4.試験と友人
「レスタくん、そろそろ試験が始まる時間では無いですか…?」
「…………」
「れ…レスタく〜ん………」
「……?……なんですか?先生」
「よ、良かった……また完膚なきまでに無視される流れかと………もうそろそろ試験が始まると思うので……お知らせに……」
レスタが塔に籠もって読書を始めて6日が経った
籠もったと言っても食事を摂りに食堂へは行っていたが、それ以外の時間はほとんどサクヤと共に過ごしていた
そして今日は、ついに初めての試験の日だった
「試験って何か必要なものありましたっけ?」
「えぇと……剣や杖が必要な人は持参のはずですが、それ以外は手ぶらで大丈夫だったはずです…」
「分かりました……はあ、なんだか少々面倒くさいですね、試験。まだ本を読んでいたいのに……」
「生徒さん達の実力を測る大事な事ですから……」
「分かっています、でも、はぁ〜………」
試験では剣術、魔法の実技を行う
同学年が集まる中なので他の生徒にとっては他科目の生徒をよく知るきっかけになるのだが…
レスタは属性測定時に周りの魔力を見ていた
しかしそこにレスタの脅威となる者はおらず、わざわざ塔から出て自分より弱者の中で実技を行わなければならないというのは実に面倒なものだった
「……では、そんなレスタくんにはご褒美を用意しましょう」
サクヤはゴソゴソと白衣のポケットを弄る
中から一つの黒い石を取り出した
「ふふ…これが何かレスタくんには分かりますか?」
「何って……」
黒い石をよく見ると所々に黄色い光沢が見えた
「…まさかそれって…ルチルクォーツですか!?」
「はい、この間君に見せたものより少し小さなものですけどね……試験を無事終えたら、レスタくんも少し錬金術に触れさせてあげましょう」
曇っていたレスタな表情はみるみる明るくなっていった
「本当ですか!?で、でも…僕まだ言われた範囲の暗記終わってないですけど……」
「レスタくん、とても寝る間も惜しんで頑張っていますよね……私、それがとても嬉しいんです、私にできるのは錬金術だけなので…これでやる気が上がるなら少しくらい早くやってみても良いと思ったんです…………やる気は出ましたか?」
寝る間を惜しんでたのは錬金術の為というよりは疲労が心地よかったからだけど……
まさかこんなに早く錬金術をやらせてもらえるなんて!
「出ました!僕、ちゃんと考査やり切ってきます!」
「無理はし過ぎないようにして下さいね……あ、私も後から見学に行きますので……」
「はい、では行ってきます!」
レスタは先程とは打って変わりスキップしそうな勢いで塔を後にした
試験を受ける新入生達は屋外にある闘技場のような場に集合させられていた
観客席には他学年の生徒や教師陣が座っており、まるで武闘大会でも開催されるかのような熱気に包まれていた
……やはり、あまり見込みのありそうな人は居ませんね
レスタが周りを観察していると見知った顔の青年が近づいてきた
「クラウン君おはよう、ついに考査の日だね」
「おはようございます、ハロルド君。なんだか久しぶりな感じがしますね」
塔に籠もったこの数日間レスタはハロルドと顔を合わせる機会が減っていた
食堂へ持ち帰り用のランチを頼んで待っている際にたまたま会えば会話をする程度だった
それはレスタにとってサクヤ以外で唯一の他人との交流だった
「……クラウン君、なんだか嬉しそうだね、あんなに試験が憂鬱だって言っていたのに…」
「そうですか?……ふふ、試験自体は憂鬱ですが……実は試験が終わったらご褒美を貰えることになったんです」
「へぇ〜それって一体___」
「新入生諸君!ついにこの日がやって来た!」
ハロルドが言いかけると闘技場全体に大きな声が響き渡った
「あれは…学園長?」
観客席よりもさらに上にある高台に1つの人影が見えた
「私はこの学園の学園長、ラインハルト・プリマヴェーラだ!新入生の諸君とは入学式で会ったきりだが……昨年よりもたくさんの者が残っていて実に嬉しい限りだ」
プリマヴェーラ学園は高水準の教育に追いつけずに最初の1週間で退学を決意するものも多い
毎年数百人が入学するも試験までで数十人まで少なくなるという……しかし、今年の新入生は100人以上が残っていた
「そして…君たち有望な生徒達の為に、今年も教師陣…そして腕の確かな先輩生徒達が君たちの相手になってくれる!思う存分に戦うといい!」
観客席から歓声が上がる
「先輩か……教師陣は見かけているけどどんな先輩達か分からないのは少し不安だね……って、クラウン君?」
「……教師陣……」
教師陣とはつまり、サクヤがレスタの対戦相手になる可能性もあるということだ
…まさかこんなところでサクヤ先生と戦う機会があるかもなんて……
もしかしたら学園長も出るのでしょうか?もし僕と当たらなくても戦い方を知れるだけでも充分に…………ふ、ふふふ…………
「く、クラウン君?なんだか悪い顔になっているけれど……」
「…はっ、すみません、思わずよだれが……
前言撤回です、この試験…ものすごく楽しみになりました!」
「ああ……試験、頑張ろうね…」
「新入生は教員の指示に従い一対一での対戦を行ってもらう、何か質問がある者はいるか!」
