お守り
三月に京都旅行をした梅子先生は、北野天満宮でお守りを買いました。
小学校の先生なので「学問」のお守りです。
帰り道、30センチくらいの侍が、梅子先生に付いて来ました。
小さな侍は、他の人には見えないようです。
この侍は、野良犬の前に立ちはだかったり、ジャンプして車の飛び出しを知らせてくれたりしました。
「害はないみたい。小さな守護霊ね」
梅子先生は、新しいお友達が出来たと思うことにしました。
四月の新学期となり、五月には生徒たちと近くの山へ自然観察に行きました。
そこにスズメバチが飛んで来ました。
誰かが蜂の巣の近くに行ってしまったのでしょう。
不気味な羽音に、逃げまどう生徒たち。
大変だ。生徒が大ピンチです。
梅子先生は、お守りを見てひらめきました。
たしかスズメバチは黒いものに群がります。
とっさに黒い雨傘を開いてスズメバチを引きつけました。
スズメバチは梅子先生の傘の方に集まります。
「みんな早く逃げなさい」
梅子先生も傘を投げて逃げました。
一瞬後、侍の守護霊は刀を抜いて飛び上がりました。
エイ、エイ、エーイ。
追って来るスズメバチを見事に斬り落としたのです。
スズメバチには可哀想ですが、生徒たちが無事で良かったです。
侍の守護霊のことは、梅子先生だけの秘密です。
困った時には、ひらめきと共に、守ってくれています。