九話 最終決戦
学校祭の演劇終盤。壇上は山場のたちまわりへ移ろうとしている。着流し姿の僕は舞台上から観客を吟味した。
小杉に泣きつかれたクラスメイト全員が前席に座っている。親父と先生方の姿もある。
僕は決め台詞とともに剣を投げ捨て、床を蹴り高く宙に舞い上がりながら、着物を脱ぎ鎖帷子姿へ早変わりっ。
だって、僕、忍者じゃん。
仕掛けっていうのは前もって仕込んで置くもので――舞台端に着地するなり床板をずらし、取り出したのは直径20センチはある飛礫。徐に観客席へ放り投げれば前席の奴らは一瞬で青色に染まるだろう。不意打ちっていうのはこういうもんだろう?
僕の勝利は間違いない。
僕の願いはただひとつ。全員に公平な楽しい夏休みを! なんだ。
勝者一人、敗者全員だったら――残り二人というルールは自然消滅し、島で留守番する子はいなくなるわけで――。
長期休暇しか島外に出れないっていうのに。親父や先生の手のひらで踊ってなんかやるもんか! そして僕はクラスの全員から英雄視され――うわっー! 快感~!
手にした飛礫を前席目がけて投げ込もうとした、その時だ! 突然ずっしりとした手ごたえが消えた。
「いい加減にそのイイカッコブリッコはおやめ! どうしてウチの野郎どもは、考え足らずの策ばかり思いつくんだい!」
シャープな高音が頭上から落ちると同時に、お腹に入った一撃。
は、速すぎる……見切れなかったよ……ばあちゃん……なぜ?
――そして――――。
僕は体育館で正座中。
真っ赤な顔の林先生がポツリ。
「せっかくの劇が台無しになりましたね……」
夕日に染まった窓の外、カラスがカァ―カァーと飛んでった。