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うん。
冷たい空気が肌を刺し、血液も凍る。
そんな中、メザリーと青年が向き合っている。
青年は動きだす。
背中についた一対の羽はグレンとの戦いで傷つき、寒さで動きが鈍るも、あいも変わらず青年に推進力を与え続けている。
とらえることができるほどではあるものの、一瞬で見失う速さ。
強く踏み込んだ影響で大地は抉れ、土煙を撒き散らす。
一瞬にしてメザリーの目の前まで距離を詰め、拳を振るった。
ボロボロになった腕で、殴りつける。鎌は傷つき、使い物にならない。
それでも気にすることはない。
メザリーに触れる、と思われた拳は宙を舞い、空振りする。
咄嗟にあたりを見回し、少し離れた場所でメザリーを見つける。
「……チッ…!」
忌々しそうに顔を歪め、再び走り出した。
また、一瞬にして距離は縮まり、拳を振るった。
今度は、当たった。
しかし、それは青年が予測していない状況で。
拳と拳が、衝撃波を生む。
メザリーが、拳を振るったのだ。
青年には全く理解できていない様子だった。
先ほどまで魔法しか使わず、逃げに徹していたメザリーが、突然拳を振るう。
その驚きが隙をつくり、追撃を許してしまう。
再び、メザリーが拳を振るった。
咄嗟に腕を掲げ、体を守る。
あり得ないほどの衝撃が、青年を襲い、衝撃で幾分か飛ばされてしまう。
「……は?」
「はいおつ。どうせ、こんな貧弱な体じゃできないと思ってたでしょ」
「………」
「正解ってことね。ま、普段はできないからね」
嘲笑う。
「ま、ちょっとズルしてるってわけ」
そう言い、羽織っていた黒いローブの留め具を外す。
そこには、一つの輝く白い光が紐に吊るされていた。
それに刻まれた蛇の模様は、もう1人の白い魔女を彷彿とさせる。
「これのおかげで、力を得てるわけ」
「理不尽ね」
「ま、ちゃんと制約はあるけどね」
そういい身だしなみを整えていると、青年は隙を見て走り出した。
メザリーは咄嗟に対処するも、少し遅れてしまう。
掲げた右腕にズシリと、重たい衝撃が走る。
もう少しで重症を負わせられるその時、パッと姿が消える。
力を加えていた青年は、勢いを殺せずにいた。
ふらつきながらも、青年は一つ、勝ち目を見つけた。
それは、メザリーの強さの制約についてだ。
(あの強化はどうやら、常時は発動しないみたいね。発動できないのか、発動しないのか分からないけど、ま、どっちでも変わらない。速さで出し抜くまで)
そう、メザリーが持つ、自身を強化する道具は、常時発動できない。
もう1人の魔女、レザリーの魔力が尽きると使えなくなってしまう代物なのだ。
レザリーが持つ、従者を作り出す能力の応用だ。
彼女は自身の魔力を使って、従者を作り出し力を与えている。
それを応用し、メザリーに力を貸しているわけだ。
そしてもう一つ、この能力はあくまで、無機物に与えるべき力なのだ。
それを生物にその力を与えすぎると、与えた対象は、力をつけた箇所からどんどんと無機物へと変わっていってしまう。
そして、体が崩壊し始める。
そんな欠点を持ちながらも、得られる恩恵は大きい。
故に、メザリーはこれを使う。
こいつを倒すため。
再び、近づいてきた青年。
だんだんと、動きは鈍り始める。確実に空間の影響を受けているようだ。
だが、まだ早い。
拳を打ち、蹴りを放つ。
メザリーはそれを、避け、相殺し、対処していく。
しかし、どんどんと疲労が溜まっていく。
いくら、青年を倒さなければいけないと言っても、自身を殺してまで倒す気はない。
それ故に、決着はつかない。
しかし、ここでメザリーは賭けに出る。
突然、メザリーが動きを止めた。
青年は怪しみつつも、一気に距離を詰めて、殴りかかった。
もう、初期のころほどの速さはない。しかし、十分過ぎる。
頭を、破裂させんとばかりに振るわれた。
それは、メザリーにあっさりと受け止められてしまう。
頭に、力を使って強度を増し、押し合いを始める。
ギリギリと、両者引くことを知らない。
しかし、少しずつ、メザリーの皮膚が剥げていく。
力の代償が及び始めている。
青年は、勝ちを確信した。
しかし、それは速すぎた。
空気を裂いて、発砲音が響いた。
「…え…」
青年の胸は、小さなしかし十分すぎる穴が空いた。
口からを血を吹き出す。
そして、それは大きくなる。
メザリーが、拳を振るった。
それは、青年の体を貫き、大きな穴を作り出した。
「あ〜しんど」
そう言い、メザリーは手を引っこ抜き、青年は地に伏した。
お疲れ様でした。
いや〜、長かった。まだ終わってないけど。
今週はテストなので、あと週末模試なので厳しいかも。ま、3本出してこの章終わらせたい。
あ〜しんど