シンと静まり返った中で一人の手が上がった
「はい!学園長!」
「……何か気になることがあったかな?レスタ・クラウン」
手を挙げたのがレスタだと気がつくと新入生からも観客席からも一気に視線が集まる
「対戦相手は教師陣か先輩との事ですが……指名することはできますか?」
「指名はできない、出場する者は決まっているが対戦開始までお互いに相手は知らせていないんだ、質問は以上か?」
「そうですか……はい、以上です」
レスタはしゅんと落ち込んだ
隣でハロルドが慰めている姿を見て周りの生徒はざわざわとし始める
「勇者の相手に指名されるなんて死んでも御免だな…」
「ハロルド王子と本当に友人だったのね……」
パン!と学園長が手を叩いた
「これより、プリマヴェーラ学園新入生による対戦試験を開始する!最初の生徒は準備するように!」
「まさかハロルド君が一番手とは、頑張ってくださいね」
「運が良いのか悪いのか……まあ、やれるだけやってみるさ」
控室から広場へと繋がる門には鉄格子の門がある
まるで一度入ったら逃げることなど出来ないように
「……ハロルド君、緊張していますか?」
「……俺が緊張?してないよ」
ハロルドは内心恐れていた
一番手……いつも4番手なハロルドにとって誰よりも前に出て動くのは不慣れなことだった
身分が関係ないこの学園で、教師と全校生徒が集まるこの場で一番手……失敗しても四男だから仕方ないという免罪符を得られないことを恐れていたのだ
「分かります、僕ももしサクヤ先生や学園長と戦えるかも…って考えてるだけで…身体の震えが止まりません…♪」
「僕のはクラウン君とは少し違うけれどね……」
ハロルドはぐっと拳を握ると意を決してレスタの目を見る
「クラウン君はさっき…ご褒美があるから試験が楽しみって言っていたよね」
「?ええ、それがどうかしました?」
「……俺にも、ご褒美をくれないかな………クラウン君に頼みたいことがあるんだ」
少しだけ震える声で、表情だけはいつもの穏やかな顔を演じようとして、ハロルドはレスタの表情を伺う
「頼み……ですか?別にご褒美でなくとも……」
「そういう約束があれば俺もやる気が出るかなと思ってさ、良い成績を出せたら聞いてほしいんだ」
レスタはきょとんとした顔をした後、ふっと柔らかい笑みを浮かべた
「分かりました、どんな頼みか分かりませんけど……ちゃんと聞くので、試験頑張ってくださいね」
ハロルドの中で熱い決意が燃え上がっていた
レスタのその言葉を胸に刻み込み熱意を滾らせる
「ありがとう、クラウン君……じゃあ、行ってくるよ」
ギィ…と鈍い金属音を立てながら鉄格子の門が上がっていく
ハロルドが広場に出ていくとまた鉄格子は下がり出入りが出来ないようになる
レスタはハロルドを見送ると閉まった門へ近づき1番近い場所で対戦を観ることにした
「頼みって何でしょうか……きつい事なら嬉しいですね……♪」
「準備が出来たようなので、まもなく試合を開始します!実況解説は私、風属性三年部のマドンナ!リシュテアーナ・ジュエラルことリーシュちゃんが担当させていただきまーす!」
ワッと観客席が沸き上がる、各所で男子生徒によるリシュテアーナへの愛の叫びが飛び交っていた
「はいはーい!皆ありがと〜!さて…じゃあまずは第一試合はこの人だー!」
観客の視線が地上の2人に向かう
「フランベルク王家の第四王子にして炎と風魔法の使い手!甘いマスクも持ちながら時には燃え上がるように熱く、時には風のように飄々としたその振る舞いに魅了された女子生徒は多数!そんな彼の名は〜……ハロルド・フランベルク〜!」
ワァァと観客席から歓声が上がる、殆どが黄色い声援だ
「まるで本当の武闘大会みたいですね、解説の人の気合がすごい…」
「対戦相手は〜……男子生徒から圧倒的な人気を誇る美人教師!しなやかな剣技と培われた水魔法で相手を魅了する水も滴る良い女、水属性担当の〜…ルルーナ・レイヴィッチ教諭だ〜!」
今度は野太い歓声が上がる、観客席の熱気が下にいるレスタにもびりびりと伝わってきた
「水属性の教師……魔法の相性は悪そうですけど、ハロルド君より弱そうですね」
レスタは魔力感知でルルーナな魔力を測ろうとした
しかし魔力感知は発動しなかった
「……?邪魔が入らないように結界でも張ってあるんでしょうか……」
レスタは代わりに手のひらで雷魔法を発動させようとした
パチパチと手のひらで電気が弾けるが、その様子に違和感を覚える
ぺたぺたと壁に触れてみるがおかしなところはなく、結界が貼ってある気配も無かった
「……………」
「それでは……試合開始ッ!」
「っふぅ……ふぅ……」
「おや、ここまでかい?王子って言ってもまだまだ子供だねぇ」
「ふ…っ!」
試合開始から数分が経った
ハロルドは炎と風を付与した剣をルルーナへと打ち込むが軽々とよけられ、さらには何度も鎮火されてしまう
ルルーナは見えないほど薄い水の刃でハロルドにじわじわと傷を付けていく
「あくまで試験…と言っても、戦闘不能か降参しないとこの戦いは終わらないぜ、少年」
「……っ」
(くそ…っ何故だ!思うように力が出ない……!)
