2話
青のベストと赤のベストを着た生徒の戦いは次々進められてった。
3分間超能力で戦い、終わると、AからE、Aの上にSまであるランクを発表される。
「さてと、そろそろ俺の番だ。悪いけど、俺行くわ」
「うん。教えてくれてありがとう。頑張ってね」
「おう」
暁は御咲に背を向け、客席を出る。
下に行くと、対戦相手の淡希がいた。
「負けねえぜ」
淡希は言う。
「クラス一位は奪い取ってやる。前回は能力が使えなかったけど、今回は対策済みだ」
宣戦布告した淡希に、暁はそう返した。
そして青のベストを着た暁は、競技場へと入った。
向こうには、赤のベストを着た淡希がいる。
『はじめっ』
アナウンスが響いた。
「行くぜぃっ」
同時に、淡希は前に大きく出る。
ランクBの彼は、クラス一位だ。
対して、前回の試験で暁はランクE(無能力者)である。
しかし、それは能力を使える環境じゃなかったからだ。
暁は、雷や磁力を操ることができる。
だが、それを生み出せない。
つまり、雷の日や、発電所では能力を使えるものの、他で使うことは出来ないのだ。
前回の試験では、晴天だったために、ランクEとされたが、今回は違う。
暁は、ブレザーの胸ポケットから15cmほどの長さの銀色の杖を取り出した。
そして暁は、手元についているダイヤルを親指で回す。
瞬間、ジャコンという音と共に杖が伸びた。
1mほどのその杖はバチバチと、電撃を走らせている。
雷天の杖。
暁の知り合いが作ったそれは、いわいゆる小型の発電機だ。磁石の力によって電磁誘導を起こし、誘導電流を発生させる。
これにより、暁はいつでも能力の使用が可能となる。
ドパッ!!と、雷天の杖から、雷が放たれた。
迫る雷に対して淡希は、自分の目の前に氷の盾を出現させてそれを防ぐ。
氷の壁に当たった雷はバチッと音をたてながら、四方に拡散した。
「チッ」
「やるな暁。今度はこっちの番だぜぃ」
ゾッと、氷の剣が淡希の手元に現れる。
そして、地面を滑るかのように暁へと駆けた。
その速度は、人の出せるものではない。
少なくとも、プロ野球選手の投げる球ほどには出ている...
「くっ」
横から繰り出された一撃に、しかし暁は避けず、雷天の杖で受け止める。
両者の拮抗が始まった。
ギチギチと手元で音をたてながら、互いの武器を噛ませ合う。
と、そこで暁が動いた。
雷天の杖を握っていない左手で、氷の剣の側面に拳を叩き込む。
パアアアアンという、小気味のいい音が、競技場内にひびいた。
その時にはすでに、淡希の氷の剣は砕け散っていた。
「なにを...」
唖然と、淡希は呟く。
「終わりだっ!」
ビュンと雷天の杖が振るわれ、淡希の首に当たる少し手前で止まる。
それと同時に、ビーと3分の合図を告げるブザーが鳴った。
『終了。検定結果。赤、淡希 光 ランクB SS序列第158位」
ワー!
と歓声が上がった。
SSとは、サイキックスキルの略でSS序列は、市が決める能力の順位だ。
前回、淡希は549位だったので一気に昇格した事となる。
『続いて青、暁 朱羽。ランクA SS序列第26位』
シンと競技場が静まり返った。
無論、暁も...
しばらくして、
「はぁっ!?」
と淡希のあげた声に続き、一気に歓声が巻き起こる。
「すげえよ、暁!」
淡希がバシバシと暁の背中を叩く。
「痛い」
「なあ、最後のあれどうやったんだよ?」
「ん?あ、ああ...左手に砂鉄集めて、それをチェーンソーみたく使っただけだよ」
暁は少し冷や冷やしながら答える。
これは嘘だった。
自分の特殊な体質を隠すための...
しかし、淡希は信じたようで、なるほどなぁと言いながら頷いている。
それを見た暁は、心に罪悪感を覚えるのだった。
「はぁ」
天空市第26位になったということでクラスメイトからいろいろ言われた暁はものすごい疲労感を覚えながら、ダラダラと帰り道を歩いていた。
「でも、あの人はもっと凄かったよな...」
あの人...
もうこの世にはいない、暁の義母だ。
暁の義母、暁 惟は孤児院にいた暁を引き取った。
その理由は、同じ特殊体質持っていたからだと、暁は思う。
暁 惟はその特殊体質のせいで、命を落とした。
自分を育ててくれる人のいなくなった暁は、5年前にこの市に入れられたのだ。
この市で学校に入っていると、超能力開発の援助者、悪く言えば実験体になっているということで普通の会社員くらいの協力料が支払われるので飢えることはない。
「あれ、暁君?」
声をかけられ、振り返るとそこには
「御咲?」
「やっぱり暁君だ。家こっちなの?」
「ああ」
「じゃあ、途中まで一緒かな?家って第何区?」
天空市は1から28までの区でわけられる。
二人の通う誠蘭高校は第6区だ。
「3区だよ。3区の...」
「もしかして、スカイ・ビル?」
「なんでわかったの?」
「え?あたり!?私もだよ」
「そうなの!?...世の中狭いな」
「だね。でも良かったー。知り合いがいて」
「市外から来たんだよな?どこから来たの?」
「イギリス」
「へ?」
「私、帰国子女なんだよ」
「そうなんだ」
「うん」
そうしているうちに、二人はスカイ・ビルに到着した。
御咲の部屋は、なんと暁の隣だった。
「そうだ、今日いろいろ教えてくれた代わりに料理ご馳走するよ」
別れ際に御咲はそんなことを言う。
「いや、いいよ。大したことしてないし」
「いいから、7時にうちに来てっ」
女子高生の部屋に入って料理を頂くというのはいろいろ不味くはないだろうかと思い、断ろうとした時にはすでに御咲は自分の部屋に入っていた。