バイト
ない……ない!
多分こっちに落ちて行った筈なんだけど……!
私が必死で探していると、誰かに肩を叩かれる。
振り返るとそこには、心配そうに私を見つめるカレンの姿があった。
「……あ……」
どうしよう……私、カレンの気持ち知ってたのにあんな写真を撮られちゃって……何て声をかけたらいいのかわからない……!
「カレン、私…!」
彼女は私を抱きしめると、少しだけ震えた声で
「大丈夫よ、解ってる…!きっと誤解なんだよね。
可哀想にリコ……!あんな中傷をされて……」
と言い放つ。
「……本当に分かってくれるの?」
「当たり前でしょ、私がリコの事を疑う訳ないじゃない。
……それより、何探してたの?」
私は少し躊躇いながら、先程起こったことをカレンに話した。
「まあ、なんて酷い事を……!
それで必死になって探していたのね。私も手伝うわ、一緒に探しましょ!」
カレンは暗くなるまで私とネックレスを探してくれたが、一向に見つからず……
「……だめだ……もう誰かに拾われちゃったのかも。」
私が涙目で溢すと、カレンは私の背中をさする。
「大丈夫、正直に伝えればきっとトウマ様もお怒りにならないわ。
そうだ、もし弁償するなら私がお金を貸してあげる!」
「だ、だめだよ!私の不注意で無くしたんだから、私が何とかしなきゃ……!」
私はぎゅっと土を握りしめ、情けなさから溢れる涙を必死で拭う。
とにかく、紛失した事をトウマ様に説明しなくては。
私は生徒会室の前まで来ると、トウマ様が出てくるのを待つ。
トウマ様の茶髪が扉から覗くと、私は彼の名前を呼んだ。
彼は煌めく様な笑顔で振り返ると、手を振りながらこちらに歩いて来た。
「リコ!会いに来てくれたんだ!……あれ。」
トウマ様は何かに気付くと、私の目元を撫でる。
「赤い……もしかして泣いてた?」
「あっ……いえあの……夕日で赤く見えるのかと……思います。
それよりトウマ様、私……」
言いかけて言葉に詰まる。
……嫌われたくない。でも、言わないと……!
「トウマ様!私……トウマ様から頂いたネックレスを無くしてしまって……」
トウマ様は少し驚いたように目を見開く。
「もしかして誰かに何かされた?服も汚れてるし……」
「ちっ、違います、私の不注意で……ごめんなさい!
絶対絶対弁償しますから!」
私はそう言って深く頭を下げると、急いでその場を走り去った。
「あっ……リコ待って!……行っちゃった。」
「トウマ、生徒会室の前で何騒いでんだ?」
「ロイド君。あ、いや……リコが俺があげた宝石無くしちゃったらしくて、弁償しますって言って……逃げちゃった。
200万なんてどうやって用意する気だろ?別に気にしなくていいのに。」
「……ほう」
ーーーー
翌日、私は求人情報を片っ端から漁っていた。
このくらいの額じゃ絶対に返せない……!
もっと好条件のとこじゃないと!
「何あれ?」
「お金が無いんじゃない?
平民って大変ねー」
……ここで作業していると目立ってしまう、図書室に移動しよう。
私が教室を出ようとすると、ロイド先輩と偶然鉢合わせる。
「わっ……びっくりした。」
「リコ、丁度良かった!面借せよ」
私は彼に2階の空き教室まで連れていかれると「まあ座れ」と促される。
「ちょっと昨日聞いちゃったんだけど!宝石、無くしたんだって?
……ていうかそもそもよく受け取ったよな。何、もしかして好きなの?」
「違いますよ!あれはそう、友人の証として借りただけ……
そ、それを無くしたんです」
ロイド先輩はそれを聞くと安堵したように笑う。
「なーんだ、そういう感じ。昨日トウマが心配してたぜ?
別に気にしなくていいのにって!もう一回話して来いよ。
無理して弁償しなくて済むと思うぜ。」
「それじゃ駄目なんです…!
あんな高価な物、無くして終わりなんて申し訳無くて。」
私が俯くとロイド先輩は私の顔を覗き込みながら
「そんな事言ったってどうすんだよ?200万なんて金平民のあんたがどうやって用意すんの?
まさか変なとこで働こうとしてないだろうな?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか!」
ロイド先輩は私の抱えていた求人チラシの中から派手なチラシを一枚取り出すと
「なになにー?バニーちゃん大募集!可愛いお洋服でお酒を運ぶお仕事……
へえー、こんな仕事したいんだ。始めたらトウマと一緒に遊びに行ってやるよ。」
と言ってニヤリと笑う。
「そっ……それは適当に掴んだ中に入ってて……!
あ、学生OK!?しかも凄く時給がいい……」
「ばか!本当にやろうとしてんじゃねえよ!あんたはこういうとこ向かない、
客に言い寄られたら対処できないだろ。」
ロイド先輩はそう言いながら私のおでこを軽くつつく。
「でも……短期で稼ごうって思うと中々働き口が見つからなくて……」
ロイドさんは怪訝な顔で
「だから短期で稼ごうって考えがまず……」
と言いかけた後、
「じゃあ俺が雇ってやろうか」
と言って意地悪に笑う。
「えっ!?」
「住み込みで使用人生活!日給4万でどうよ?」
日給4万……!?そんな好条件なら何かと掛け持ちしたらすぐに返せるかも!
「で、でもいいんですか?
そんな値段で雇って頂いて……!私家事が特別上手いという訳ではないのですが……」
「勿論無条件で高い訳じゃないぜ?
ほら、サービス的な物を要求するから」
「サービス……?」
私が尋ねると、彼は頬杖を付きながらニヤつき
「まず夜寝る前に『おやすみなさいロイド様♡』と言うこと、
俺が膝枕を要求したらすぐに実行し朝弁当を作って渡すこと。
これらのサービスを全てこなしてもらおうか」
と言う。
「なっ……!?」
「嫌だろ?でも好条件で釣ってこういうことさせる職場結構あるらしいぜ。
それだけ稼ぐのは甘くねえってこと!要するにだな、やましい考えの奴なんていっぱいいんだから、足元見られる前に意地張らずトウマと話し合えって。
それじゃ、俺もう行くわ。」
ロイド先輩が席を立とうとすると、私はロイド先輩の服の裾を掴む。
今、これより好条件のバイトなんて絶対見つからない……!
ちょっと恥ずかしいのを我慢すればいいだけのことよ!
「やります!やらせて下さい!」
「えっ、本当にやるの!?」
ロイド先輩は驚いた顔で私を見る。
「私……トウマ様とは健全な関係でいたいから……!どうしても宝石、返したいんです!お願いします!」
私が言うと、ロイド先輩はため息を吐いた後、
「あー……まあ、丁度使用人が最近辞めて探してはいたし、あんたは俺の恩人だしな……わかった、そこまで言うなら雇ってやる!」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃ、委員会の仕事終わったら俺に会いに来い。
早速今日からこき使ってやる!」