「おぉーっと!ハロルド王子が劣勢になってきました!やはり新入生ではプリマヴェーラ学園が誇る教師に太刀打ちできないのでしょうか!」
この試験では剣技、魔法、そして状況判断による機転などから判断される
負けたとしても悪い評価がされると言うわけではないのでほとんどの生徒はある程度持ち技を繰り出せば降参するのだが……
ハロルドは違った
「……はぁっ!」
(教師に勝てるとは思っていなかったが……ここまで差があるものなのか…!?)
「ハロルド王子、攻撃が投げやりになってきました!すでに主力の魔法は躱されてしまった為体力が残り僅かなのでしょうか!?」
「……そろそろ潮時かな?」
次の瞬間ハロルドの視界からルルーナが消えた……瞬きをすると、ルルーナが真横に立っていることに気がつく
「中々見どころがあるよ、でも今回は私の勝ちだ」
首筋にそっと手が当てられ魔法が発動する前の感覚がした
ハロルドは覚悟して目を瞑った
『試験頑張ってくださいね』
ハロルドの脳内には先程の会話がよぎった
「な…っ!」
ハロルドは自分でも意識しない内にルルーナの手首を強く掴んでいた
首から剥がしたその手に思いきり火の魔法を発動させる
ルルーナの左半身が大きく燃え上がった
「あ゛っ……!?」
「……約束……してて…良かっ……」
ハロルドの視界がぐらりと傾く
ルルーナの手首を掴んだままその場で膝から崩れ落ちた
数秒後ルルーナを包んだ炎がふっと消える、ハロルドが意識を手放したのだ
ルルーナもその場で倒れる、その体は半分が酷い火傷を負っていた
その姿に観客はどよめき、所々からは悲鳴が上がっている
「…っる、ルルーナ・レイヴィッチ教諭、戦闘不能により…勝者、ハロルド・フランベルク!異例の…新入生が教師に勝利しました!…医療班はすぐ2人の救護をお願いします!」
門の近くで待機していた救護班が二人に駆け寄る
すぐに担架に乗せられ開場から運び出された
「ルルーナ先生…酷いケガだったよな、こんな試合見たことないぜ……」
「まさか先生が負けるなんて……」
「……さ〜て、波乱の幕開けとなりましたが、皆さん盛り上がってますか〜!?まだまだ試合は始まったばかりですよ!さあ、続いて第二試合は………」
レスタはハロルドの対戦を見届けた後医務室へと向かっていた
「ハロルド君……」
ハロルドは目を瞑ったまま魘されていた
息が荒く顔色も悪い、魔力切れにしては様子がおかしいことに気が付きレスタはハロルドの体を観察する
「……?」
ハロルドの裾から見える肌の色が変わっていることに気がついた
めくると、足首からふくらはぎにかけて皮膚が青紫色に変色している
看護師が慌てて近寄ってくる
「きゃっなにこれ…!?」
「落ち着いて下さい、どうやら…毒物のようです、誰か神聖魔法を使える方はいますか?」
「こ、この場にはいません……!聖水ならばありますが、これ程広がっているとなると治すのは……」
「私が使えますわ」
医務室の入り口に聖女、パルティーナ・ルフォレが立っていた
コツコツとヒールを響かせハロルドの側に立ち診察を始める
「聖女様…!」
「酷い……ですが、なんとかなりそうです、魔法を発動させるので皆様は少し離れていてくださいませ」
パルティーナはその場で膝をつき両手を合わせて祈りの詠唱を始める
レスタはその様子をじっと眺めた
……何故毒が?確かハロルド君の対戦相手は水魔法を使っていたはず……
それに…ハロルド君の戦闘は初めて見ましたが、所作からしてもっと戦えそうなはず……
あの程度の動きに翻弄されていたのは何か違和感が……
徐々にハロルドの周りに白い魔法陣が浮かび上がっていく
「……神の慈悲を与え給え……ラ・キュア!」
ふわっと心地良い風がハロルドを包み込む
変色していた肌の色がみるみる元に戻っていった
しかし依然として息は荒く苦しそうに呻いている
「流石聖女様!あんなに酷かった傷が一瞬で……」
「い、いえ…私は……」
レスタはその様子を見て確信した
……彼女の魔法は失敗したようですね
ラ・キュアは上級魔法……前に師匠が使った時は致命傷が一瞬で治っていましたし…
それなのにハロルド君はまだ毒に侵されている、ということはやはり……
