五話 懐柔
「いいか小杉、お前らが束になったって僕には勝てない」
れーちゃんの「今日は中止!」宣言で無人になった舞台に二人きり。僕はじりじり詰め寄りながら己の実績を並べ立て、右の口角を吊り上げ凄んでみる。
「知ってる……わかってるさっ!」
おっと、ここで逆切れさせるわけにはいかない。
「だからさ、あいつらより僕と組んだ方が利口だと思うけど? 僕は必ず勝つし、君に協力するし?」
楽車の術というより脅しに近いけど、鬱陶しい精神攻撃を減らすため、小杉を味方にするのはいいんじゃない?
案外気弱な小杉は吐いた。五人がなぜ僕をターゲットにするのかを。
誰かに僕がやられた時点で、五人は勝者になるという裏密約が先生と取り交わされたという。
それでか――納得した。十分出来ましたとも!
担任の林先生は親父の元弟子だ。親父は隠密忍者の頭目で、僕はその後を継ぐべく育てられてきた。
裏で糸を引いてるのは親父ってことか。
だったら、なお更負けるわけには行かない。忍者たるもの、敵が血族でも任務遂行優先が絶対だ。僕は小杉と裏裏密約を交わした。僕が考えている計画に小杉を便乗させ、二人の勝ちを決めてやろう。
運と天も味方した。小杉はなんたって台本屋。僕が考えている戦略を学校祭のひのき舞台で、鮮やかに決めるシナリオを書いてもらおう。
「他の四人にばれないように注意して?」
必要ないかなと思ったけど一応言っておく。
楽車の術を駆使の保は問題外。僕が羨む要素なんて持っていない。
残るは喜車の術で責め続けている明。口だけは上手く一度僕も舞い上がりかけた。赤ふんどしの紐をがっちり締め直そう。




