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バディ

その後、ひったくりは警察に連れて行かれバッグも無事持ち主の元に戻り、

事なきを得たのだった。


…よし、騒がしい内に私もこの場を去って…


「待て」


去ろうとした私の気配を感じ取ったのか、ロイドさんに腕を掴まれる。


「ひぎゃっ!?」


「あんた…よく見たら

 リボン買おうとしてた変な女じゃん

 さっきの、どうやった?教えろ」


彼は私を睨みながら顔を近づけて来る。


「いや…!あの…!」


「リコ!急に走って行くからびっくりしたよ!

 …やあロイド君」


「ああ、トウマか…」


「これ、どういう状況?」


私が聞きたいのですが…


「こいつが祈ったら俺の魔法が上手く使えるようになったんだよ

 最近スランプで全然上手く行かなくてさ

 魔力が衰えてんのかなって…」


「それ、逆です…魔力が膨張気味なのかと…

 知り合いが同じ症状だったので何となく解ります」


体に溜めきれてない魔力が魔法を使った時に制御不能になってしまう…

イメージで言うと、水の出力を最大にしたホースが荒ぶる現象と似ている。


「へー…」


彼は私の顔をじっと見る。


「な、何か…?」


私が困惑していると

「手、いつまで握ってるの?」

とトウマ様が言う。


「あ、わりい

 …婚約者…じゃないよな?

 トウマの友達?」


「そう…だけど」


「…あんた名前なんて言うの?」


「リコです…リコ・エミリ…」


「そっか、エミリ!また会おうな

 トウマもまた」


ロイドさんはそう言ってその場を後にした。


「…あの方…お知り合い、ですか?」


私が尋ねると、

「生徒会の友達」

トウマ様は不機嫌に言い放つ。


あれ…何か怒ってる?

いつも笑顔なのに珍しく不機嫌な様子だ。


「あの、何か失礼をしてしまったでしょうか…?」


「俺、もしかして不機嫌になってる?」


「はい、そう見えます」


「…まじかー!」


トウマ様は叫びながら手で顔を覆った。


「…ごめんね、何でもない

 リコは悪くないから」


彼は耳まで真っ赤にしながら言う。


「あ、はい…?」


「俺、リコといる時怖いって思わないし…

 悩みも似てるから勝手に親近感沸いちゃってて

 だから…嫉妬…した…

 あーもーキモいよね本当ごめん」


嫉妬…トウマ様が私に!?


「リコ!…あのさ」


「はい…?」


「…やっぱり明日言う!

 明日図書室に行くから待ってて!

 ま、またね!」


彼はそれだけ言うと早足で何処かへ消えてしまった。


珍しいな、いつもはっきりしてるトウマ様が

あんなに煮え切らない態度を取るなんて…


ーーーーーー


翌日


「来週、能力試験があるので皆様バディと修練に励みますようお願い致します」


HRの終わり、アメリ先生に言われて私は顔を青くする。

能力試験…!忘れてた!

魔法使い聖女共に魔法の能力を図る大事な試験の日…!

悪い結果なんて出したら本当の本当に学校を追い出される!


前は無理を言って婚約者に付き合って貰ったけど今の私は一人だし

どうしたらいいの!?


私は人のいないタイミングを見計らい、先生に声を掛けた。


「あ…アメリ先生!」


彼女は私の顔を見るなり、悩ましそうに眉間を押さえる。


「ああ…あなたね

 どうかしたの?」


「今度の能力試験…バディがいない場合ってどうなるのでしょう…?」


「無理にでもバディを組んでもらう事にはなると思うけど…

 最悪失格になる恐れがあるわ

 臨時でも組んでくれそうな友人はいないの?

 …というか、どういう関係かは解らなかったけど…

 いつもの彼は?」


「あ…いやその…」


私の様子を察したのか先生が眉を顰める。


「ああ、もういいわ、解った…

 非情って思われるかもしれないけど

 聖女の能力は魔法使いがいなきゃ図れない

 何とか試験までに相手を見つけなさい

 …今までみたいに優れた相手がバディじゃないから

 あなたもごまかしが効かないでしょうけど…頑張って」


彼女はそれだけ言うと「失礼」と言って

そのまま職員室の方向へ消えて行った。


あと一週間で…バディを見つける!?

そんなの無理でしょ!



私はトボトボと歩きながら図書室に向かう。

…いや、待って?そうだ!

トウマ様に頼んでみたらどうだろう!


彼って優しいし、バディも居ないらしいし!?

事情を話せば試験の間だけ組んでくれるかも!


『明日図書室に行くから待ってて!』


図書室で待ってればトウマ様に会えるよね。

…ちょっと楽しみだな。


ーーーーーー


…一方、トウマは授業が終わった後急いだ様子で教室を出る。


最強の聖女には確かに興味あるけど…

リコとは傍にいても話してても怖く無いし

俺の秘密にも理解があるし!

あと…笑うと可愛い…のは、関係ないだろ!

あーだめだ!昨日からずっとそれが頭から離れない!


…とにかく、気の合う人間とバディが組めたらそれが一番いいよね

彼女には丁度バディがいないんだ。

昨日ロイド君と息合わせてたし

うかうかしてたら彼女のバディが決まってしまう…!


早く「俺のバディになって欲しい」ってお願いしにいかないと!


…意を決して教室を出ると、待ち構えていたであろう女子生徒達が期待の眼差しで俺を見ている。


「えっ!?」


いくら何でも数が多い…!


「トウマ様!トウマ様にはバディがいらっしゃらないって伺ったんですう

 能力試験私と組みませんか!?」


そっか能力試験…!タイミング悪すぎ…昨日勇気出して言えばよかった!


「いやあの…俺、行かなきゃいけないとこがあって…ちょっと!?」


俺は大勢の女子に押し囲まれ、身動きが取れなくなってしまった。


まずい…!人を待たせてるのにー!


ーーーーーーーーー


―リコは図書室でトウマを待っていたが、彼は一向に現れることが無かった。


…もうこんな時間…戸締りしなきゃ。

トウマ様、どうしたんだろう?

今日来るって言ってたのに。


私が肩を落としていると、図書室の扉が開く。


「…!」


私が期待しながら見ると、入って来たのはロイドさんだった。


「あ…どう…も」


何ガッカリしてるのよ、失礼でしょ!


「貸出でしたらまだやってますのでお好きに見て行ってください」


「…いや、本に用はない

 俺はあんたに用があって来た」


ロイドさんは真っ直ぐ私を見て言い放つ。


「私に…?」


「エミリ、能力試験で俺とバディを組もう

 俺もバディがいないからあんたが手伝ってくれたら嬉しい」


「…え…えっと、でも…私なんかでいいのでしょうか?」


「あんたがいいから言ってる」


彼の意志は固そうだ。

…でも…


「あの…トウマ様、見ませんでしたか?

 私トウマ様にバディをお願いしようと思ってて」


「ん?ああ…トウマなら凄いことになってたぜ

 女子達に『バディになって下さい』ってせがまれてた

 しかも皆可愛くて家柄も一流の子ばっか!

 いいよなー、王族って」


…そっか。

そうだよね、トウマ様にはたくさんの選択肢があって…

私より何もかも優れた人が周りにいるんだ。


私、何勘違いしてたんだろう

特に何が優れてるって訳でも無いのに

彼が私を選ぶわけ無いじゃない。


「…ます」


「え?」


「バディ、組みます

 ロイドさんと…」


理由は解らないけど、

彼は私を選んでくれたんだもの。

きっとそんな人この先も現れてくれない

恩に報いる為にも頑張っていい結果を残さなきゃ…!

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