってきた。俺もそうしてもらいたい。
さすがに制服は……ていうか、政府もそれくらい支給してくれてもいいだろ。ケチな奴らめ。誰のおかげで世界が平和だと思っている。
神歌は那月の言ったことをまさに待っていたかのように、次の言葉を口にする
「そこで、今日は私たちがレンジャーであることを自覚するため、しっかりとした役割や設定を決めたいと思う!」
「おお、割とまともなことを――」
「ではまず、それぞれの『色』から決めたいと思う!」
「俺ら相当駄目駄目じゃねえか!」
そうだったよ! あまりに自分たちが普通に見え過ぎて、根元から何もできてねえ事に気付かなかったよ! 色決めなんて初歩の初歩じゃん! いや、レンジャーはまず色なんか決めねえよ! 最早ごっこのレベルだよ!
皆も俺と同じことを思っていたのか、苦笑いしか浮かべていない。いや、笑っているのか?
「とまあ言っても、ほとんど決まっているんだけどな」
「へ? なんでだよ」
「そりゃあ、皆丁度良く苗字に色が入っているし」
確かにそうだった。赤真、青葉、黄央、緑井。偶然としては出来過ぎている程の奇跡だ。同じ学校だけならまだしも、全員が幼馴染というのがこれまたなんというか。
「じゃあ俺は」
「火黒要なんだから黒だろ」
「だよなあ……。俺がレッドじゃない訳? ほら、名前に『火』が入っているし、リーダーって普通男がやるもんだろ?」
『いや、お前(ようちゃん、要、要君)は無い』
「皆からまさかの全否定!?」
結構痛い精神攻撃である。
「どう見てもようちゃんはサブじゃない」
「今ブラックをサブって認めやがった! なめんなよブラック!」
「黒○のバスケを見てみたら?」
「特技でミスディレクション使うような奴を例えに使うなよ!」
「何? 藤○忠俊先生への冒涜のつもり?」
「そんなんじゃない! それにこの頃、黒子テ○ヤ目立ちまくってるじゃねえか!」
「黒ちゃんの特徴を失くすようなことを言うなんてひどい!」
「何さらっと黒子テツ○をフレンドリーに呼んでんだよ! いつからお前はそんなに親しくなっている!」
「だって愛人だもん」
「まさかの衝撃告白!」
「嘘よ。本当はただの奴隷♪」
「より酷くなってるじゃねえか! 音符付けてもなんの可愛げもねえよ!」
「ていうかさっきの黒ちゃんはようちゃんのことよ」
「同じ名前面倒くせえ!」
「つまり○子テツヤの特徴がなくなるのはようちゃんのそれがなくなることと同意義なのよ」
「俺って影薄かったの!?」
「うん、見えないくらいに」
「薄いどころか存在が無い!?」
「あれ、ようちゃんって誰だったっけ?」
「もう忘れられた!」
ボケラッシュに既に疲れはじめた俺。いや、ペースが速すぎるっていうか、まずボケるなよって話だ。 那月は「あはは」と他人事のように笑っている。畜生………………あれ?
そういえば、さりげなく出てきたから忘れていたけど、俺の名前出てきたな。そもそも自分の事を書いてないじゃないか。……決して自分でも影が薄いなんて思ってないからな! 俺の名前は火黒要。こいつらの幼馴染で――
「あ、良いこと思いついたよ!」
沙羅さんやい。あんたら心読めるんじゃないの? なんでこのタイミング? 俺に紹介させてはくれないのだろうか。
「こう言うことにするのはどうかな?」
沙羅はなんのことか分からず、ただ自分の意見を述べた。
「プ○キュアってヒロイン黒だよ」
「プリ○ュアに男子はいねえよ!」
むしろいたら怖いわ! いや、それ以上にキモいわ! 思わず想像して鳥肌が立った。
周りを見ると、沙羅を除く皆も顔が青ざめていた。
「えー、大丈夫だよ。女装すれば違和感ないって。ほら、昔から私たちに遊ばれて女の子の格好をして――」
「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
女の子のような悲鳴を上げてしまった俺。やめて! 嫌な過去を掘り起こさないで!
「考えたら黒がヒロインって初期だけじゃん! 途中からピンク色が主体だぜ?」
「じゃあピンクレンジャーがリーダーでいこう」
「それこそ違和感がありすぎる!」
「そもそも要君が男子一人で混ざっているのが微妙なんだよ」
「レンジャーの内八〇パーセントが女子っていうのがおかしいんだろうが!」
「もう要君の色は『スケルトン』でいいんじゃないかな」
「それっている意味あるんすかねえ!?」
やべえ、いつもの学校生活時の会話より激しい。こんなのが続いたら身体がもたないぞ。しかも俺に対する罵倒が多いし!
「おい沙羅、レンジャーとそんな女子集団を一緒にするな」
ここで神歌が話(会議である)に入ってきた。そして一言告げる。
「○リキュアは、白がいないと成り立たないだろ!」
「基準はそこなの!?」
どうでもよ過ぎるだろ! どんどん路線外れていってんじゃねえか!
「くっ、そうだった……」
「沙羅はそれで納得するのか!? たとえいたとしてもマーブルストリームは放てないぞ!」
ついでに言わせてもらうと、俺がこんなに詳しいのは昔からの友達がこいつらだけだったもので。そしたらまあ、こんな風にとそんな所である。
「それに妖精だって出ないだろう! 精々いたとして未央くらいじゃないか!」
「わたし、妖精、違う!」
まさかのところで未央がとばっちりを受けた。でも確かに勝手にキャラクターに置き換えるのはいけなかった――
「わたし、シャイニール○ナス!」
「お前も基準はそこかい! つうかもういいよ! 色を決めるんじゃなかったのかよ!」
「今はどう見てもプリキ○アの話だろ!」
「おかしいの俺!?」
まさかの発言で返されてきた。言わせてもらうが、正しいのは俺だからな。
「いい加減にしろ! そもそもなんでこうなったんだよ!」
『お前(ようちゃん・要君)がブラックに文句付けるからだろ(よ・だよ)!』
「…………すんません」
……うん。もう何も言えないや。思いっきり身が縮こまってしまった。そうでしたね。自分がいけなかったんですよね。最初から黒にしておけばいいんだよね。
どうでしたか?
一切躊躇なしのボケ尽くし!
いやあ、私はこういうのを書きたかったんですよ。
これからのこの調子で続けていくのでよろしくお願いします。
次回をお楽しみに!