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改変しました
王宮の廊下では、鎧を着た騎士、王の世話をするメイドなど、様々な人が移動していた。
その合間を縫って食堂まで移動する。
食堂では、これまた多くの人がひしめき合い、我先にと食事にありつこうとしていた。が、流石に王宮とあって、列を作り順番を待っていた。
「う〜ん、どこか席は空いてませんかね?」
小さな背で必死に空いている席を探そうとするが、大人達の背に阻まれてみえない。
「そうじゃのう………む?おお、あそこにいるのは…」
ファインが人混みの中から見つけ出したのは、長く白い髪を後ろで三つ編みにし、大きなとんがり帽子を被った女。キレ長い白い目はまるで蛇のようだ。
その格好はまるで、魔女。
1人で、4人掛けの席を独占していて、近寄りがたい雰囲気を放っている。
帽子を建物の中でもつけていることも相まって、余計目立っていた。
「…レザリー、じゃよな?」
声をかけられて、ゆっくりと振り向くレザリー。
目が細く、睨まられているように感じる。
「これはこれは、ファインさんと、準筆頭じゃないカ。どうしたんだイ?私にようでモ?」
声を掛けてきた人物に驚きつつも、ニヤリとした顔を浮かべながら答えるレザリー。
東の農村部で見られる言葉の訛りを感じる発音は、慣れないものからすると、聞き取りにくい。
「いや、ちょいと席を使わせてもらえないかのう?」
「ああ、全く問題なイ。好きな場所に腰掛けてくれて構わないヨ」
手を振り、好きなようにするように訴える。
言質を取り、レザリーの正面の空いた2席に座り、朝食を食べ始めた。
「そういえば、お主もカインの班じゃったよな?」
朝食を食べながら、思い出したかのように尋ねるファイン。
「ああ、そうだネ。もしかして、アンタもかイ?」
「そうじゃよ。しかし、大丈夫かのう…」
「何がですか?」
「カインに、準筆頭の仕事ができるのかどうか…」
意味がわからず、こくんと首を傾げるカイン。
「魔族をぶっ殺すのは得意ですが」
「いや、準筆頭の1番大事な仕事である班のものを纏める、ということができるかどうか…」
「大丈夫ですよ。これでも僕、人をまとめるのは得意なんですよ?」
「…確かに、そうかもしれないネ…」
レザリーは、昨日のあれを思い浮かべて頷く。
「ちょっと、その顔!どうせ、僕が力でしか人をまとめられないとか思ってるんでしょう!」
「気のせいだと思うヨ。それより、公共の場で目立ちすぎじゃないかナ?もう少し静かにするべきダ」
話を逸らし、誤魔化すレザリー。
プクーっと、頬を膨らませ、不満を露わにするカインと、お主がいうのかという言葉を飲み込むファイン。
「う〜ん……なら、レザリーさん。あなたがその役をやってくださいよ」
「えエ?ワタシがかイ?いや、それならヘンリーさんの方が向いてると思うゾ」
「お主!汚い!他人任せばかりよくないぞ!」
面倒な役をやらされると感じ取ったファインは抵抗する。
「ああ、そうですね!確かにファインさんなら古参ですし、誰も文句を言わなさそうですね。それに、師匠のお友達ですし、師匠からも文句はないと思いますよ?」
ポンと手を叩き、名案だとばかりのつぶやく。
「いやじゃ!!絶対にやりとうない!!」
「なんで、そんなに嫌がるんですか?」
「…だって、クソガキどもをまとめるのは疲れるし…」
「その時は、これですよ」
カインは、目の前に火の玉を作り出し、消す。そして、ニヤリと笑う。
「やっぱり、力じゃないカ……まあ、ワタシはファインさんなら文句はないナ」
「ほらほら、お願いしますよファインさん」
呆れるレザリーを無視して、お願いするカイン。
「ううむ……けどのう…」
「こんなに可愛い僕に、そんことをさせるんですか?」
「それを自分で言うのカ……」
呆れ気味の呟きを無視して、お願いを続ける。
「……わかった、やってやるわい」
「やったー!!ほんとですよね、二言は無いですよね?」
渋々、といったふうに了承するファイン。
それに対してカインは大満足な様子。
「…じゃが、あくまで補佐じゃ。できれるだけカイン、主がやるんじゃぞ?」
それまでの満面の笑みが、露骨に歪められる。
「ええ……全部やってくれないんですか?」
「そうじゃ。なんせ、わしはもう歳じゃ。いずれ、カインが全てやる時が来るじゃろう。その時を見越してのことじゃ」
「……うぅ……せっかく面倒事を任せられると思ったのに…」
嘘泣きを始めるカイン。
ファインはその様をみて、呆れる。
「まあまあ、そんなに落ち込まなくてもいいだロ?ワタシも手伝ってあげるからサ」
「言いましたね。二言は無いですよ」
「ああ、君にはまだ早いと思うからネ」
そう言いながら、レザリーは茶髪を撫でる。
「……甘やかしすぎじゃと思うがのう……」
ファインはその様を見てまた、呆れるのだった。
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