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死神シリーズ

赤い傘の女

作者: しゅうらい
掲載日:2026/03/14

 ある雨の日の午後、僕は商店街を歩いていた。

 母親から、夕飯の買い出しを頼まれたからだ。

「もう……こんなに頼まなくてもいいじゃないか」

 愚痴をもらしつつ、僕は手提げ袋を見つめる。

 やがて、家の途中にある横断歩道にやってきた。

 だけど、信号が赤だったから足を止めた。

 待っている間暇だから、僕はスマホを操作する。

 そして、ふと顔を上げた。

 すると、人ごみの中に、ひときわ目立つ女の人がいた。

 なんで、女の人かって?

 だって、赤い靴に白いワンピースだったんだ。

 それに、大きな赤い傘をさしていたしね。

 そしたら、その人が僕に小さく手を振っていたんだ。

 僕は首を傾げたけど、何気なく手を振った。

 だけどこの行為が、まさかあんなことになるなんて……

★★★

 次の日、僕は日直だったため、早起きをした。

 そして、いつも通りカーテンを開けたんだ。

 すると、昨日見た、赤い傘の女の人がいたんだ。

「あれ、今日って、雨降ってるの?」

 だけど、家の前を通っている人たちは、傘などさしていなかった。

 しかも、皆女の人を無視するように、通り過ぎていく。

 おかしいと思い、僕は首を傾げる。

 すると、女の人はまた小さく手を振っていた。

 だけど、僕は手を振らなかった。

 なぜかはわからないけど、なんとなくだ。

 そして、玄関を出たら、もう女の人はいなかったんだ。

「なんだったんだろう、あの人……」

 僕は少し気になったけど、すぐ学校に急いだ。

 中学校に着いて、日直の仕事をしていく。

 授業が始まって、僕はふと窓の外を見たんだ。

 すると、校門の所に、あの赤い傘の女の人がいた。

 そして、また小さく手を振っている。

 それがなんだか怖くなり、僕は目をそらした。

 それからの授業は、あまり覚えていない。

 ただでさえ、あまり頭がよくないのに……

 気づいたら、放課後になっていた。

 僕は日誌を書かないといけないので、遅くまで残った。

 他の皆は帰って、教室には僕ひとりだけ。

 その時、何気なく窓の外を見たんだ。

 すると、校庭の端にある木の陰に、赤い傘が見えた。

 そう、あの女の人である。

 そして、また手を振っていた。

「なっ、なんで学校の校庭に?!」

「それは、お前が『あれ』に応えたからだろう」

 僕は、震えあがった。

 あの女の人が近づいていたこともあるけど、それよりもまず……

「だっ、誰ですか、あなた!」

 僕が前を見ると、教壇に肘をついている男の人がいた。

 だけど、すぐ人間じゃないことはわかった。

 だって、大きなカマを持っていたんだもの。

「俺は死神。ここには仕事で来たんだ」

「しっ、死神?」

 えっ、じゃぁなに、僕死ぬの?!

 僕は、自分の血が引いていくのを感じた。

 すると、遠くから靴の音が聞こえた。

「どうやら、入ってきたみたいだな」

「それって、あの傘の人?」

「あぁ、狙いはお前だろうな」

「でも、僕なにもしてないよ!」

「しただろう。よく思いだせ」

 死神に言われ、僕は苦し紛れに考える。

 すると、あることを思いだした。

「あっ、あの時手を振っちゃった!」

「やはりな」

 死神は呆れたのか、ため息をついた。

 そして、僕に近づいてくる。

「あいつは、自分が視えて、なおかつ合図に応えた者を連れていこうとする」

「合図?」

「まぁ、今回は『手を振る』が合図だったんだろう」

「ぼっ、僕はどうしたら……」

「黙って、あいつに連れていかれることだな」

「そっ、そんなの嫌だよ!」

 僕は、慌てて立ち上がった。

「僕は、なにもわからず死にたくない!」

 その時、教室の前で靴の音がやんだ。

「なら、お前はどうしたい?」

「僕は生きたい。お願い、あの人を追い払って!」

「はぁ……しかたないな」

 死神はため息をついて、黒いマントを翻した。

 そして、カマを肩に担いだ。

 それと同時に、勢いよくドアが吹っ飛んだんだよ。

 入ってきたのは、やはりあの赤い傘の人だった。

 だけど、傘を閉じたその姿に、僕は驚いたんだ。

「くっ、首から上が無い?!」

「こいつは死んだ時に、自分の首を失くしてな。それ以来、代わりの頭部を探しているんだ」

「じゃぁ、連れていかれた人たちって……」

「皆、頭部が無かったな」

「ウソ……」

「俺が知る限りでも九人だ。お前でちょうど十人だな」

「僕をカウントしないで!」

 僕の焦りが通じたのか、死神は一瞬で女の人に近づいた。

 そして、カマを振り上げる。

 でも、傘で防がれ、金属音が響き渡った。

 いや、傘じゃないんじゃないの、あれ!

 すると、女の人は机に飛び乗った。

 軽快なステップを踏んで、傘で応戦していく。

「ちっ、やはり一筋縄ではいかないか」

「どうしよう……僕にできるのは……」

 僕は、急いで周りを確認した。

 そしたら、いい物を見つけたんだ。

「これだ!」

 僕は勢いよく、それを投げた。

 それは女の人に当たり、別の方に転がっていく。

 すると、女の人の気が、一瞬それたんだ。

「今だよ!」

「言われなくても!」

 死神がカマを振り下ろすと、女の人は霧のように消えていった。

 僕は力が抜けて、その場に座りこんだ。

「お前、さっき何を投げたんだ?」

「サッカーボールだよ」

「ほぉ……」

「ちょうど頭くらいの大きさだし、音だけだから間違ってくれると思って……」

「それにしては、雑な方法だな」

「うん……一か八かってところかな」

「ヘタしたら、お前の頭が無くなっていたな」

「怖いこと言わないで……」

「まぁ、俺の仕事は終わった。じゃぁな」

「あっ、ちょっと待ってよ!」

 僕の呼びかけに答えないまま、死神は窓から出ていった。

 残されたのは、僕ひとりだけ。

「この後始末は、誰がするんだよぉー……」

 僕の不安は的中し、やってきた先生たちにこっぴどく怒られたよ。

 それから、あのようなことは起こっていない。

 まるで、夢だったんじゃないかと思うくらい。

「あの死神、今はどこにいるんだろう……」

 僕はふと、彼のことを思いだす。

 もしかしたら、次はあなたの所に現れるかもしれないね。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
 相変わらず死神さんは格好いいですね~。  そして、いつもより良く話している…。  さらに苦戦してるぅ!?  つーか、あの赤い傘は一体…?  …格好いい死神さんをみせてくれてありがとうございました!
そういえば吸血鬼にも招待された家にのみ入れるという特徴がありましたが、この赤い傘の女も波長が合って受け入れ体制の整っている相手にしか仕掛けられないのですね。 そして今まで9人の人間を襲って首を落として…
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