八話 スイカは甘いかしょっぱいか
じゃりじゃりと八等分したスイカに齧り付く。
「英司、明日の学校祭、お勧めは何じゃ?」
「ヘえー親父も来るのかよ?」
れーちゃんがいるから、ブス腐れても強がっておく。ようやく穴から這い出し、れーちゃんにおんぶされ……なんてかっこ悪い姿はもう忘れたい。
「エイちゃん主役の劇しかないでしょ。伯父さんも観てやってください」
そうそう、親父も僕の剣士姿を見て驚け。着流し姿に見惚れろ――れーちゃんよりカッコいい僕に気づけ。
その後は親父を無視して、れーちゃんとぷっぷっとスイカの種飛ばし競争。よしよし、調子は絶好調だ。
「さて帰るか、叔母さん、ごちそうさまでした」
れーちゃんは家までの五キロを走って帰る。
僕は、(真人は普通になってますように)と唱えて眠った。
短時間熟睡も修行の効果。
朝、擦り剥けた肘と膝を撫でながらごはん。
「おはよう、ばあちゃんは?」
向かいで箸に手を伸ばしたじいちゃんに聞いた。
「昨夜出たまんまじゃ。帰りは知らん」
じいちゃんは不機嫌そうに言うと、はぐはぐと白飯をかっこみ始める。
な~んだ……残念。一番観てほしいのはばあちゃんなのに。
ばあちゃんは僕に厳しいんだけど好きだ。
しょっちゅう町内の老人会旅行とかに、じいちゃん置いて出かけちゃう。
何日か姿みえないなぁと思っていると、いつの間にか居間でお茶してる。
お土産はいつも美味い。
昨夜のスイカもそうだ。まんまで甘く、塩振って甘しょっぱく二度美味しいってこと、居間のダーツ板目がけて種飛ばし――の遊び方、ばあちゃんが教えてくれたっけ。
今では真ん中に百発百中。れーちゃんと僕の恒例行事になっている。