違和感
リコとロイドがバディを組んでから数日、トウマは生徒会室で頭を抱えていた。
リコが他の男性と自発的にバディを組むだなんて、全く想像していたかった。
しかも相手はあのロイド君、彼はスランプに陥る前、その端正な顔立ちから非常に多くの女子から人気を集めていた。
その上本人も結構な女好きで中々手が早いとも聞く。
勿論リコが「最強の聖女」である以上他に先を越されたくないのもそうだが……あの子の事だ、どうせ「私なんか相手にされない」と油断しているに違いない。
手を出されていないといいのだが……。
「トウマ、なんかあった?計算合わないの?」
金髪の書記「エリック」が尋ねる。
「バディ組もうと思ってた子が他と組んじゃって……
もしかしたら手出されちゃったりしないかなとかをずっと考えてた。」
「何だよそんな事?
どうせ能力試験までの臨時だろ、終わったら解散、何も起こりやしないよ。」
「……組んだのがロイド君でも?」
エリックはそれを聞くとため息を吐き
「それは……食われないにしても女が惚れる可能性ありだな、ご愁傷様。」
と言いながら首を振った。
「ああ……やめて、そんなの考えたくない!」
「なになに、第6王子様もしかしてそのバディ組みたかった子って
気になる女子だったりしたの…?」
「えっ……いや違うよ!心配してたの、心配……!
友達なら気にするでしょ!?」
「へー、ふーん……友達ねえ」
「最強の聖女の事もそうだけど……変な噂流すなよ、面倒な事になるんだから。」
俺が釘を刺すと、エリックは「分かってるってー」
と言いながらヘラヘラと笑っていた。
「まあ、その程度で凹むなよ!またチャンスがあるさ」
……別に、ロイド君に先を越されたから落ち込んでいる訳じゃない。
俺が落ち込んでいるのは……「自分が無意識に上から目線でリコを見ていた」事に気付いたからだった。
「リコは男性が苦手だから、自分が声を掛けるまで誰も選ばないし選ばれない」
……心のどこかでそんな慢心をしながらリコと関わっていた自分が、情けなくて嫌いだ。
今日、生徒会が終わったら彼女に会いに行ってみようかな。
ーーーーーーー
夕方、リコは上機嫌な様子で廊下を歩いていた。
最近、ロイド先輩との訓練が続き最近図書室に顔を出せていなかったので、
久しぶりに私は図書室に足を向けていた。
この静けさと本の匂いが私を癒してくれる、やはりここは私のオアシスだ。
「リコ!」
私が図書室の匂いを堪能していると、図書室の奥から現れたトウマ様が私を呼ぶ。
「トウマ様!?」
「よかった、会えて……その、ロイド君との様子はどう?手とか出されてない?」
なんだ、心配して会いに来てくれたのかな?
「心配しなくてもロイド先輩とは上手くやってますよ!
彼思ってたより優しくていい人なんです!」
トウマ様は呆然と私を見て固まっている。
私、何かまずい事を言っただろうか?
「これは友達としての忠告だけど!
ロイド君って女の子好きだから油断してると危ないよ!
なるべく2人きりにならない方がいいし、迫って来たら逃げること!」
ロイド先輩が?全然そんな風には見えないが……
「あはは、ロイド先輩が私なんかに興味を持つ訳ないですよ、
考えすぎじゃないですか?」
私が言うと彼は深いため息を吐く。
「あー……やっぱり言ってる……
リコって異性苦手な癖に警戒心ないんだもん」
「トウマ様が心配しすぎなんですよ、
わざわざ私を狙う殿方なんていませんから。」
私が笑うと、トウマ様は不服そうに顔を歪める
…しかし、私の事をそんなに心配してくれていたなんて少し嬉しい。
「トウマ様はその後どうですか?バディの方、見つかりました?」
尋ねると、図書室の扉が開き絵画に出てくる様な美しい少女が顔を覗かせる。
「……カレン……」
「あ、ごめんね!トウマ様が図書室に向かったって聞いたから覗いてみたのだけど……」
どうしてカレンがトウマ様を探していたんだろう?
「彼女、能力試験の時だけバディを組んで貰える事になったんだ!」
トウマ様が明るく言い放つ。
「でも、カレンのバディはルネ様じゃ?」
「ルネ様、試験を受けるのに聖女は要らないって意地張っちゃって……だから私1人であぶれてたの。」
それでトウマ様とバディを……
「あ……頑張ってね!カレン、トウマ様に用事があるんじゃないの?」
「そうなんです、ちょっと試験について相談があって……トウマ様の祈りが上手くいかない件なんですけど……
何か作戦を立てないと私たち補習になってしまいますわ。」
トウマ様、やはりまだ強化魔法が苦手なんだ。
「それだったら、魔法を放った後に強化するのがいいと思う!
この本と…この本に既にある魔法の効力を強める方法が書いてあるから見てみて。」
私はカレンにそう言って本を渡す。
「まあ、ありがとう!トウマ様、試してみたいので魔術訓練場まで来れますか?」
「わかった、リコ!また今度ね!」
トウマ様はそう言って図書室を後にする。
『知ってるか?ルネ様ってカレン嬢に一目惚れしたらしいぜ。』
刹那、半年前学校を騒がせた噂を思い出す。
……何で、胸がざわついてるんだろう?変なの……。
ーーーー
夕方、戸締りを済ませると
私は帰宅する為に校門へ向かっていた。
すると女子生徒の悲痛な叫びが聞こえて来る。
「ねえ聞きました!?
トウマ様に好きな女性がいるんですって!」
私は思わず足を止め、固まってしまう。
「貴族の出で顔も麗しく、才色兼備のご令嬢なんだとか……!」
それって――カレンのことじゃ?
……うん、まあそうだよね、別に不思議じゃないよ。
あれだけ美人で上品で性格も良かったら好かれるに決まってる。
トウマ様ぐらい素敵な人だったらあのくらい綺麗な子に惹かれるよね。
トウマ様と私は「友達」、それ以上でも以下でもない。
なのに、一瞬思ってしまった。
「トウマ様は女性が苦手だから、女性を好きになるはずない。何かの間違いだ」って。
トウマ様のコンプレックスを知っておきながらそれを材料に安心しようとするなんて……
―――最低。




