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ロイド

「ロイド!これどういうこと!?確かにバッグを取り返してとは言ったけど他の聖女に祈ってもらえなんて言ってない!」


真っ赤な顔で少女が声を上げる。


「おい、こんな街中で大声出すなって……彼女は人助けに協力してくれたんだ、何もそんな怒ることないだろ」


「私が怒ってるのはこの子にじゃなくてあなたに!近くにバディがいるのに聖女に祈らせただけでなく……魔法が上手くいっちゃうなんて……

これじゃああなたが不調なんじゃなくって私に問題があるって言ってるようなものじゃない!」


少女はロイドさんの体を揺すりながら、涙目で訴える。

まずい、私のせいで修羅場のような空気に……


「あの、違うんです、彼の魔法が上手く行かないのは……!」


「もういい!ロイドなんて知らない!あんたみたいな下手くそと組むの嫌だったのよ……!バディは今日で解散するから!」


私が言い切る前に少女はそうきっぱり告げその場を足早に去って行った。


「あ……私、追いかけて……!」


私が少女を追いかけようとすると、ロイドさんが私の腕を掴む。


「うぎゃっ」


「待て!遅かれ早かれああなってたんだ、あんたが責任感じることじゃねえよ」


ロイドさんは悲しそうな声で言い放つ。


「そんな……」


「リコ!急に走って行くからびっくりしたよ!やあ、ロイド君。」


どうしたらいいか悩んでいると、トウマ様が言いながら走り寄ってくる。


「ああ、トウマか。」


「これ、どういう状況?」


「ロイドさんの症状……以前にも見た事があったので正常に魔法がつかえるよう調整して祈ってみたんですが、それをバディの方が見ていたらしくて……」


私が言いにくそうに説明すると、トウマ様は困ったような笑顔で「あらら」と呟く。


「晴れてバディ解散させられちまった、まあ、彼女も俺みたいな落ちこぼれと組むよりほかと組んだ方が未来があるだろ。」


そう言い切るも、ロイドさんの顔は寂しげだった。


「ロイド君の不調、まだ続いてるんだ。」


「ああ、おかげで補習祭り。生徒会もいつ辞めさせられるか解ったもんじゃねえよ。

本当にどうしちまったかな……魔力が衰えてんのか?」


「それ、逆です……魔力が膨張気味なのかと……

知り合いが同じ症状だったので何となく解ります。」


ロイドさんの身に起こっているのはきっと、体に溜めきれてない魔力が魔法を使った時に制御不能になってしまう現象だ。

イメージで言うと、水の出力を最大にしたホースが荒ぶる現象と似ている。


その上から聖女のバフをかけてしまうと余計に制御が効かなくなるため、

彼に必要なのは出力を調整する存在なのだが……

一般的な強化魔法とは異なるのでそれを可能にする聖女はかなり少ない。

私のように元のバディがたまたま同じ症状だった、という事情でもない限りはわざわざ「能力を弱める」魔法を勉強している人間はいないだろう。


「ほお……?あんた詳しいの?なあ、もし良かったら……」


ロイドさんはそこまで言いかけてやめる。


「え、何ですか?」


「何でもない、あんた名前は?」


「リコ・エミリです……」


「エミリ、助けてくれてありがとな。あ、そうだ……良かったこれ、やる。」


そう言って差し出されたのは、私が買おうとしていた白いリボンだった。


「え、いやでも……これ、誰かにあげるんじゃ……」


「見てたろ?あげたかった女とはさっき別れたもんでね。

……似合わないとか言ってたけど……なんだ、似合うじゃん。」


言いながら、ロイドさんは私にリボンをあてがう。


「またどっかであったらよろしくな、エミリ!トウマは俺が首になってなかったら生徒会室でまた会おう。」


それだけ言うとロイドさんはそのまま何処かへ去っていった。


「……心配だね、ロイド君。

3か月前くらいに急に魔法が使えなくなってから、結構大変なことになってるみたいだよ。

生徒会をクビになる程度で済めばまだいいけど……」


トウマ様は言いながら不安そうにロイドさんを見つめている。


「……」


……世間が男性が苦手な聖女に厳しいように、魔法が使えない魔法使いは周囲からかなり嫌煙され、認められることはない。

ルネ様も、昔はそうだったからよく知っている。


ただ、理解があればちゃんと魔法が使えるのに……なんだかもったいないな。


ーーーーーーー


翌日


「来週、能力試験があるので皆様バディと修練に励みますようお願い致します」


HRの終わり、担任のアメリ先生に言われて私は顔を青くする。

能力試験……!そう言えばそんな物が行われる時期だ。

魔法使い、聖女共に魔法の能力を図る大事な試験の日。

悪い結果を出してしまえば今度こそ本当に学校を追い出されてしまう。


前は無理を言って婚約者に付き合って貰ったが今の私は一人、

このままでは能力の発揮以前にバディがいない状態で挑むことになってしまう。


私は人のいないタイミングを見計らい職員室に入ると、先生に声を掛けた。


「あ……アメリ先生!今お時間大丈夫でしょうか?」


先生は私の顔を見るなり、悩ましそうに眉間を押さえる。


「ああ……あなたね。どうかしたの?」


「今度の能力試験、バディがいない場合ってどうなるのでしょう……?」


「無理にでもバディを組んでもらう事にはなると思うけど……最悪失格になる恐れがあるわ。臨時でも組んでくれそうな友人はいないの?

……というか、どういう関係かは解らなかったけど……いつもの彼は?」


「あ……いやその……」


私の様子を察したのかアメリ先生が眉を顰める。


「ああ、もういいわ、解った。非情って思われるかもしれないけど、聖女の能力は魔法使いがいなきゃ図れない。

何とか試験までに相手を見つけなさい……今までみたいに優れた相手がバディじゃないから、あなたもごまかしが効かないでしょうけど……頑張って。」


先生はそれだけ言うと「失礼」と言ってそのまま仕事に戻ってしまった。


あと一週間で……バディを見つける!?

そんなの無理でしょ!


私は先生にお礼を言うと、職員室を出ようとする。

その時「ロイド君、君には申し訳ないが……この成績が続くようなら進級は厳しいかもしれない。」という声がして足を止める。


ロイドさん……そんな話にまでなっているのか。

いけない、思わず盗み聞きしてしまった、こんな話誰も聞かれたくないだろう、早くここを出ねば……。


「しかし、君の御父上が……そんなことになるくらいならば学校を辞めさせると聞かないんだよ。」


「……!」


「しかしこちらも……名門学校としての面子がある、君の家がいかに貢献してくれていると言えど今の君の成績を容認することは出来ない。

もし今回のテストで成績が振るわなかったら……その時は。」


「……聞いた?ロイド先輩進級できないって……」


「なんか幻滅……落ちぶれたよね、去年まではかっこよかったのに」


「こら!あなた達!職員室に用がないなら出て行って頂戴!」


職員室にたまたま足を運んでいた生徒が後ろでロイド先輩の噂をしていると、アメリ先生がそれを払いのける。


……


『あの落ちこぼれ王子……』


『何の価値も無い王族が』


私はふと、昔ルネ様に投げられていた言葉を思い出し、

職員室から出たロイド先輩の服の裾を思いきり掴んだ。


「わっ……んだよ、あんたか。

何?さっきの話聞いてたの?お別れなら辞める日に言ってくれよな」


ロイドさんは呆れたように言い放つ。


「そ……!うじゃ、なくて……!ロイドさん、私と……

バディ組みませんか!?」


「………は?」

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