プロローグ4
洗面台で顔を洗い、髪を整える、新品の制服に身を包み学園に向かうための行く支度をする。
新がこの島に着いてから3週間が経過していた。そしていよいよこの島に来た理由である、学園生活が始まろうとしている。
「準備は大丈夫だな」
新は自分の制服姿とカバン、媒体を持ったことを確認すると、玄関のドアに手を伸ばす。
玄関から出ると隣の部屋のドアを開ける、ノックやインターホンは必要ない。この行為は初めてではないからである。そして一直線に寝室に向かう。
寝室のベットの上には丸まった布団の塊が鎮座していた。新はその布団を手に持つと引っぺがす。
「起きろ!今日は入学式だぞ!?」
「ん~」
布団の中の彩姫が目を擦りながら体を起こす。
「友達……」
新の持つ布団に目を向けながら一言
「友達とは帰ってきてからな、早く行く支度しろ」
「わかった」
そう返事を返し、服を脱ぎ始める。しかし新は一切の動揺を起こさない、何故ならこの行為もまた初めてではないからである。
彩姫とはこの島に来た初日に遭ったばかりであるが、既に何回も部屋に起こしに来たことがある。だから新は既に慣れていた。
「ほれ、彩姫の制服」
「ん、ありがと」
「なんか、食べるか?もし食べるなら俺の部屋から菓子パンか何か持ってくるが……」
「大丈夫」
始めの1週間は天川と呼んでいたが、ここ最近では彩姫と呼んでいる。理由はシンプルで天川より彩姫のが呼びやすい。この一点である。
「じゃあ行くぞ、入学式は体育館で行うみたいだぞ」
「わかった」
玄関を出て、エレベーターに乗り込む、マンションから出ると、ちらほら新入生と思われる生徒が歩いている。この島に来たばかりなのだろう。知り合いがいないからか、一人で歩いている生徒が多い、他にも来て数日なのか周りを見ている生徒が多い。
「俺たちが来た日とは比べ物にならないほど人がいるな……」
「うん」
まるで興味がないみたいにうんと頷く彩姫、実際、彼女は他の生徒に興味がない。そもそも彩姫と言う人物は話すこと自体がそんなに得意ではない、だから人と関わること自体が極端に少ない。
「ここにいる全員が魔法士なのか……」
「うん、すごいよね……」
魔法士は全員がなれるわけではない、魔力を持たない人間は当然なることはできない。魔力があればなれると言うわけでもない、才能がなければ魔法を使う事もできない。
そうした理由で魔法士とは100人に1人と言う確率でなれる存在である。
だが世界は残酷であり、100人に1人に選ばれたからと言って必ずしも優秀なわけではない、魔法が使えると言っても個人差がある。同じ魔法でも使う人によって、威力や、効果、範囲と言った違いが現れる。
だが、魔法士が珍しい存在である事には変わりない。そんな人間が見渡す限りに沢山いると言うのはすごい光景である。
「学園に着いたな」
4月、桜の花が舞い散り、温かい風が吹いている、新生活が始まる季節
「行くか」
「うん」
神成新の学園生活が始まった。
プロローグ終了 次回より新入生編




