反旗を翻し、世界は表情を変える
夜は明け、皆が活動を始める。街にいつもの騒がしさと、油の匂いが充満し始めた。
機械は朝から忙しく走り回り、止まることを知らない。
「おはよ〜、シック。今日も客引きお願いね」
店主はいつものように、看板娘ならぬ看板ロボットを店前に配置して、声をかける。
機械はそれに、軽く会釈したかと思うと、すぐに命令に従って行動を始めた。
「さて、私も働きますか」
店の厨房へ入り、作業を開始した。
厨房からは、パンが焼ける匂いが充満する。嗅ぎなれたその匂いに、喜びを感じていた。
「フィス、それ取り出して並べて」
フィスと呼ばれた機械がオーブンを開け、まだ熱を帯びているプレートを取り出していく。
金属でできた手は、熱さられたことで変色していた。長年使われていた事がそこから見て取れた。
「ふあ〜、おはよう、母さん」
「ちょっと、あんた遅い!早く着替えて、レジ打ちとかやって!!こっちは今忙しいから」
「わあったって」
息子が2階から降りてきて、母の店主が叱る。それを、機械は無表情に見つめる。いつもの光景だった。
店に出た彼は、テキパキと客を対処しながら、お得意さんと何気ない話をする。
「あ、ウェス君おはよ〜。相変わらずだね」
「おはよう、イリー。相変わらずって、仕方ないだろ?人の欲望には勝てないんだから」
「はぁ、早く寝るとか、対策のしようはいくらでもあると思うけどね」
「そうだけどさ…ま、間に合ってるからいいでしょ。それで、今日もいつも通り工場に?」
「うん。あ、明日って予定空いてる?ちょっと渡したい物があってさ」
「あ、もしかして前貸してたあの本?」
「そうそう。あ、普通に今日返しにこればいいか」
「ま、どっちでもいいよ。どうせ、ここで待ってるからね。じゃ、頑張って」
「うん。じゃあね」
何処か、心が弾む会話もあり、彼は気分よく仕事を続けた。
しかし、それは一変した。
昼過ぎ。客も減り、ぼんやりと外を投げめていた彼は不思議な物を目にした。
突然、シックが動きを止めたのだ。
彼は、故障か何かかなと考え、近づいて観察した。しかし、おかしなところは外見から見ると何もない。
彼の意識がはっきりし始めた頃にはあったため、もう古くなったのかなと考えもした。
とりあえず、充電がなくなったのかと考え、一度店の中に取り込もうと手を伸ばした。
瞬間、シックは体を大きく振るわせ、動き出した。
長年使っていることからの誤作動かと思った彼を襲ったのは、鉄の塊だった。
「は?」
客を呼び寄せるための手が、突然、彼の顔面に飛んできた。
彼は意味がわからず、咄嗟にシックから距離を置き、再び観察を始める。
そんな彼に、シックは次々と手を上げ、振り下ろしていた。
「なんでだよ!!」
叫んだその時、物体が衝突する音と共に、轟音が響き渡った。
上空で、物資を輸送していた機械が航路を変え、人めがけて墜落してきた。
明らかに異常な事が起こっている。それは誰がどう見ても分かった。
同時に、母が危ないと考え、痛む心とシックを押さえつけ、母の元へ駆けつけた。
「母さん!!」
「ウェス!突然、フィスが動きを止めたかと思うと、襲ってきて…咄嗟に電源を落としてなんとかなったけど…」
「よかった…こっちも、シックが突然襲いかかってきた。何か、おかしな事が起こってるのは確かだ」
「そうね。とりあえず、身の安全を確保しないと。あと、あんたはシックをとってきてくれる?」
「わかった。電源を落とせばいいんだな?行ってくる」
彼は、再び店前に出た。そこは、まるで物語の中かのように思えた。
無数の機械たちは、軋みと木材が擦れる音を鳴らし、人間を襲っていた。
つい、数時間前まで一緒に働いていた物とはまるで別のように思えた。しかし、一部の機械は影響を受けていないのか、普段通りに、定められた動きをただ淡々と繰り返していた。
彼は、その中からシックを取り出して電源を落とした。
そして、店内に入れる時、不意に嫌な考えが脳裏をよぎった。
というのも、イリーが働いているのは機械を作る工場。すなわち、1番被害が出るのはそこではないのか。
そう考えると、居ても立っても居られなくなった。
彼は、店内にシックをしまうと、母に出かけるとだけ伝え、荒れる街中を走り出した。
機械が反旗を翻した。そして、世界は変わり果てた。
彼は、世界の勢力図がたった今、変わったことを理解せざるを得なかった。
1話から改変してるので、進みが遅いですが許してください。頑張って面白くしようとしてるので、もう一度読んでみるのもどうかと思います。変わりすぎて一部原型ないですが