「お嬢さんはハロルド君に回復魔法をかけ続けてください、僕は少し出てきます」
「勇者様?あれ、もういない!?」
ざわざわとした観客席を通り抜け、レスタは一人で学園長の元へと向かっていた
すると脇道から狼の青年が出てきてレスタの前に立ちはだかる
「おいおい、こんな時に何処へ行こうとしてんだ?勇者サマよぉ……」
レスタは横を抜けて通り過ぎる
「お、おいっ!無視してんじゃねえ!」
男がレスタの肩を掴もうとするとひょいっと避けられた
男はレスタを追い越し前に立ちはだかる
「……なんですか?急いでいるのでどいてくれませんか?」
「はっ……ガキが…調子に乗りやがっ……!?」
レスタは彼……狼の青年の鳩尾に拳を打ち込んだ
青年は白目を剥いて泡を吹きながらその場で倒れる
レスタはその青年には目もくれず学園長の元へと向かった
「学園長!」
「……クラウン君?どうしたんだい、君もここから試合を観たくなった?」
「そんなんじゃありません、非常事態です、この闘技場のどこかから魔法の弱体化、または無効化の魔法がかけられています」
「何っ!?……君を疑う訳では無いが、一体どうしてそう思ったんだい?」
「僕の魔法がちゃんと発動しないのが1番の理由ですが……先程の試合でハロルド君は実力を発揮できていませんでした、そして何故か毒を受け、それを治療しようとした女性の神聖魔法がうまく発動していませんでした、悪意があるかはわかりませんが…いずれにせよ良い状況では無いと思います」
話を聞いた校長は自分も魔法を発動させようとする、しかし何も起こらなかった
「本当に……よく気が付いたね、しかし阻害魔法か……犯人に心当たりはあるかい?」
「いいえ、ですが……」
レスタは手のひらに小さな雷を発生させた
「地上にいた時はあまり使えなかったんですが、ここまで登ると使えるようになったんです、もしかしたら術者が地上にいるのかも……」
「ふむ……残念だが、この状況下では試合を中断するしかないか……今年の新入生には悪いが……」
「えっ」
そ、そんな……試験が中止されたら…ご褒美が…!
それに、先生と戦えるかもしれないせっかくの機会なのに!
「待って下さい!試験は中止しないで下さい!」
「しかし……」
「ピンポンパンポーン♪新入生のレスタ・クラウン、レスタ・クラウン、会場まで来て下さ〜い!来ない場合は失格になってしまいますよ〜!」
アナウンスが響き渡った、どうやらレスタの番が回ってきたようだ
「せめて、僕の試合だけでもやらせてください!その後なら中止しても構いませんので!」
「だが……魔法が使えないとなると審査もできな…」
「使えないとは一言も言っていません、僕を誰だと思っているんですか」
レスタがスッと横に手を伸ばすと何もない所から突如白い剣が浮かび上がった
「心配には及びません。むしろこれくらいのハンデがあったほうが、僕も楽しめるというものですよ」
力の制限がかかった中必死に全力を出すも、圧倒的な力を前にしてボロボロにされるまで追い詰められて敗北するなんて……ああ……考えただけでよだれが……
学園長はその剣を見て息を呑む
学園長ですらまともに魔法を発動できないこの空間で、雷を発生させるどころか魔法を塊になるまで圧縮した剣を生み出したのだ
(雷の剣…か?この子は簡単にやってのけるが、こんなの……神話級の代物じゃ……)
「……あ、そういえば、学園長先生は僕の対戦相手ですか?」
レスタはその白い剣をパッと消し、きらきらした瞳で学園長を見上げる
「い、いや……私は試合には参加しないよ」
「そうですか……では、サクヤ先生とか!?」
「サクヤ先生も参加しない…というか彼はこんな騒がしい場に来ていないんじゃないか?まあ、とにかく……」
学園長はため息をつきながら髪をかき上げる
「君が私の価値観で測ってはいけないということはもう充分分かった、君が試合中にこちらで阻害魔法について探るが……君より後の試合は中止だ、それと、相手を殺すな、いいか?」
学園長は僕をなんだと思っているのか
いくら弱い人を相手にしたとしても僕だって手加減くらい出来……出来る、うん
「殺しませんよ、殺されるのはありですけど……
