おぢいさんのランプ
明治の終わりごろ巳之助という少年がいました。彼は全くの孤児でしたが村の雑用を引き受けてなんとか暮らしていました。
ある日、巳之助は街に仕事で行き、そこで生まれて初めてランプという物を知ります。
その明るさに感動した巳之助は村にランプを持ち込んで商売を始めました。
商売が軌道に乗って成功した彼は家を建て、妻も娶り幸せの絶頂でした。
ある日、巳之助が街に仕入れに行くと「電気」という物が敷かれていました。電気からつく電灯はランプより遥かに明るいものでした。
そしてついに村にも電気を敷くと言う話が持ち上がりました。
商売が成り立たなくなることを恐れた巳之助は強硬に反対しますが、結局電気は敷かれることになりました。
逆恨みした巳之助は推進派議長の家に火を放とうとします。しかしマッチが見つからず代わりに持って行った火打石ではなかなか火が付きません。
苛立った巳之助は「クソ!古いものはいざというときに役に立たねえ!」と愚痴をこぼします。
そこで巳之助はハッと気がつきました。「今やランプも古いものだ。それを新しいものに替えようとする人に腹を立てて逆恨みするなどとんでもないことだ」と。
巳之助は家に引き返すと商売用のランプ全てに灯油を入れ、商売用の車に下げて持ち出しました。
そして50個ほどのランプを池の縁まで運び、そこにあった木にかけて灯をともしました。
巳之助はそれに泣きながら石を投げ、割っていきました。
するとどこからか髪がぼさぼさで髭面の男が現れ、地面に何か書きながらつぶやきました。
「今迄ランプを使ったことがないものだけがランプに石を投げなさい。」彼はそういうと、また再び地面に何かを書き始めました。
巳之助はハッと気がつきました。「今迄ランプのおかげで暮らしてこれたんだ。それを廃業するからとやけになって石をぶつけるなんてとんでもないことだ」と。
そして巳之助は木にぶら下げたランプを一つ手に取ると「今までありがとう。」と磨き粉と布巾で丁寧に磨き始めました。
するとランプからスゥーっと煙が出てそれが人の形をとりました。
「私はランプの魔人。さあ願い事を三つだけかなえてやろう。」