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疑惑

翌日、私はキッチンでロイド先輩のお弁当を作っていた。

そしてその傍らには、何故かマリーベルちゃんが立っている。


「あの……マリーベル……様?何されてるんですか?」


「何してるはこっちのセリフよ!お兄様が食べるものに変な物を入れてないかどうか確認してるの!」


マリーベルちゃんは言いながら、物欲しげにタコ型のウィンナーを眺めている。


「マリーベル様、朝食は済まされましたか?」


「まだよ、起きてすぐ出て来たもの。」


「良ければお兄様のお弁当と同じものを食べて行きませんか?」


「いいの!?……じゃない、ふん、お兄様の口に合うかどうか試してあげる。」


私がマリーベルちゃんに朝食を振舞うと、彼女は興味深そうに皿を見る。


「ねえ、なんでこのウィンナーはタコの形なの!?」


言われてみれば、なぜだろう?考えたことが無かった。


「そうした方がかわいいから、ですかね……?」


マリーベルちゃんはタコ型のウィンナーを頬張ると幸せそうに微笑む。


か、かわいい……これはロイド先輩が甘やかしてしまうのも納得だ。


「はよー……あれ、マリーベル!?何でいるのかな!?」


「お兄様!この女が作った食べ物を毒見しに来たのです!」


「とか言って完食してるし……あんまり迷惑かけちゃ駄目だよ。」


ロイドさんは言いながらマリーベルちゃんの耳を軽くひっぱる。

この人、妙にボディータッチが多いと思ってたけど、妹さんをたしなめる癖が私にも出ていたのか。


「うわ!それ……弁当!?サービスの部分は冗談だって言ったろ。」


「いやでも……!時間ありましたし、私は全然作る気でいましたから!」


「あっそう、ラッキー……めっちゃ楽しみだわ。味はマリーベルのお墨付きみたいだし。」


ロイドさんは言いながらマリーベルちゃんを見てニヒルな笑みを浮かべる。


「む……!お兄様の意地悪……!

使用人、私にもこれから毎日お兄様と同じ弁当を作りなさい!毒見してあげりゅっ」


マリーベルちゃんが言い切る前にロイド先輩が彼女の頬をつねる。


「リコさん、美味しかったからこれからもお弁当作って下さい、だろ。」


「……リコさん、お弁当作って下さい。」


「ふふっ……勿論です。」


この兄弟、仲良しだなあ。


私はそんな事を考えながら笑みを漏らしたのだった。


ーーーーー


その日の放課後、

トウマは生徒会室に来るなり、

ロイドを睨みつける。


「ロイド君昨日のあれどういう事!?

何でリコと帰る家が同じなの!?」


俺はロイド君の肩を揺さぶりながら問いかける。


「リコが金に困ってるらしいからうちで雇う事にしたんだよ。

ほっとくと変なバイトに手出して悪い奴に騙されたりしそうだろ、あいつ。」


確かにそれはそう……


「でもロイド君の家にいるのもそれはそれで不安なんですけど……!

相談してくれたら俺が雇ってあげたのに……!」


俺達が話し合ってると、フレッド兄さんが生徒会室に入って来る。

久々に生徒会で見かけたな。

この人は一応俺の兄だが、昔から何を考えているのか思考が読めないところがあり不思議な人だ。


「やあ二人とも!ねえ、ちょっと部屋の外から聞こえて来ちゃったんだけど……エミリさんって今ロイド君が雇ってるの?何で?」


俺とロイド君は顔を見合わせる。

そんな事を気にするなんて、フレッド兄さんはリコの顔見知りなのだろうか?


「俺があげた宝石を無くしちゃったらしくて、それを弁償したいらしいんだけど、俺は別に気にしてないからリコに会ってちゃんと話したいんだよね。」


「あー無理無理、リコは弁償するって聞かないよあの感じ。

まあ200万なんてうちで働いてたらすぐ貯まるだろ。」


「ふーん……エミリさん、お金に困ってるんだ。」


フレッド兄さんは少しにやりと笑うと席に着いた。

なんか今、悪寒がしたような……


俺が生徒会の仕事を終えると、

「トウマ様!」と俺を呼ぶ声がする。


リコの声じゃないな…見ると、そこにはカレンが不安そうな顔で立っていた。


「どうかした?」


「その……お話したい事があるんです、一緒に来て下さいませんか?」



カレンに連れて来られた場所は、街にある質屋だった。


「これを」


促されるままガラスケースの中を見ると、そこには俺がリコに借した宝石とよく似た物が並んでいた。


「こちら以前リコが自慢していたのでよく覚えているんです。

トウマ様からの頂き物だとか、なんとか。それをたまたまここで見かけたものですから心配になって……

かなり珍しい色味ですし、恐らく同じ物だと思うのですが……」


カレンの言ってる事、妙だな。

あの宝石は借したものだからリコが貰ったと言って自慢するとは思えない。

……それにそもそも何であの宝石がこんな所に……。


「あの、私噂で聞いたのですが、最近リコはお金に困ってるらしくて……

だから……ネックレスを質に……」


「……あははははは!」


「な、何がおかしいのですか?」


「だって……!変だもん。リコがお金に困ってるのはこのネックレスを無くして俺に弁償しようとしてるからだよ。

そもそもこれが無くなって無かったら彼女も焦ってない。」


俺が言うとカレンは慌てた様子で

「いいえ!私聞きました……!

リコはずっと前から学費が払えなくて苦しいと言っていたんです!

きっとそれは嘘だわ、売り飛ばした後罪悪感が湧いてそう言ってるだけよ!」

と訴える。


「……まあ、正直俺からしたらどっちでもいいかな」


「は!?」


「ここに並んでるって事はもう買い取っていい品って事でしょ?

すみません、これ欲しいんですけど」


「ま、待って……!プレゼントした品を売り飛ばされたんですよ!?

どうして怒らないんですか!?」


そっちこそ何をそんなに熱くなっているんだろう?

どちらにしろカレンには関係無いのに。


「怒らないよ、もしリコが困ってたなら助けになれてよかったし…こうやってまた見つかったから良かったじゃない。」


「…!」


俺は銀行からお金を引き出してくると、宝石を買い戻す事に成功した。


良かった……!これでリコがロイド君の家で家政婦せずに済む!


「あ、ありがとうね教えてくれて!それじゃ!」


俺はカレンにそう別れを告げると足早にロイド君の家まで向かった。

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