あ、そうだ。他の方は知りませんけど、ハロルド君はもっと戦える子だと思うのでちゃんと審査し直してあげてくださいね」
レスタはそう言うと、そのまま学園長が先程話していた高台へと乗る
「クラウン君?」
「こっちのほうが早いのでここから失礼しますね」
レスタはそのまま高台から飛び降りた
学園長が驚いて下を見るとふわふわと飛びながらレスタは地上へ下降していた
下の観客席からは歓声が上がる
「勇者様だ!灰の勇者様が空から飛んできたぞ!」
「あんな子供が勇者…!?」
司会も負けじと声を張る
「レスタ・クラウンが空からやってきました!失格かと思いきやまさかの登場だー!」
ローブをなびかせながらまるで蝶のようにふわふわと舞い降りるその姿に生徒たちは釘付けになる
音もなく着地するとレスタは観客席に向かってぺこりと丁寧にお辞儀をした
「お待たせして申し訳ありません、レスタ・クラウン、ただいま参上しました」
ワアッと大きな歓声が上がった
生徒の中にはレスタが魔物を討伐したおかげで難を逃れた地域出身の者も多い
各所から感謝の言葉がレスタへ投げかけられた
レスタが笑顔で手を振っているとアナウンスが入る
「では32試合目の生徒を紹介させていただきます!まずは今、衝撃的な登場をしてくれた新入生から!」
レスタは対戦相手を見る
……おや?彼は何処かで見たような……
「今年の首席候補でありながら錬金術科に在籍し、未だその実力は未知数……そのあどけない顔の下には一体どんな猛獣が鳴りを潜めているのか!?雷で全てを燃やし尽くす、『灰の勇者』レスタ・クラウンだー!」
歓声が上がりレスタは観客に手を振る
「そして…その対戦相手はこちら!
水属性2年部にして最上級生にも劣らぬ実力!去年の試験では先輩をも圧倒したその氷魔法で貫けないものはない!氷上の貴公子、ダルタリアン・ルフォレ!」
ワアッとレスタよりも少し少ない歓声が上がった
「二度も俺を待たせるとは、人の目が無ければ試験など忘れてお前を凍らせていたぞ」
「二度……?……ああ!この間の……
すみません、僕興味のない人覚えるの苦手で……」
「ぐっ………まぁいい、どうせお前はこの俺の前で不様にも負けるのだからな」
負けられるものなら負けたいですが……ここまで実力差があると逆に難しいですね
それに……
「それでは……試合開始ッ!」
サクヤ先生も見ているかもしれませんし、しっかりやらないとですね
レスタは右手に魔法の剣を生成する
ダルタリアンは数本の氷柱を空中からレスタへ向けて思いきり打ち込んだ
地面が砕け土煙が舞う
「はっ、これだけで終わりか、なんともつまらん……」
ダルタリアンの首筋にひやりと冷たいものが触れた
「な…っ!?」
氷柱で貫いたと思ったレスタが背後に立っていることにようやく気がついたダルタリアンはすぐに次の魔法を発動させる
レスタは首に当てた剣を離すと、新たに向かってきた氷柱を全て剣で弾き砕いた
そのあまりにも正確で速すぎる剣技に、観客はレスタが一振りしただけで魔法を打ち消したような錯覚する
「っ……まぐれだ!こんな小僧が剣術だけで俺の魔法を相殺するなど出来るわけ……適当に振って当たっただけだ…っ!」
「そうですか?ではもっと打ってみてください」
レスタはダルタリアンを煽るように剣を振る
その風貌に見合わない圧迫感を感じダルタリアンは歯を食いしばる
「〜っ殺してやる!」
ダルタリアンは地面に手を当て詠唱を始めた
レスタの周りに青白い魔法陣が浮かび上がっていく
…全身を一度で凍らせるつもりでしょうか?
逃走防止の魔法陣を上乗せさせないあたり、本当にまだまだのようですね……まあ、試験ですし、受けてあげますか
レスタがその場でじっとしていると足元に冷たい空気が纏わりはじめ……地面から生えてきた氷に全身を包まれた
観客席からは悲鳴が上がる
「きゃあっ!氷漬けに…!?」
「おい、勇者死んだんじゃ……」
ダルタリアンはその様子を見てくつくつと笑った
「くっ…………ふははは!呆気ないものだな!勇者と謳われた英雄も所詮この程度!この程度の者に俺の……」
ピシ…ピシ…
高らかに笑うダルタリアンの前でレスタを包んだはずの氷にひび割れが入っていく
バキンッ!
