ロイドの恩返し
私は図書室の戸締りを終えると、足早に生徒会室へと向かう。
トウマ様と共に出てきたロイド先輩は私を見つけるとにっこりと笑い歩み寄る。
「あ!リコ、昨日のことだけど……」
「よお、来たな。帰るかリコ!」
トウマ様が言い切る前に彼は私の腕を掴む。
「……えっ?何2人帰る約束してるの!?」
「おう、帰る家が同じだからさ。それじゃあまた明日会おうトウマ君!」
「ああちょっと!妙な誤解を招く様な事言わないでください!」
私はロイド先輩に手を引かれながら、
呆然と立ち尽くすトウマ様の顔を眺めていた。
ーーーー
私はロイド先輩の車で家に送って貰うと、
荷物を乗せてロイド先輩の家へ向かう。
ロイド先輩の家、どんな家なんだろう……
車が止まると、豪勢な屋敷が見えて私は驚愕する。
うわ……!予想はしてたけど大きな家!
「ありがとう、ここで降ろしてくれ」
ロイド先輩は運転手にそう言うと私に手を差し伸べ車から降ろす。
「俺、あっちの離れに住んでるから、ここには間違っても勝手に入らない事。」
ロイド先輩は言いながら歩き出す。
少しだけ移動すると、先程より少し小さな屋敷が建っているのが見える。
それでも私の住んでる家と比べるとかなり大きな家だ。
「こっちの棟に使用人の部屋があるからここに泊まること。
住み込みなのはリコだけだから好きなとこ使え。
風呂トイレは共同、でも風呂に関しては夜誰も使わないから安心しろ!
んで、あっちの廊下を渡ると俺の生活スペースね。」
案内されるまま廊下を抜けると、1人の少女がキョロキョロとしながら立っているのが見える。
「あ!お兄様お帰りなさいま…誰ですのその女」
「お兄様」とロイド様を呼ぶ姿…もしかして妹さんだろうか?
すっごく可愛い…お姫様みたい。
「やあマリーベル!1ヶ月前泊まり込みの使用人が辞めたろ?
彼女はその代理。」
「こんな若い女に後任が務まりますの!?絶対にお兄様をいやらしい目で見ますわよ!」
いやらしいって……
「あはは、マリーは心配性だね!
大丈夫だよ、このお姉さんはいい人だから。」
彼は普段からは想像できないくらいの穏やかな声で彼女に言い聞かせる。
わあ……ロイド先輩って意外と優しいお兄さんなんだな。
「さあ、そろそろ本宅に帰って明日の支度をする時間だろ?
気をつけて帰るんだよ。」
ロイド先輩はそう言うと妹さんの頬にキスをする。
マリーベルちゃんは嬉しそうに「はい!ご機嫌よう!」
と返事すると私を睨みながら屋敷を出た。
「ごめん、あの子、ここの合鍵持ってるから入れるんだよ。驚かせたな」
「い、いえ!可愛い妹さんですね」
「ああ…いかんせん親が忙しいもんで俺ばっかり相手してたらああなっちまった。いかんと思いつつ可愛いから甘やかしちゃうんだよな。」
ロイド先輩は伸びをしながら言う。
私にもあのくらい……までといかなくても
もう少し優しくしてくれていいのになー。
「あ、悪い!案内忘れてた。ここがキッチンと食堂、
こっちが寝室な。で、20時には仕事を終えていいから、
それ以降はこっちの棟には入って来るな。」
「どうしてですか?」
「夜彷徨う亡霊が出るから……」
「へっ」
「……というのは冗談で、
いくら使用人とはいえ同じ年頃の女子を夜遅くまで側に置いとくほど俺も非常識じゃないってこと。
あんたはもうちょっと警戒心待っとけよ。」
びっくりした……それもそうだよね、ロイド様の面子もあるだろうし……。
「じゃあ早速だけど、荷物置いたら着替えて来てもらおうか。
いやー楽しみだなー!リコのメイド姿。」
私は使用人用の部屋に戻ると、部屋にかけられたメイド服を手に取る。
こんなの初めて着るからちょっと緊張する……!
メイド服を着て出てくると、
ロイド先輩は「いいじゃん!」と声を上げる。
私は褒められたのが嬉しくてつい上機嫌になってしまった。
「私、何でもやりますよ!初仕事は何ですか!?膝枕!?」
「は!?いやあれは冗談で……!
マジでやる気だったの!?サービスの部分は冗談!
……間違っても夜、おやすみとか言いに来るなよ!困っちゃうから!」
「え……そうだったんですか?」
「でもまじか……抵抗ないんだ……。じゃあさ、普通に!命令とかじゃなく!
……膝枕、してもらってもいい?お願い。」
「は、はい!」
ロイド先輩はそう言って私をソファまで連れて行くと、静かに隣に座る。
「……本当にやってくれんの?」
少し顔を赤くしながらロイド先輩が尋ねる。
「だ、大丈夫です、やれます……!」
「無理してない?」
「して……ません。」
私の答えを聞くと、彼は私の膝の上で眠り始める。
「あー……めっちゃ疲れ取れる……しばらくこのまま寝かせてくれ。」
……改めて近くで見ると凄く綺麗な顔……まつ毛も長くて人形みたい。
私がロイド先輩の顔を見つめていると、彼は薄目を開け
「俺の美しさに見惚れていたか」
と意地悪に笑う。
「ちっ……違いますよ!」
本当に見とれていたとはとても言いにくい。
「あんたさ、どうせこの仕事以外にも何かやる気なんだろ?
何かいいの見つけた?」
「……とりあえず内職には応募しようかと」
「いいじゃん、とにかくコツコツやってきゃ200万なんて貯まるだろ。
再度忠告しておくが、変なバイトに手出すなよ。バニーちゃんも無し!
俺よりやらしい男に手出されても知らないからな。」
「誰も私なんか相手にしませんよ」
「するってば、するから言ってんの!そうじゃなかったら今の俺はどーなる?
下心なく純粋に膝枕を望んでるように見える訳?」
「それは……思ってません、けど」
改めてそう言われちゃうと複雑だな。
「あんた、可愛いんだからさ。もうちょっと色々警戒する事!
もしこれも嫌ならちゃんと嫌って言えよ。」
心配してくれてるのかな……?この人、急に優しくなるからたまに反応に困るのよね。
「……そうだ、それと……前の婚約者、もう忘れた?」
「あ、えーと……」
寧ろ前の張り紙の件でまた思い出して拗れてます……
「忘れてないのな。じゃあ俺が忘れさせてやる」
「えっ!?」
私が顔を真っ赤にして動揺する様を見てロイド先輩は可笑しそうに笑う。
「変な意味じゃなくて。
色んな楽しいとことか連れてって、沢山思い出作って沢山笑わせてやる。
だからあんなの早く忘れろ。」
……それって……何だか恋人みたい。
「何でそこまで……してくれるんですか?」
「何でだろ……助けてくれた恩返しがしたいし……
あんたの事嫌いじゃないから……一緒にいたいってのもある。」
ロイド先輩はあくび交じりに言う。
「恩返しなんて、大袈裟です」
「大袈裟じゃないの。俺、あんたがいなかったら学校辞めさせられてたんだぜ?……だから、あんたはもっと恩に着てろ、その内返すから……」
ロイド先輩は言い切ると、そのまま眠りについてしまった。
「義理堅い人だなあ……」




