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瓜二つ

『王族とは名ばかりの落ちこぼれが』


『アンドルシュ家の面汚し』


……ルネ様は、いまでこそ その才能を認められているが、昔は彼の事をそんな風に揶揄する者ばかりであった。


『俺のバディに?やめておけ、笑われるぞ』


ルネ様に「貴方のバディになりたい」と告げた日、彼はそう冷たく言い捨てた。

私は去り行くルネ様の手を……必死に掴み引き止めたのを覚えている。


ーーーーーーーー


私にバディにならないかと誘われたロイド先輩は少し唸った後、

「そりゃ……願ったりだけどさ、だめ!

あんたが話聞いてたなら尚更よくない、俺なんかとバディ組んだら笑われるぜ。」

と言い放つ。


「……ふふっ」


「何であんたが笑うんだよ!」


なんだかどこかで聞いたようなセリフに思わず笑ってしまう。

しかし本人はきっと真剣に困っている筈だ。


「す、すみません……ロイドさんが知人と全く同じことを言うものだから……わ、私は元々笑われ者ですので……!テストの間だけ一緒に組みましょう!」


「なんで、あんたにメリットないだろ。何企んでる?」


「……今のロイドさんが……あまりにも知り合いと重なるんです。

私だったら救えるのに……って、思ったら、いてもたってもいられなくって……」


私が口ごもりながら言うと、ロイドさんは可笑しそうに笑う。


「あんた、気弱に見えて結構自信があるんだな。……そういうことなら、いいぜ。

いや、寧ろ誘ってくれてありがとう、助かる。こんな状態の俺と組んでくれる聖女なんて多分いないからさ。」


ロイド先輩がそう言って私の手を握る。


「うぎゃっ」


「……なあ、前から気になってたんだけど、何で触るたんびに変な声出すんだ?」


「すす、すみません……私少々殿方が苦手でして……!触られると拒否反応が……」


「なんだそれ!あはは、面白いなあんた!」


ロイド先輩は言いながら私にペタペタと振れる。


「ぎゃっ……やめて下さいってば!」


「それと、その『ロイドさん』って呼び方やめろ。せっかく後輩なんだから『ロイド先輩』って呼んでくれよ。」


「ロイド……先輩?」


「うん、いい!すっごくいい!やっぱ学生の内には先輩って呼ばれておくもんだよな!」


ロイド先輩は言いながら私の頭をわしわしと撫でる。

なんか……思ったより変な人かも……?


ーーー


私達は臨時でのバディでテストに参加する旨の申請を終えると、魔法修練場に足を運ぶ。


「リコ!」


すると道中でトウマ様が息を切らしながら私に声を掛けてきた。


「トウマ様……!どうしたんですかそんなに慌てて。」


「……そういえばトウマ、さっき教室で女子に囲まれてたな。

羨ましい、可愛くて家柄のいい子ばっかり集まって来てさ。」


ロイド先輩が淡々とした様子で告げる。

この様子だとロイド先輩はトウマ様が女性が苦手という事実は知らないみたいだ。


「何言ってんの!撒くのすっごい大変だったんだから……!能力テスト前だからって皆『組みましょう』ってうるさくて……あ、いや……そんなことは無しに来たんじゃなかったんだった。

リコ、能力テスト中また俺とバディ組まない?」


トウマ様の申し出に私は少し目を丸くした後、ロイド先輩と顔を見合わせる。


「……すみません、私今回のテストはロイド先輩と出ることにしたんです。」


「え!?」


トウマ様は物凄く驚いた顔で私とロイド先輩の顔を交互に見る。


「リコ、男性が苦手なんだよね……?なのにどうして……」


「彼の症状が……その、前のバディの悩みと同じだったので、なんだか放っておけなくって。」


「そういうこと、トウマだったらリコじゃなくても他に沢山バディになりたいって娘沢山いるだろ?俺にはリコしかいないからさ、今回は譲ってくれ」


ロイド先輩の言葉にトウマ様は渋々頷くと、

「わかった、今回は諦める。」

と言いながらトボトボと去っていった。


「……へー、昨日も一緒にいたし、トウマと結構いい関係だったりした?」


トウマ様を見送った後にロイド先輩が言う。


「ま、まさか!友達ですよ、友達!」


私は不自然なくらい大きな声で否定すると、ロイド先輩の袖を掴み魔術修練場まで引っ張った。


……


「ロイド先輩、そのスランプっていつから起きてますか?」


「3ヶ月前くらい」


「なら、そのくらいの時期から魔力が身体に必要以上に溜まっている可能性があるので定期的に発散しましょう。そうしないと……」


「しない、と?」


ロイド先輩は唾を飲み込む。


「身体が破裂する……かも?」


「こええよ!しかも自信ないんかい!」


「ロイド先輩に必要な処置は一般的な祈り……

 つまりは魔力増幅ではなくて、逆に抑えつけて制御するのが大事になります」


「それって、結構難しいんじゃないの?」


彼が目を細めながら言う。

…確かに、繊細なコントロールが必要になる為並の腕では彼の能力を持て余しそうだ。


「そう…ですね、あまり簡単な事ではないので、聖女選びは慎重に行った方がいいと思います。

下手したら魔力の出口を塞いじゃったりとかして…破裂する、かも?」


「あんたよっぽど俺を破裂させたいらしいな。」


ロイド先輩が私の頬を抓りながら言う。


「ひぎ!?そ、そんらことないれふ!」


「…ま、いいや。そうならない為にも魔力は定期的に使っとけってこったな。」


「そういう事ですね。ついでに相性も見たいので……

……あの1番遠い位置にある人形、あれを狙って火炎魔法を撃ってみましょう。」


私が人形を見やると、ロイド先輩は「解った」とだけ言って杖を構える。


私が祈ると、ロイド先輩の撃った火球は遠くまで飛び、見事1番遠い人形に被弾し強く燃え上がった。


よし、成功……!多分この人、元々魔法が得意な人なんだろうな。

出力以外はコントロールも火力も問題なさそう。


「おー……あんた凄いな、前と変わらない感じで使えるわ。」


「私は魔力を抑えてるだけでほぼ何もしてませんよ。」


「そんなことない、見てただろ?俺、バディに『あんたみたいな下手くそと組むの嫌だった』って匙投げられてたんだから。

だからやっぱあんたは凄い、自分で言ってみ。」


「わ…私は…凄い?」


「ん、よく出来ました」


……ルネ様は、私の聖女としての能力を認めてくれず

いつしか私とバディを組むのを拒む様になった。


だから、こんな風に褒められるの…嬉しいな。


この人とならバディになっても上手くやっていけるかもしれない。

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