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プロローグ
人生には、取り返しのつかない選択というものがある。
たとえば進路。たとえば恋愛。たとえば――激安物件の即決。
僕、片桐悠太は今、バスタオル一枚を手に持ったまま、浴室の前で固まっている。
いや、正確には浴室のドアを十センチほど開けた状態で固まっている。
なぜかというと。
お風呂に誰かが入っているからだ。
しかも女の子が。
しかも頭に皿がある女の子が。
「あの、おじゃまします」なんて声をかける気力はとうに消え失せている。とにかく今は、この現実を受け入れることが先決だった。
引っ越し初日。東京での新生活。一人暮らし開始。
まさかこんな形でスタートを切るとは、あの時の僕には想像もできなかった。




