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四話  演じる 

「おおっ! まっ、まさか、ここで貴様に会うことが出来るとは! これは我が先祖が永年抱きながら、ついぞ果たせなかった屈辱のお引き合わせ――まあ、良いわ。今こそ積年の恨みを我が手で――」 


 雄三の術をどうにか避わし、放課後、劇の練習に励む僕。


「はーい! ストップ~ッ! ちょっとぉ、なんなの、この台詞! いやさー、主役の台詞が長いのはいいよ? けどねー、話がチンケで――深みがなさ過ぎっ! ねえっ、コスッちゃん、いつもの切れと冴えは?! もう二週間で本番なんだけどっ!」


 僕の従兄弟、永崎礼ながさきれいこと、れーちゃんは、こめかみを押さえ辛抱できなくなったようで……。

 口からのどちんこが見えそうな勢いで、僕のセリフを寸止めし、次に小杉を睨みつけ、はあっ?! と息を止めた。


 どよ~んという効果音が響きそうな――そこだけ黒く、重たく、厚く……そんな空気をまとって床に体育座りをしている小杉は、劇の台本担当だ。


「書け、書けない……浮かばないんだ、何も……どうしてかちっとも閃かない……」

 膝を抱えた両手に顔を埋め、消え入りそうな声で呟く小杉の体が左右に揺れだす。れーちゃんは呆気にとられ、救いと疑問をない交ぜした視線を僕に向ける。


 れーちゃんは本気で小杉を心配しているようだ。それを見た僕は胸の中で小杉に拍手喝采。同時に張り倒したい気分。

 こいつは哀車かよ――けど、僕が争奪戦一人勝ちを目論んでいる学校祭の舞台。それを台無しにされるわけにはいかない。 


「最後の二人にならなかったらいいんだろ?」

 そっと小杉に近寄り耳打ちする。

「え、えいじ――でも……」

 任せておけっ! 小杉。  

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