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贈り物

「ごめん、実はさっき…カレンに教えて貰っちゃって

 …君がルネ王子の婚約者だったって本当?」


彼は真っ直ぐ私を見ながら言う。


「あ…」


どうしよう…ロイド先輩と違って彼はルネ様とは競争関係にある訳だし

私は何度か序列試験に参加している…


元々ライバル関係にあったって解ったら、どんな反応されるんだろう?


…それに…こんな事考えるの

変だって分かってるんだけど…!

トウマ様にあんまりそういうの、知られたくないんだよね…!


男の人って過去の男性との関わりとかそういうの気にする人いるらしいし…


こ、これは彼に女として見られたいからとかではなく!

単純に友達でいたいから知られると気まずいってだけ…!うん、きっとそう!


「か…カレンの勘違いだと…思います」


私は視線を逸らしながら嘘を吐く。


「なーんだそっか!良かったー」


あ…トウマ様安心してる。

やっぱり言わないのが正解だったんだ。


「リコ、最近ずっと避けられてたけど

 俺、リコともっと一緒にいたいんだ

 だから仲直りしたくて…

 何かしたなら謝るから、

 もう逃げるのやめて欲しいんだけど…」


「あ…」


ち、違うんです!

トウマ様がカレンの事好きって解ってから

勝手にモヤモヤしてたんです…!


トウマ様が私の事友達だと思ってるのに

私は一丁前に意識してるのが

本当に馬鹿で、情けなくて…


「トウマ様が謝る事なんて無いです!

 あれは私の問題というか…」


「リコの?何かあった?」


言える訳ない…!言ったら絶対

『リコって俺の事そういう目で見てたんだ…』

って軽蔑される!


「あっ…いや大した事じゃないので!

 もう避けません!ごめんなさい!」


「そう?良かった

 あ、それじゃ仲直りの印に…

 これあげる!」


彼は言いながら、ポケットから小さな箱を取り出す。


「開けてみて」


開けると、そこには彼の瞳によく似た輝きを持つ宝石が入っていた。


「これ欲しがってたでしょ!?

 プレゼントに買ってみたんだけどどうかな!」


『先輩がジュエリー店で貴重な石を買い付けられる所を見たんだとか…』


あの噂、これの事だったんだ!

…この石、小さくもないし見るからに希少な石だよね?


「いくらしたんですか、これ…」


「200万ゴールド!」


「にっ…!?」


200万!?王族だからって絶対安い金額じゃないでしょ…!


「受け取れませんそんなの!」


「何で?気に入らなかった?」


「そうじゃなくて…

 これは友人同士で気軽に贈り合うものじゃないですから!」


「…でもこれ、どうしても

 リコにあげたかったんだ

 リコが付けてるそのリボン、

 ロイド君があげたんでしょ?」


「あ、ああはい」


「最近ずっと付けてるの…ずるいなって」


「…はい?」


「俺も自分があげたの、リコに付けて欲しい…」


彼はそう言って口を尖らせる。


「だからって宝石は」


「じゃああげない!借すから

 これ付けてて!」


彼は言いながら私に宝石を差し出す。

う…そんなに見られたら断りづらいよ…!


「…わ、わかりました」


私はそれを受け取ると彼の期待の眼差しを受けてそれを身につけた。

無くしたらどうなるんだろう…弁償なんか出来ないし…!


私の不安とは裏腹に、トウマ様は嬉しそうに目を輝かせていた。


「…あの、一応忠告ですけど…

 女性にあんまり気軽に宝石を贈っちゃ駄目ですよ」


「どうして?」


「こういうのは婚約者とか奥様とか…

 せめてそうなりたい人とか

 そういう人にプレゼントする物なんです」


私が言うとトウマ様は少し固まった後


「そうなの…!?だってロイド君が

 女の人は高いのあげたら喜ぶって

 言うから…」

と言って赤面する。


…ロイド先輩もまさか200万単位の物が飛び出すとは思って無かったと思う。


「…そういう訳で、もし将来私以外に女性のご友人が出来ても

 気軽にこういう贈り物しちゃダメです、

 びっくりしちゃいますから」


「解った!

 リコ、これからも友達でいようね!」


「は、はい!」


…でもそっか、宝石は私への贈り物…

なら、きっとカレンにプロポーズした訳じゃないよね。


彼は女性が得意じゃないし、

上手く切り出せなかったりしたのだろうか?

…なら…もうちょっとだけ…

私が隣にいれるんだ。


…彼の弱点を逆手に取って…

こういう事考えちゃうの、やっぱり最低だな。


ーーーーー


教室の隅で、私は思案に暮れる。

ピンチは乗り越えたけど、

ロイド先輩とのバディも一旦解散する事になったし


本気でバディを探さないとまたこういう時に困りそう。

もう一度ロイド先輩に頼んでみる…?

いやでもまた迫られても嫌だな…


「リーコっ何ため息なんか吐いてるの?幸せが逃げるよ」


私が肩を落としていると、同じクラスのニナがそう言って肩に手を置く。

彼女は私と同じ平民の出で、平民に優しくないこの学校の中で

唯一私に気軽に話しかけてくれる友達だ。


「ねえ、リコにすっごくいい話があるの!聞いて聞いて!

 ため息なんて吐いてる場合じゃないんだから!

 今度の土日、バディがいない魔法使いと聖女同士で

 パーティをする事になったのよ!

 リコもバディいなかったよね?一緒にどう!?」


ニナが目を輝かせながら言う。

それって合同お見合いみたいな事…?


「…ニナ…バディいるよね?

 一緒にってどういうこと…?」


「しー!…今のバディさあ、私の事平民だからって

 すっごい見下して来るの!それに魔法もへたっぴで…

 補助するこっちが疲れるのよ!

 だから新しい男探しを…こっそりと、ね?」


ウインクしながら囁くニナ。

彼女の婚約者って宮廷に仕える音楽家の息子さんとかじゃないっけ?

勇気あるなあ。


…とはいえ、こんなチャンス逃す訳にはいかない!

絶対に参加すべき…!


でも…でも…!

男の人と話せる自信がない!


「あっ…そっかぁ、リコって男の人苦手なんだっけ」


「うん…でも、バディは本気で探してるし…

 どうしよう」


「じゃあじゃあ、明日までに教えてくれたらいいよ!

 まだ土日まで時間あるし!」


彼女はそう言って笑うと、私の肩をポンと叩く。

本当にいい子だな、ニナって…


「あ…因みに、イケメンも来るらしいよ?」


私の耳元で彼女が囁く。


「なっ…別に期待してないから!」


私は顔を真っ赤にしながら言い放ったのだった。

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