第十九話 囮作戦、完結
敵の混乱は頂点に達していた。
煙が立ち込める。
矢が空を裂く。
兵士たちは自然に動く。
夏侯惇が隊列を整える。
俺は帳簿を握り、数字を読み続ける。
敵の人数。
速度。
位置。
退路。
全て計算済みだ。
「左翼、さらに誘導!」
夏侯惇の声に従い、馬が動く。
敵は反応できない。
餌に食いついた瞬間。
補給隊を包囲するはずが、逆に敵が包囲される。
俺は筆を取り、戦場で証拠を記録する。
数字通りに動く戦場。
敵の動線が、完全に見える。
「これが……郭嘉の作戦か」
心が高鳴る。
小さく笑う声。
前方に、敵の本隊が姿を現した。
中規模の部隊。
しかし、監視を抜けて来た者はほとんどいない。
帳簿と現場が完全に一致する。
「敵の正体、見えたな」
俺は呟く。
夏侯惇が頷く。
「よくやった」
囮作戦の成果。
敵は補給を奪えず、混乱のまま後退する。
矢の雨が止む。
煙が薄れる。
静寂が戦場を包む。
俺は帳簿を閉じる。
戦は終わった。
しかし、数字は戦いの記録を残した。
敵の動き、人数、速度、反応。
全て帳簿に刻まれる。
郭嘉が馬上に現れる。
「見事だ」
背筋が震える。
「数字だけで、戦を動かす」
彼の言葉が胸に響く。
夏侯惇が俺の横で笑う。
「初戦から、よくやったな」
俺は少し照れながら頷く。
戦場で初めて、自分の力を実感した。
数字が、戦を制した――
囮作戦、完結。
そして、物語は次の局面へ動き始める。