鈍い音と共に氷は巨大な欠片となって砕けた
ローブについた氷の破片を払いながら平然と歩いて出てきたレスタにダルタリアンは目を見張る
「う〜ん、温度もぬるいとは……これで去年優勝なんて、ずいぶんと質が悪い者ばかりなんでしょうか」
「な………!?きっ貴様、何をした!?」
「何って……何もしてませんよ、ただ出ただけです」
「嘘をつけ!俺の魔法がこんなに簡単に破れるわけがない………」
「詠唱がなければそれなりに使いやすいと思いますが……まぁ僕には関係ないですね
大体は見てもらえたでしょうし……」
レスタは人差し指を上空へ向ける
すると晴天の空にはみるみると灰色の雲が集まってきた
「もう良いですよ、ありがとうございました」
ピカッと一筋の光が闘技場を照らしたと思ったその瞬間、レスタとダルタリアンのいる広間の中心に巨大な雷が降り注いだ
その衝撃と爆風で砕けた地面が観客席へと飛んでいくが、事前に張られていた防護結界が発動し観客は悲鳴を上げながらも爆風のみの被害を受ける
「………………………」
闘技場はしん…と静まり返った
誰もが中心のレスタとダルタリアンがどうなったか見ようと息を呑んでいた
するとヒュルヒュルと音を立てながら中心から風が巻き起こり、土埃を晴らしていった
徐々に雨雲が消えていき、二人の姿が顕になる
そこには……黒焦げになり倒れているダルタリアンらしき人影と、その前に悠然と立つレスタの姿があった
雲の隙間から一筋の陽光が入り、レスタを照らす
「……だ、ダルタリアン・ルフォレ、戦闘不能により………勝者!レスタ・クラウン!」
一息遅れて闘技場から張り裂けんばかりの歓声が上がった
「すげえ!あんな魔法初めて見た!」
「灰の勇者様万歳!」
「ダルタリアン先輩ざまーみろ!」
中にはダルタリアンに対する罵声も混じっている
「救護班はダルタリアン・ルフォレを運んでくださーい!」
レスタは観客席に手を降っていると門の近くに1つ黒い人影を見つけた
目を凝らすと、サクヤが口をぽかん…と開けてレスタを見ている
「サクヤ先生、僕ちゃんと試験やりましたよ〜!」
レスタがサクヤに手を振るとサクヤはビクッと飛び上がり身を縮めながらも小さく手を振り返した
アナウンスの声が急に変わり学園長が高台に立っていた
「皆!盛り上がっているところ大変すまない、事情により本日の試験はこの試合をもって閉幕とする!」
観客席から大きなブーイングが起こった
「残りの試験者はまた日を改めて行うこととする!」
……無事終わりましたし、ハロルド君の様子でも見に行きますか
「詳細は後日発表する、これより各学年ごとに校舎へ戻り………」
門に近づくと既にサクヤの姿は無く、代わりに金髪の人影が見えた
「あれ?ハロルド君?」
「やあ、試合、見させてもらったよ……クラウン君は本当に…っ強いんだね……」
ふらりと壁にもたれかかるハロルドにレスタは近づく
「大丈夫ですか?かなり酷い状態だと思うんですが……」
「このくらい平気さ、毒には慣れてるし……聖女殿が頑張ってくれたからね」
そう言いながらもハロルドの額には脂汗が浮き、青色も決して良いとは言えなかった
「戻りましょう、僕が運びますから」
ぐい、とハロルドがレスタのローブを掴んだ
そのままハロルドはその場で崩れ落ちそうになり、レスタは体を支える
「あまり動くと……」
「…クラウン君、俺……試験、失敗しちゃったよ……」
ぼそりと、小さな声でハロルドは呟く
「そうですか?ハロルド君は勝っていたじゃないですか」
「それは……相手を殺すつもりでやったから……試験だから、降参させるのが正解だったのに……体が勝手に…こんなんじゃ、いよいよ王子失格だな……」
うーん、理性を保てなかったから王子らしくなかった…ということでしょうか?
よく分からないですが彼にとってはそういう美学があるんでしょうか
「ハロルド君には毒も回っていましたし、理性が無くなって勝手に体が動くまで戦うなんてすごいと思いますよ、そういう戦い方…僕は好きです」
僕は身体自体は貧弱ですし…真似できないですね
それにしても理性を失う…ですか
ああ……ハロルド君が僕より強くなったなら是非戦ってみたくなりましたね
肩を担ぎながらレスタは真っ直ぐ、ハロルドはよろよろと歩く
「そういえば、頼みがあるって言ってましたよね。今なら人もいないですし言ってくださいよ」
「……でも、俺は……」
「もう、君は『良い成績をとれたら』聞いてくれって言ったんですよ、今回の試合がどこまで評価されるか分かりませんが……僕の次くらいには良い評価、貰えると思いますよ」
「クラウン君……」
ハロルドは俯きながらぐっと唇を噛んだ
「……スタ………い………」
ぼそぼそと喋る声が聞き取れなくてレスタはハロルドに顔を近づける
「ん?」
「……レスタって……呼びたいんだ、き、君の事……」
「………は?………そんな事ですか?」
レスタは呆気にとられた
あそこまで悩んで、レスタって呼びたい…?
