ズドーンと
昔はさ、このあたりにもさ、猟師さんがいなすったんだよ。熊や猪撃ちのさぁ。
ほんにむかーしの、火繩銃で撃ってたんだわ。ズドーン、とさぁ。
このあたりで最後に残ってた熊撃ちの猟師さんが、善兵衛さんて人でさ。
ここの裏山に一人で住んでらしてさ。ここいらじゃ一番の熊撃ちだったんだわ。
その善兵衛さんが村の人に頼まれてさ。病人に兎を食べさせたいからって、兎を捕りに行ったんだわ。
でぇ、善兵衛さん、真冬の山の中に銃持って、犬連れて入ったんだって。
そん時に善兵衛さん、兎だけじゃなくてさ、狐や狸も捕ろうとして、ついでに仕掛けを作ってたら……邪魔する奴が出たんだって。
黒ーい、もじゃもじゃした毛の、でかーい、壁みたいなのが。
足は熊みたいにガニ股でデカいんだけど、足首から先のとこだけ人間みたいな裸足でさ。頭と手はどこについてるのかわかんねぇんだって。
なんだかひらべったくてでっかい壁みたいな、人間みてぇに二本足で立ってる、黒いもじゃもじゃの汚い毛のバケモンなんだって。
名前?あぁ、何て名前だったけなぁ、善兵衛さん、何とかって奴だって言ってたけども。山に獲物を捕りに入ると、時々出るんだって。
でぇ、邪魔する時は獲物や食べ物を投げてやるとどっかに行くから、善兵衛さん、その時も握り飯を投げてやったって。
そしたらそいつ、拾いには行くんだけど、その日はどういうわけだかすぐに戻って来てまぁた邪魔するんだって。善兵衛さんの周りをウーウー唸りながら、ウロウロ歩き回ってよ。
握り飯、3つ程投げてやってもまた邪魔するから……
善兵衛さん、頭にきちゃってさ。
ズドーンと
撃ってやったって。
その怪物をさ。
一発で仕留めてさ。
黒いでっかいのが雪の上に
バターッと
倒れてさ。
動かなくなったって。
血ぃか何かわかんねぇけど、黒いタールみてぇのがぶわーっと、いっぺぇ噴き出てよ。
すんげぇ臭いなんだって。漬物や残飯が腐ったみたいなさ。
それで放って帰ったって。
でかくて一人で持って帰れねぇし。
そんなの持って帰っても仕方ねぇし。臭せぇし、バケもんなんか食えねぇし、毛皮も汚ねぇし、気持ち悪いし。
だからさ。
でぇ、それから2、3日してそのあたりに行ったらさ。
その怪物、なんだか縮んでバラバラになってて。
それを熊が食い荒らしてて。
でもその食い荒らした熊っコさぁ。
ちょっと行った薮の中に倒れて、泡噴いて死んでたって。
怪物食って、アタったんだろな。
善兵衛さん、熊の毛皮だけ欲しかったんだけど、やっぱり気持ち悪いからやめたって。
むかーしはさ。
いたんだぁ。ここいらにもな。
猟師さんも、熊も猪もさぁ。
今も時々、親戚の者の口から出る話である。




