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青年が走り出したと同時に、少女も駆ける。
先ほどとは打って変わって戦闘スタイルが変わり、一気に近距離戦へと流れを変える。
カインたちも即座に切り替え、魔法の準備を始める。
「死ね」
手に持っていた双剣を、力強く投げつける。
蒼い光が、素早く、そして的確に2人に狙いを定めている。
ゲシンはそれを受け止め、カインは避けようとした。
双剣は作り出した氷に阻まれ勢いを失い、もう片方は元いた場所を斬る。
カインはそのまま、準備した魔法を放つ。
『風の刃』
真横にある縄が、淡く発光する刃に削られ、金属が擦れる音をあたりに撒き散らす。
「…チッ!」
少女は咄嗟に、離れた双剣を引き戻す。
カインは、戻ってくるナイフを避けようと体を動かした。
「…え?」
「カインッ!!!!」
双剣が、カインの右腹部を切り裂き、辺りに血肉を撒き散らした。
力に従って、少女の手元に戻ってくるはずであった剣は、カインに辿り着くまでにまだ幾分か猶予はあったはずだ。
少女は、カインの意表を突いた。
そこまでの応用が効くなんて考えていなかった、と言った方が正しいかもしれない。
少女は、思いっきり引っ張った双剣の時間を操り、カインに当たる50cm手前にまで移動させた。
それによって、当たるはずのなかった双剣が、彼の体を切り裂いたのだ。
「…くっそ……ゲシンさん、こっちに気を配らないで。早く、準備準備を進めて」
「あは。これっぽっちも考えられない、弱小な脳だね」
煽る少女。
口ではそう言いながら、油断なくカインとゲシンを観察している。
(チッ、思ったよりも傷ついてない。ぐっさりお腹を切り裂くつもりだったけど、思ったよりも勘はいいみたいね)
そう考えながら、再び双剣をカインに投げつける。
それと同時に、ゲシンとの距離を一気に詰め、切り掛かる。
(もらったッ!!!)
確実に、ゲシンの首元に剣をかけ、勝利を確信した。
しかし、それは何処からともなく現れた銀色に輝く剣で防がれた。
「はぁ……本当は剣を振いたくないんだがな……」
時空と空間の歪みから、一本の白銀の剣が出現する。
それが、少女の剣を防いだ。
歪みからおもむろに、それを取り出した。
変に装飾されてない、簡素な造りの剣。しかし、出来だけは一級品だ。
「どうした?ボサッとしていたら死ぬぞ」
驚きに目を見開いていた彼女に、ゲシンが声をかける。
ハッとした彼女の右腕に、一本の小さな槍が刺さる。
チクッとした痛みのあと、体を電流が迸る。
「ッ!!!!」
カインの方もしっかりと意識は向けていた。しかし、完璧に把握はできていなかった。
それがこれを招く。
小さく呻く少女の目の前には、剣が迫っていた。
咄嗟に、左腕に持った剣を掲げるも、幾分か遅かった。
「がぁっっ!!!!」
指を2本ほど切り裂かれ、宙を飛ぶ。
痛みで落としそうになった双剣を再びぎゅっと握りしめて、返す刃を打ち込む。
しかし、あっさりと大きな剣に阻まれ、肉体まで届かない。
ギリギリと力比べになるが、所詮大人と子供。
象とありの戦いのように、最初から勝敗は目に見えている。
打ち負けた少女は、最後の力で剣を払い、勢いで後ろに下がる。
同時に、カインに投げておいたもう片方を引き戻しながら、攻撃を仕掛けておく。
当たればおまけ程度と考えていたが、もうその手は通じないとばかりに、飛んできそうな場所からは離れていた。
「……はぁはぁ……」
「ゲシンさん、なかなかやりますね。そんなに上手く扱えるなら、剣使った方がいいんじゃないんですか?」
「馬鹿言え。仕方なく準備してきただけだ。あとはまあ、俺の家が剣術を教える道場をやってたから、子供の頃から無理やりやらされてただけだがな。異色なだけだ」
実際、彼は跡取りになれないと親たちは嘆いていた。
しかし、そんな事知らないとばかりに彼は魔法を極め、王宮魔法使いとなった変わっていた。
「それにな、こう言う騙し討ちは、突然やるから効くんだ。それ以外は厳しい」
「まあ、そうですね」
「……はぁ…………」
カインたちが話している間にも、少女は肩で息をし、苦しむ。
ボタボタと、無くなった2本の指からは絶え間なく血の滝が流れている。
「さ、とどめを刺しますか」
「そうだな」
「………はぁ………」
とどめを刺そうと、一歩、二歩と距離を縮める。
その間も、彼女は2人を忌々しく、殺気を込めた目で睨みつける。
「終わりです」
十分注意を払いながら、少女に向けて魔法の準備を始める。
自分で作り上げた魔法を、1文字1文字噛み締めるように発音し、作り上げていく。
彼女は諦めたのか、大人しく身を縮めていた。
「さようなら」
魔法を放った。
水の刃が、彼女の首を刎ねる。
瞬間、彼女は目を見開き、
「リバースッ!!!!!!」
叫んだ。
あたりに眩い光を放ち、彼女の指に、首に、肩に付いた傷が一気に元通りになる。
「ッ!!!」
少女は、淡々と双剣を振るった。
それは、驚きで硬直する2人に確実に狙いを定め、そして、
切り裂いた。
はい。どうでしょうか




