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紛失

ルネに忠告された翌日、リコは大勢に見られながら図書室への道を歩いていた。


「なあ、あの子じゃねえの?」


「へー……大人しそうなのに……そうなんだ。

俺も相手してくれるかな?」


「王族じゃないと無理だろ。」


私が廊下を通ると、下世話なささやきが耳に入って来る。

あんな大々的にゴシップ記事を晒されたのだ、目立ちもするか。


「ちょっと止まって!リコ・エミリさんってあなた?」


私は廊下で上級生らしき生徒達に声を掛けられる。


「は、はい。そうですけど…」


「ちょっと来てもらいましょうか」


「え!?いやでも私図書委員の仕事が……!」

私の叫びを無視して、彼女達は私を無視やりどこかへ引っ張って行った。


……


連れてこられたのは屋上で、彼女達は私を囲み鬼のような剣幕で睨んでいる。


「なあにこの地味な女……?本当にこんなのをトウマ様が相手にされてますの?」


彼女達はじりじりと近寄って来て、背中を押されれば唇がくっつくんじゃないかと言うぐらい距離まで接近して私を睨む。


と、近い近い……!


「……あなた、トウマ様を誑かしてたって本当?まさか平民の癖にあの方に恋してた訳じゃないでしょうね?」


「ち、違うんです!私とトウマ様は友人で……!」


「友人同士が誰もいない場所で密会して口づけまでしていたって言うんですの?」


駄目だ、言い返したいが、ここで反論したら彼の女性恐怖症を公言する事になってしまう……!


「経緯は話せませんが……誤解なんです!信じて下さい!」


私が訴えると、上級生は私の首元をじっと見る。


「ねえこの子、生意気にも宝石を身に着けているわ……

しかもこれ、確か貴重な石じゃない!」


「あっ!それは……!」


少女たちの一人が私の首からチェーンを外そうとするので、私は必死に抵抗した。


「やめて!これは大事な物なんです!」


抵抗虚しく私は彼女達に抑えられると、ネックレスを奪われてしまった。


「そ、それ……!トウマ様から一時的に借りてて……!」


私の訴えを聞くと、彼女達は少し後ろを向いてひそひそと話した後、

「あーら、じゃあ紛失したって知られたら貴方どうなっちゃうのかしらねえ?」

と言いながら振り返る。


紛失!?そんな事になったら愛想を尽かされるに決まっている!


「何考えてるんですか!お願いやめて……!」


私の願いも虚しく、女子生徒は屋上から思いきりネックレスを投げ捨ててしまった。


「あっ……!」


「あははははは!いい気味!調子に乗ってるからよ!」


「もう二度とトウマ様に近付かないで……いや、無理ですわね。

借りたものを無くすような女、トウマ様もきっと呆れてしまうでしょうから。」


少女たちはそう言い捨てて屋上を後にする。

私はあまりの出来事に膝から崩れ落ちてしまった。


どうしよう、高価な物だったのに……

弁償……いや、私にそんなお金はない。


誰かから借りたって返せないし……!

そ、そうだ!でもまだ燃やされた訳でもないのだ、下に落ちてるかもしれない…!


探しに……行かなきゃ……!


私は震える足を何とか立たせながら

ネックレスが投げられた方向を目指して走った。


ーーーーーー


屋上を後にした上級生達は、上機嫌に笑いながら廊下を歩いている。


「ねえ、あんな高価そうな宝石本当に投げ捨てたの?」


「そんな訳ないじゃない!あれは私が身に着けていた安物よ。

本物はこっち!仮にもトウマ様の所有物なんだから、ぞんざいに扱う訳無いじゃない!」


「そうよね、びっくりしちゃった。」


「ねえ!それ、ごみ箱に捨てられてたってトウマ様に報告しない?」


「最高!貴方って天才?」


彼女達が無邪気に話していると、そこにカレンがすれ違い足を止める。


「……先輩方、少々そちらのネックレスを拝見してもよろしいでしょうか」


「あ……か、カレン嬢…!どうぞー……?」


上級生たちはカレンの凛とした表情に気圧されて宝石をカレンに渡す。


「これ……私の友人が付けていた物にそっくりだわ……!どこでこれを?」


「あ……落ちてたから拾ったのよ?ねえ?」


女子生徒達は震えた声で「そうそう」と呟いている。


「……そうですか、それでは私が本人に返しておきますね。」


「は、はーい!よろしくお願いしますー!」


女子生徒は引き攣った笑みで足早にその場を去った。


「……いいもの貰っちゃった。」


カレンは宝石を眺めながらニヤリと笑った後、

下の階へ走っていくリコを見つけ、

ゆっくりと宝石をポケットの中に入れた。

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