「……えぇ!?もっとこう、決闘を申し込みたいとか、ドラゴンを討伐してきてほしいとか……そういうのじゃなくて!?」
「…はは、君はそっちのほうが嬉しいの?」
「当たり前です!も〜…こんなに勿体ぶって期待させておいて……」
「……じゃぁ、やっぱり……」
「呼び名くらい好きにしてください、君の事もハロルドって呼んであげますよ……はぁ、もう早く部屋戻って寝てください」
レスタが担ぐ腕がぴくっと震えた
「え、い、いいの?」
「逆に何でダメだと思ったんですか」
レスタは不機嫌そうに頬を膨らませる
「いや…だって……ゆ、友人、みたいじゃないか………君、自分より強い者にしか興味無いって言ってたし……」
「そりゃあ強い人が好きですけど、別に弱くても一緒にいて楽しい人の一人や二人居……ませんけど、まあ……ハロルドが最初の一人ですね」
ハロルドは毒で麻痺して繕えない表情がばれないように口を押さえる
「というか友人みたいって……王子様にとっては気難しいものなのかもしれませんけど、ここでは身分も関係ないんですから……
一緒に食事したり、話をしたりするくらい友人でいいんじゃないですか?」
ハロルドは嬉しいような、複雑なような顔をした後、くすっと年相応の笑みを浮かべた
「まったく……どんな血生臭い頼みかと思っていたのに……」
「……ありがとう……レ、レスタ……」
「……恥ずかしがられると気持ち悪いです」
「は、恥ずかしがってない、毒のせいで声が震えただけだ!」
「やっぱり具合悪いんじゃないですか、そんな嘘つきは……」
レスタは担いでいた腕を降ろすとハロルドの背中と足に触れた
「なに……うわっ!?」
「王子様には無礼かと思って担いでましたけど、『友人』ならこうして運んでも良いですよね」
レスタはハロルドをお姫様抱っこにして持ち上げた
「は、離してくれ!自分で歩けるから…っ!治った!もう平気だ!」
「そんな赤い顔で言われても説得力無いですよ、あんまり暴れないでくださいね、舌噛みますよ」
「これは違………うッ!?」
レスタはハロルドを抱えたまま風魔法で加速させた恐ろしい速さの走りで廊下を駆け抜けた
「……ッ……ッ!」
「もう少しの辛抱ですから、ほら、もうすぐ医務室ですよ」
「……し、死ぬかと思った……」
「大げさな、先程倒れた時の方がよっぽど死にかけでしたよ」
「ハロルド王子!それに勇者様!お戻りになられたのですね!」
医務室に入ると数名の患者の側にいたパルティーナが出迎えにやってくる
レスタは一応医務室の手前でハロルドを降ろしたので王子の悲劇を目にしたものはいない
「では僕は塔に帰りますね、ハロルドをよろしくお願いします」
「ご協力感謝いたします、勇者様。さあハロルド王子、もう逃がしませんわよ」
「…っ…もう…逃げる体力も、無いよ……」
「サクヤ先生!見てくれていましたか!?」
「ひぃ!?レスタくん…!お、おかえりなさい……」
教室の隅で縮こまっていたサクヤ声を掛けるとじりじりと距離を取られる
そのまま無言で空の鍋に入っていった
「…あの?なんだか距離を感じるんですが……ヤドカリの真似ですか?」
「だ、だって……まさかレスタくんがあんなにすごい人だと思ってなくて……!勇者って…!」
「え?ああ……まぁ勇者と言ってもここではただの生徒ですし……」
「うぅ……唯一の生徒が英雄だったなんて……私なんかが教える立場なんて烏滸がましいですよぅ………」
「なんでそんなこと言うんですか、ほら、鍋に籠もらないでください……僕、先生のご褒美くれるから頑張ったんですよ、錬金術!」
「ふぇ………ぐすん……レスタくんはこんなに情けない私を先生と呼んでくれるんですかぁ……ぐす……」
「僕の先生は先生だけですよ、そんなことより……ここか?いや……こっち?」
レスタはサクヤの白衣のポケットを弄る
「そんな事って…うひゃあ!あだっ、ちょっと…!そこは…っ」
鍋の中で暴れて頭をぶつけるサクヤを無視して1つの塊を手に取る
「あった!僕のルチルクォーツ!」
レスタは照明の光でキラキラの輝くその鉱石に目を奪われる
「ああっ……ぐす……まぁ約束ですから……教えますけど………」
サクヤは籠っていた鍋から身を捩って出てくた
袖で涙を拭くとキュッと顔を引き締め切り替える
「では……ルチルクォーツを金に変えてみましょうか」
両手で鉱石を持つレスタの手にそっと触れた
「…初めてなので……私が感覚を流します、レスタくんは私の魔力に沿って流してください……」
レスタは目を閉じて手の鉱石に意識を集中させた
触れられた手の甲からサクヤの魔力が流れ込み…手の甲から平…指先まで魔力が行き渡っていった
