プロローグ2
部屋にあった大量の段ボールと向き合うこと約2時間、部屋の中はずいぶんと華やかになった。
キッチンには料理器具が置かれ。リビングの棚に本や小物、寝室のベットは布団カバーがされ、生活感が出てきた。
「さて、ひと段落着いたし休憩にするか……」
ぽつりと独り言を零し、キッチンで紅茶の用意をする。紅茶のいい香りが鼻をくすぐる。
新は机に紅茶を置き、椅子に座り、テレビを付ける。この人工島ではこの島に関係するチャンネルにしか繋がらない。故に画面に映るのは学生のことばかりである。
今画面に映っているのは〔アルテア女学院〕と言う。この島にある7つの学園の一つである。
女学院と言われている通り、女子生徒しか通う事が許されていない。この島唯一の女学院と言うこともありいい話題なのだろう。
そして、今画面の先に映る生徒……西京有亜
四大名家の一つ西京家の令嬢である。
四大名家とは、優秀な魔法士を大勢排出した家であり。魔法を大きく進歩させた家でもある。そんな名家の令嬢はインタビューを受け、その質問を淡々と返していた。
〔アルテア女学院〕序列1位【剣姫】と呼ばれる彼女は画面越しでもわかるほどの覇気を纏っていた。新はただテレビを付けただけなのにも関わらず寒気を感じていた。
新はテレビを消すと寒気を消すかのように紅茶を口に含む。
「魔法学園都市アカデミア……普通の場所じゃないとは思っていたが、想像以上だな」
紅茶を飲み干しカップを机に置くと携帯が震える。
彩姫メッセージが来ていた。内容としては荷解きが終わったこと、明日の10時から都市の散策に行かないかという誘い。の二つだった。
都市の散策の同行は新から提案したこともあり二つ返事で了承した。
★
次の日になり隣の部屋の彩姫と合流し都市の散策に出かける。
「ずいぶん眠そうだな?」
隣を歩く彩姫は寝起きなのか目をこすっている。出会った時から思っていたが彼女はどうも面倒くさがり屋のように感じる。
今も髪の毛の手入れなどされておらず寝癖がぴょこぴょこと揺れている。
「布団とは友達……友達とは離れたくない」
という意味が分かりたくないことを抜かしている。
「まあいい、それより今日はどこら辺を見るかとか決めているのか?」
「とりあえずマンションの周りの確認をしてから決める。近くにスーパーとかあるならそれでいいし、ないなら探しに行けばいい、だから最初は付近の施設の確認」
「了解、俺はあくまで付いて行かせてもらう立場だし天川の行きたいとこに付いていくよ」
昨日マンションに来た方向とは逆方向に歩く。
歩き始めて数分彩姫の足が止まる。目線の彩姫にはいいにおいを漂わせるパン屋。
寝起き状態から考えられることは一つ……
「朝飯食べてないのか?」
「うん、恥ずかしながらさっき起きたばっか……」
「いや、それは見ればわかるが……寝癖が跳ねてるぞ?」
「ありゃ?」
彩姫は頭に手を当て寝癖を直す。
「恥ずかしながらさっき起きたばっか……」
「残念ながらなかったことにはできんぞ?」
「むぅ」
「まぁいい、何か食べるか?店のおすすめはクリームパンみたいだぞ?メロンパンもうまそうだ」
若干強引だが話を変える。
「新は何食べる?」
こてんと首を傾げ聞いてくる。
「俺はいいよ、マンションの目の前にあるコンビニで弁当買って食べたから」
「そう……じゃあ私はクロワッサンを食べる!」
そう言うとすぐさま店の中に入りパンを買ってきた。
「どっか座るか?」
「いや、大丈夫食べながら歩く」
ハムスターみたいにパンをかじる彩姫と歩いているとスーパーが目に入る。
「マンションから歩いて10分くらいか……米とか重い物を買うときは少し大変だな」
「確かに……最悪魔法を使えば……」
「米買うだけに魔法使うなよ……」
「とりあえずスーパーは見つかったが他に何か探すか?」
「他の区に行く為に駅の場所とかも知りたい」
この都市は7つの区に分かれている。7つの理由は学園を中心に区が形成されているからである。
このキャスタルテ学園がある区は、そのまんま〔キャスタルテ区〕と呼ばれている。
他の区も同様に学園の名前がそのまんま区の名前になっている。
そして、それぞれの区は学園の特徴がよく表れている。例えば中国拳法などを扱う生徒が多い〔シーワン学園〕のある区は中華街のようになっている。
女子高である、〔アルテア女学院〕のある区はカフェや女性用品など女子受けする店が多い。
「駅探しか……俺は電車の音とか聞いてないが、天川は聞こえたか?」
「聞こえない」
首を横に振る彩姫
「そうか……このまま探していても時間が掛かるだけか……」
新は腰の媒体に手を伸ばす。
手に短剣を持った新は魔力を込め、魔法式を起動させる。
「【聴覚強化】」
電車が通るような音を強化された耳が拾う。
「こっちに線路があるな、線路さえ見つければあとは辿って行くだけで駅につけるだろう」
「米に魔法使うなと言うのに、駅探すためには使うんだね?」
「そう言われるとなんも言えんな、まぁそれは置いといて、さっさと線路を探しに行こうか」
スーパーからおよそ20分ほど歩いた場所に線路があった。そこから更に5分ほど歩くと駅が見つかった。
「以外に時間掛かったな……」
「うん」
「というか、キャスタルテ学園前のバス停から出るバスに乗ればここ来れるみたいだぞ?」
駅前にあるバス停に書いてあった。
そのことを知ってしまい少し損をした気分になった。