じわじわと鉱石にも魔力が流れていく感覚と同時に、普段魔法を使うときとは違う魔力の減少を感じた
「ここ……そう、鉱石の中でも1番密度の高いところ……そこに魔力を流して下さい…」
「鉱石の……高い………」
パキ、と破裂音が手から鳴った
レスタが驚いて目を開くと、手の平にあった鉱石は見事なほど細々に砕けていた
「あれ…?先………」
体内の魔力が一気に減る感覚がし、レスタはめまいを感じる
サクヤは手を離しレスタの肩を支えた
「おっと……失敗ですね、今はこの鉱石に対して余分な魔力を流しすぎたのでしょう……大丈夫ですか…?」
「……少しめまいがしました、こんなに小さな物でもここまで魔力を消費するんですね」
こんなに呆気なく失敗するなんて…
しかしレスタは内心喜んでいた
レスタが思っていた以上に錬金術は魔力と集中力が必要だった、試験で魔法を使ったとはいえ手に乗るような大きさのものでさえふらつくような疲労を感じる……ということは今後の練習はもっときつくなると予想したのだ
「ふふ…こんなに難しいものだとは……もっと大きなものに試したいものですね……」
レスタは額に浮かんだ汗を拭う
「鉱石は思っている以上に繊細なんですよ」
そう言うサクヤは少しだけ楽しそうな表情だった
「その破片にもう少し魔力を注げば粉になるので魔法薬の素材になりますよ」
「こうですか?」
レスタは破片が溢れないように手を握りしめ微弱な魔力を流した
手を開けると黄色のサラサラとした粉が出てくる
「……はい、よく出来ましたね……レスタくんは錬金術の才能がありますよ」
「……サクヤ先生、もしかして僕が金きできないって分かってました?」
サクヤはぎくっと後退りをする
「……君は失敗したと言っていますが……錬金術というのは本当に難しいものなんですよ…本当は君なら鉱石ごと爆発させてしまうじゃないかと思っていました、それに…」
サクヤはレスタの手の粉を人掬いして指でこする
「錬金術とは金を生成するだけだはありません……物質の状態を変化させる事自体が錬金術なんです、なので……ただの鉱石をこんなに細かな粉にしたのも失敗というわけでは無いんですよ、なので……まぁその……そんなに睨まないで下さい…………」
レスタは納得できずむすっとした顔でサクヤを見上げる
「……サクヤ先生のを見てからじゃ、こんなので満足できません」
サクヤが金に変えたルチルクォーツはもっと大きなものだった
きっと今のレスタが同じ大きさのものを錬金させていたら疲労を通り越して魔力切れで失神していただろう
「まあ私は先生ですし……一応錬金術で食べてきた人間ですから仕方ないというか……それに、この調子なら…先日程度の石ならすぐに出来るようになると思いますよ」
「本当ですか!?」
「はい……まぁ始めのうちは小さな物から慣れていってもらいますが………本当に、初めてでここまで出来るのはすごいんですよ」
サクヤは粉を回収すると瓶にしまい棚へ置く
「とまぁ……今日はこれくらいにしましょうか……これからは暗記の途中で錬金術の練習もしてみますか?」
「!はい、やります!」
レスタは意気揚々と読みかけの本がある机に向かった
「……あれ?物質を変化させることが出来るなら……わざわざ金に変えなくても、他の……っ?」
すると、その足は急に力が入らなくなり、かくんと膝が抜ける
「れ、レスタくん!?もしかして…今ので魔力切れを…!?」
…ち、力が入らない、手も、足も、頭もよく働かない
レスタは力なく机に寄りかかる
「レスタくん…!」
ぐうぅぅぅ………
「……へ?」
「……今日……起きてから……何も食べて…ませんでした………お腹空いて……動けな…………」
レスタはべしゃりと地面に倒れた
「れっ…レスタくん!?ど、どうしたら、医務室!?いや食堂…!?とりあえず外に………」
その時レスタの前にサクヤのポケットから1つの小瓶が落ち、中身が溢れた
空腹感で思考力が落ち、レスタはそれが何か分からずに口に入れる
「……え?……うわっ!?レスタくん!?それ食べちゃダメなやつです!ぺって!ぺってして下さい!………うわあ…飲み込んじゃったんですか!?」
サクヤはそれを吐き出させようとレスタの口に手を入れる
しかし食べ物だと勘違いしたレスタはその手に思いきり齧り付いた
「ひぎゃ〜っ!やめて!レスタくん正気に戻って下さいぃ!」
半泣きでサクヤは手を引っこ抜きレスタを抱え上げる
「とりあえず医務室に…!そうしたら食堂のご飯買ってきま……うわ!?髪食べないで下さい!いだだだだ!」
その後、医務室まで運ばれたレスタは拘束され食べ物を入れられた後は正気に戻った
記憶がないレスタが何をしたのかサクヤに聞いたが「まぁ…いつか……お話します……」
としか返ってこなかった